歴史学者の故張炎憲氏は2・28事件研究の第一人者であり、台湾教授協会会長や台湾歴史学会会長などの要職を経て就いた國史館館長時代の2006年、他の研究者とともに3年の歳月をかけて『228事件の責任所在研究報 告』を完成させ「二二八事件の責任者は蒋介石」だと明らかにした。
2・28事件では、検察官だった王育霖氏などなんら罪もない前途有為の青年ら約3万人が犠牲となったと言われる。事件から60年を経て、総統直属機関の長がその責任者は蒋介石だと断定したのだった。
中央通信社は「政治大学で22日早朝、裏門付近にある蒋介石の騎馬像の馬の左脚が切断され、右脚に赤いペンキがかけられているのが見つかった。台座には『2・28事件を忘れるな』と書かれた布が掛けられていた」と報じた。
この事件を起こしたのは学生団体だという。庇い立てするつもりはないが、このような行為に及んだ理由は推し量れるし、事実、学生団体は「『移行期の正義促進条例』を制定したにも関わらず、独裁者を尊ぶ行為が校内に存続している」と理由を書き残しているという。
しかし、翌23日に台南市内に昨年9月に建立された台湾独立建国聯盟主席だった故黄昭堂氏の銅像の顔や台座に赤色のペンキがかけられているのが発見されたという。
中央通信社は「犯行に及んだと自称する反独立志向の人物は同日、大手紙・聯合報を通じて独立派による蒋介石像への破壊行為に不満を表明し、最も有効な対抗策は『目には目を、歯には歯を』などとする意見を発表した」と伝えている。
学生たちと目される蒋介石騎馬像の馬の左脚切断には理由があるが、黄昭堂像へのペンキには理由がない。「目には目を、歯には歯を」というただの報復だ。あまりにも幼稚な、乱暴狼藉の類としか言いようがない。
◆政治大の蒋介石像の一部が切断される 自称学生団体が犯行声明 http://japan.cna.com.tw/news/asoc/201902220007.aspx
————————————————————————————-台湾独立運動家の銅像に赤いペンキ 蒋介石像破壊への報復か【中央通信社:2019年2月23日】http://japan.cna.com.tw/news/asoc/201902230005.aspx
(台南 23日 中央社)台湾独立運動の先駆者、故・黄昭堂氏の記念公園(台南市)で23日、黄氏の銅像の顔や台座に赤色のペンキがかけられているのが見つかった。警察は、22日午後10時ごろにペンキをかける男とそれを撮影する女の姿を防犯カメラが捉えていたとし、2人の身元特定を急いでいる。
犯行に及んだと自称する反独立志向の人物は同日、大手紙・聯合報を通じて独立派による蒋介石像への破壊行為に不満を表明し、最も有効な対抗策は「目には目を、歯には歯を」などとする意見を発表した。
台湾では近年、国民党政権が市民を弾圧した「2・28事件」(1947年)が発生した2月28日が近づくと、権威主義の象徴とされる蒋介石像を標的としたいたずらや破壊行為などが頻発する。22日にも、台北市の政治大学内に設置される蒋介石の騎馬像の一部が切断され、赤いペンキがかけられる事件があったばかりで、「移行期の正義に関心を寄せる大学生の集まり」を自称する団体が犯行声明を出していた。
(張栄祥/編集:塚越西穂)