【7月24日 産経新聞「台湾有情」】
日本で4月に放送されたNHKスペシャル「シリーズ JAPANデビュー 第1回『ア
ジアの“一等国”』」が日台の民間各界に深い傷跡を残している。番組内容をめぐり視聴
者が集団で提訴する事態に発展したのにNHK側にいっこうに反省の気配がみられないか
らだ。最も傷ついたのはこの取材に応じた台湾の日本語世代の人々だろう。
先日、産経新聞台北支局に福地茂雄NHK会長あての「偏向番組に対する抗議状」の写
しが届いた。差出人は「老台北(ラオ・タイペイ)」の敬称で知られる蔡焜燦(さい・こ
んさん)さんを代表とする「台湾歌壇」の有志60人だ。
抗議状は「私どもは日本時代に日本国民として生まれ、日本人としての教育を受けた日
本語世代を中心に、日本の伝統的な短歌を40年以上詠み続けています」との自己紹介から
始まる。NHKには植民地統治の功罪両面を話したのに、放送されたのは批判部分ばかり
だったという。
NHKが「恣意(しい)的で偏向、歪曲(わいきょく)に満ちた編集態度で日本語世代
を傷つけた」にもかかわらず、何ら誠意ある対応をとらないことを厳しく批判、「(番組
の)訂正」を求めている。
末尾の「日本語世代の台湾人は知日、親日、愛日、懐日(日本を懐かしむ)はあっても
『反日』はいません」との言葉からは叫び声が聞こえてくるようだ。近隣で最も親日的な
台湾の人々の痛みを顧みないようでは日本の明日はない。 (山本勲)