来月16日に投開票をひかえた総統選挙の候補者3名が12月27日、新聞社やテレビ局など9社が共催
するテレビ討論会に出席した。
蔡英文(民進党)、朱立倫(国民党)、宋楚瑜(親民党)の3候補は午後2時から台北市内の公視
(テレビ局)で行われた会に出席。その模様は各局で生中継された。
中央選挙管理委員会が主催した政見発表会は25日にも行われているが、この日は日曜日午後の生
中継ということで各局は高視聴率を記録した模様だ。
総統選挙の情勢そのものは蔡英文候補の独走状態とされ、いくら選挙が「蓋を開けてみなければ
分からない」とはいえ、前回までのような盛り上がりに欠けているのは明らかだ。ただ、そのため
にむしろ蔡候補がどのような主張をするかに有権者の大きな関心が向けられたともいえる。
政見発表では、不振に直面する台湾経済について比較的安価な住宅供給量の増加、食品の安全確
保、治安の維持や年金制度の強化など社会問題の解決に注力すると発表。また、中国との関係につ
いては、監督条例による話し合いの透明化が必要だとして「密室での取り決め」と揶揄される現政
権の手法にくぎを刺した。
台湾にとって国内の最重要課題が経済政策ならば、外交・安全保障面で最も注目されるのが両岸
関係だ。国民党の朱候補は、両岸関係について蔡候補に「92年コンセンサスを受け入れるか否か」
と迫り、蔡候補が掲げる対中政策の「現状維持」を「全てが曖昧で、台湾の未来を不確実かつ不安
定にするもの」と批判。朱候補は25日に行われた政見発表の席上でも、「李登輝元総統が主張した
中国と台湾は『少なくとも特殊な国と国との関係』とする『二国論』は、蔡候補が最初に提唱した
もの」と指摘し、台湾独立派との印象操作を行っている。
27日の討論会でも朱候補は「92年コンセンサス」について蔡候補に正したが、蔡候補は明確な回
答を避けつつ「92年コンセンサスは選択肢の一つであり、唯一の手段ではない」と反論。また、馬
英九が「外交休兵」と呼ばれる対中宥和政策を進めた結果、中国が両岸関係を主導するようになっ
たと指摘、お互いに受け入れられる交流の道を探ることに最大の努力を尽くす、などと述べた。
28日、総統府の陳以信報道官は、蔡候補が会の席上「92年コンセンサスは存在しない」と発言し
たことを「詭弁」であり、未来の両岸関係にリスクをもたらすと非難。馬英九政権が7年半かけて
作り上げた台湾海峡の平和と安定を破壊するもの、と指摘した。
次回のテレビを通じた政見発表・討論会は1月2日に行われる。
【台湾での報道を本会台北事務所でまとめたものです】