黄昭堂先生を思う  蔡 英文(民主進歩党主席)

昨年11月17日、台湾独立運動に生涯を捧げてきた台湾独立建国聯盟の黄昭堂主席が大動
脈解離により急逝された。突然の訃報に多くの人々が戸惑いつつ嘆き悲しんだ。

 本年2月、台湾の2・28事件記念日を期し、台湾独立建国聯盟は黄昭堂氏への各界からの
追悼の言葉を編纂、『黄昭堂追思文集』として前衛出版から刊行している。

 その劈頭に、李登輝元総統の追悼文「黄昭堂永遠站在台湾国」があり、本誌でも紹介し
たが、次に拝されているのが民進党主席だった蔡英文氏の「黄昭堂先生紀念文(黄昭堂先
生を思う)」だ。台湾独立建国聯盟日本本部が翻訳したので下記に紹介したい。

 亡くなられてから丸1年目の11月17日、台湾独立建国聯盟日本本部は、後任の陳南天主席
を台湾からお招きして「故黄昭堂主席を偲ぶ会」を開催する。

◆台湾独立建国聯盟日本本部が「故黄昭堂主席を偲ぶ会―陳南天新主席を迎えて」を開催
 http://melma.com/backnumber_100557_5673936/


黄昭堂先生を思う

                            蔡 英文(民主進歩党主席)

 黄昭堂老先生のことを、「台独おじさん」と呼ぶ人もいます。また老仙(ラウセン)」
と呼ぶ人も少なくありません。これは、日本語の「先生」(せんせい)と台湾語の「老仙
覚(ラウセンカク)」の掛け言葉でもあります。こういった呼び名が、黄昭堂老先生の親
しみやすく、深みのある人格を反映しています。

 同志と友人の目に映った、黄昭堂老先生は人格者で、堅実で、人に寛容に接し、悪口を
口にすることなどありませんでした。ずっと台湾独立および主権運動の先駆者であり実践
者でした。台湾独立の理念を堅持することにかけては、決して妥協しませんでした。た
だ、外在の客観的な環境の移り変わりに応じて、その時々にあわせて台独運動を高め、新
たな里程へと邁進させました。

 2008年、私が民進党主席になったとき、私の党歴が浅く、街頭運動との関わりも極めて
少なかったにもかかわらず、黄昭堂老先生は惜しみない励ましと支持をくださいました。

 この数年間、民進党のもっとも難しい時期において、私たちが行った重要な活動、たと
えば、民間国是会議、公民投票署名活動、そしてすべてのデモ行進に、黄昭堂先生はいつ
も率先して支持を表明し、あるいは発起人になってくださいました。私が、2012年の総統
選挙に出ることを決めた当初も、黄昭堂先生はいち早く積極的に私への支持を表明してく
れた民主化運動の先輩の一人でした。こういった思い出の一粒一粒は、私の心に刻み込ま
れ、忘れがたいものです。

 黄昭堂老先生はいつも「台独運動こそ我が天職である」と言っていました。その生涯の
ほとんどは台湾の主権を勝ち取るための政治および社会運動に捧げられました。黄昭堂先
生のあらゆる学術研究でさえ、すべて台独運動から離れることはありませんでした。

 黄昭堂先生が1976年に書いた2冊目の台湾研究の著作は、彭明敏教授との共著『台湾の法
的地位』です。

 この本で黄昭堂先生が説いたのは、「台湾は中国の領土に属するのではなく、台湾は基
本的には台湾人の領土であり…また台湾の将来を決定するにあたっては、台湾人の願いが
尊重されなければならない」ということです。この本は、初めて国際法の角度から台湾史
を解釈したという点で際立っています。それまでに試みられたことがない方法論でした。
この著作の出版は、台湾独立運動家たちに、理論面において、また国民党政権との抗争に
おいて、正当性の根拠を提供しました。

 黄昭堂老先生の「台湾人」についての考え方は、第二次世界大戦前から台湾に生活して
いたホーロー、客家および原住民といったエスニックグループを含むだけでなく、1949年
以降、台湾に移り住んだ中国各省の人々をも含んでいます。この包容力に富む民族観は、
時代を超える卓見で、人々をして敬服せしめるものです。

 しかし、残念ながら、国民党政権が長期にわたって繰り返し台独運動に中傷を加え、恐
怖感を植え付けて選挙に動員して統治を固めたため、長期間にわたって、台湾の各エスニ
ックグループ間の相互不信が形成されてしまいました。

 今では、黄昭堂先生が唱えた「台湾は中国の領土に属するのではなく、台湾の将来の決
定には、台湾人の願いが尊重されなければならない」といった論点は、すでに台湾二千三
百万人のコンセンサスとなっています。さらには、黄昭堂先生が生涯をかけて対抗した国
民党政権ですら、この理念に黙って従わざるを得なくなりました。

 立論が正しく、論述が明晰でありさえすれば、「知こそ力」になるという思いを禁じえ
ません。黄昭堂老先生の正確で優れた考えと抜きんでた見識こそ、黄昭堂老先生の歴史に
おける地位を不動のものとするのみならず、民主化運動の進むべき方向を示してくれたの
です。

 2008年まで、黄昭堂老先生は国史館の張炎憲・館長(当時)のインタビューを繰り返し
受けていました。主なテーマは、出生、勉学、海外での亡命生活、台湾へ戻ってからの運
動といった、黄昭堂老先生の台独運動への尽力の過程についての学術的なオーラルヒスト
リーでした。

 黄昭堂老先生は、昔の日記は警察に「没収」されてしまったので、細かい部分について
記憶にたよるしかなく、事実と相違が生じてしまうかもしれない、と心配していました。
一方でまた、「これもいいところがある。他人の悪いところをいつまでも覚えていなくな
る。だから私は大きなことを成し遂げることが出来るんだ!」と話していました。老先生
の度量の大きさ、崇高な人柄を垣間見ることができます。

 残念なことに、政権交代で、2008年からの馬政権の親中政策のため、国史館はこのオー
ラルヒストリーのプロジェクトを徹底的に断ち切りました。この台湾の歴史記憶の累積に
とっての傷は、拭い去ることができないものです。それでも黄昭堂先生のこれまでのさま
ざまな貢献と、黄昭堂先生が私たちに残した深く、美しい思い出は、後輩である私たちに
とって他にはない模範であり、また台湾社会の大切な資産であることは確かです。

 昭堂老先(ラウセン)、私たちはあなたのことを忘れません。あなたの理念を懸命に伝
えていきます。どうぞ天国で安らかになさってください。そして、そのもう一つの世界で
私たちのために祈ってください。いつか、私たちは成功します。国家の尊厳を取り戻し、
公平で正義に満ち、包容力のある団結した社会を築きます!

                          (台湾独立建国聯盟日本本部訳)


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