中国は核心的利益として、台湾、南シナ海、東トルキスタン(新疆自治区)、チベット、尖閣諸島、そして「一つの中国」原則を挙げている。今年に入ってからは、朝鮮半島の核問題も核心的利益だと表明している。
日本の固有の領土である尖閣諸島がなぜ中国の核心的利益なのか。答えは極めて簡単だ。尖閣諸島は中華民国の領土だった。中華民国は消滅して中華人民共和国が継承した。ゆえに尖閣諸島は中華人民共和国の領土という三段論法に基づいている。
周知のように、日本は1895年1月14日に尖閣諸島に標杭を建設する閣議決定を行い、その3ヵ月後に締結された日清戦争後の下関条約では、日本が清国から割譲されたのは台湾、澎湖諸島、遼東半島であり、尖閣諸島は対象ではなかった。
また、尖閣諸島が日本の領土であることは中国側が証明していて、福建省の漁民が尖閣諸島に遭難した際の1920年5月、当時の中華民国駐長崎領事が出した感謝状に「日本帝国沖縄県八重山郡尖閣列島」という記載があったことを挙げれば十分だろう。
問題は台湾で、台湾も中国の三段論法にからめとられている。しかし、これも答えは簡単だ。アルバニア決議で国連の常任理事国に中華民国の継承国家として中華人民共和国が入ったことは事実だ。しかし、中華人民共和国が中華民国(台湾)を統治した事実はないからだ。例えば、中華民国(台湾)の人々が海外へ行くとき、中華人民共和国のパスポートで行くのか。否だ。
周知のように、パスポートは政府またはそれに相当する公的機関が交付する公文書であり、中華人民共和国は中華民国(台湾)のパスポートを交付していない。つまり、台湾からの渡航者に、中華人民共和国は国籍及びその他身分に関する事項を証明できていないことになる。それでいて、中国は台湾を核心的利益と主張しているのだから、実に噴飯ものの言い草だ。
しかし、中国は自分で造り上げた論理を曲げることはない。この論理こそが中国の核心的利益であることはともかく、台湾を「中華人民共和国の領土の不可分の一部」と主張する中国は、「祖国統一の完成」を宣言、武力をもってしても併呑しようとしている。
一方、米国からの武器支援に頼りつつ戦力の増強を図っている台湾が中国の侵攻をどのように分析しているのか。昨日の中央通信社は、8月31日に公表された国防部による今年の『中共軍事力報告書』は「中国はいまだに台湾に対する武力行使を諦めておらず、2020年までにその全面的な侵攻作戦能力の完備を目指しているとの見方」を示していると伝えている。
この台湾国防部の見方で思い出すのは、米国のシンクタンク「プロジェクト2049研究所」研究員で、中台問題研究家のイアン・イーストン氏の見解だ。昨年10月に出版した『中国侵略の脅威』でイアン・イーストン氏は、中国は2020年までに台湾侵攻の準備を終えると指摘していた。さらに、早ければ3年後の2023年までに中台戦争が勃発する可能性があるとも示唆している。
台湾と中国をめぐる攻防は一段ときな臭さを増している。下記に中央通信社の記事を紹介したい。
————————————————————————————-中国、台湾侵攻準備を2020年までに整える方針=国防部報告【中央通信社:2018年9月1日】
(台北 1日 中央社)国防部(国防省)は8月31日に公表した今年の「中共軍事力報告書」の中で、中国はいまだに台湾に対する武力行使を諦めておらず、2020年までにその全面的な侵攻作戦能力の完備を目指しているとの見方を示した。
武力に訴える可能性があるのは、台湾による独立の宣言、台湾内部の動乱、核兵器の保有、中国との平和的統一を目指す対話の遅延、外国勢力による台湾への政治介入、外国軍の台湾駐留などが起きた際だと分析。
運用する戦術・戦法については、台湾海峡を挟むといった地理的な環境の制限により、上陸用舟艇や後方補給能力が不足しているため、現段階では軍事的脅威や封鎖作戦、制圧射撃などの可能性が大きいとした。
また中国軍が近年台湾を周回する形で飛行したり航行したりしており、それらのいずれも対台湾作戦を想定したものと言及。軍事科学技術と兵器の研究開発に力を注ぎ続けている戦力の増強と台湾への脅威に警戒感をあらわにした。
(游凱翔/編集:荘麗玲)