数は、台湾を除けば日本が世界で一番多かったという。日本の大手紙の朝日新聞、日経新聞、毎日
新聞なども社説で取り上げ、おおむね台湾の民主化や民意に焦点をあて、台湾住民のバランス感覚
の表れ(毎日)という論調だった。
本日の中日新聞も社説で取り上げた。台湾社会には「中台統一への流れができることへの警戒は
大きい」として、馬英九政権に対して「政府は大衆が納得する形で中国との関係強化を進めていっ
てもらいたい」と注文をつけ、中国政府にも「台湾の不安を……中国指導部もしっかり認識してほ
しい」と注文をつけるなど、中日新聞にしては珍しく中国へも一歩踏み込んだ論調だ。
今朝の朝日新聞は鵜飼啓・台北支局長の特派員リポートを掲載している。なかなか読み応えがあ
る。台湾の民主化に焦点を当て、学生たちの決定過程の悩みにも触れつつ「23日間の出来事に触れ
た何十万人もの人たちは、折に触れてこの体験を語り合い、民主主義を勝ち取るDNAを引き継い
でいくのだろう」と結ぶ。別途、下記にご紹介したい。
台湾学生退去 運動は終わっていない
【中日新聞「社説」:2014年4月17日】
中国との市場開放を進める協定に反対して立法院(国会に相当)に立てこもっていた台湾の学生
たちが議場を退去した。平和的な解決になったが、台湾の若者たちの中国不信が浮き彫りになった。
一カ月近くに及んだ台湾立法院の学生による占拠は政府側が学生たちの要求に一部妥協した形で
収束した。強行突入などが回避されたことは台湾の民主体制を内外に示したともいえる。
運動のきっかけは馬英九政権が昨年、中国と結んだ中台サービス貿易協定だ。協定は医療、金融
などサービス部門で中台それぞれが市場を開放する内容だ。
学生たちは、中国資本の参入により台湾の中小企業が危機に陥る、と判断。さらには、協定の内
容を詳しく説明することなく、国民党政権がわずかの審議で強行採決を図ろうとしたことに「民主
政治の危機だ」と反発した。
いったんは学生の主張を拒否した馬政権だが、世論が学生側についたこともあり、協定を立法院
が監視する条例案を受け入れ、事実上、協定の発効を延期した。
台湾が各国との環太平洋連携協定(TPP)を結び、国際的な経済の結び付きを広げるためには
中国との関係改善が不可欠なことは周知の事実だ。今回のサービス貿易協定でも台湾側に有利な点
が多いとして、賛成する経済人は多い。
ただ、馬政権が進める中国との関係の強化は、経済の枠にとどまらず、中台統一への流れができ
ることへの警戒は大きい。
学生たちは「今後は市民と連動して社会運動として発展させていく」と、事態が完全に終結して
いないことを宣言している。政府は大衆が納得する形で中国との関係強化を進めていってもらいたい。
25年前の4月、中国の学生たちが民主化を求めてデモを開始した。自由を求める声は全国に広
がったが、2カ月後、天安門事件で学生運動は終結した。
現在の中国の民主運動への抑圧は台湾の学生に無縁ではない。最近の香港の実情も不安材料に
なっている。今回のデモでは香港からの支援者も多かった。「言論の自由はなくなるし、生活もよ
くならない」と中国化への不満が寄せられ、「台湾頑張れ」のエールがあったという。
馬政権の中国との関係改善政策も平たんな道ではないことが露呈した。こうした台湾の不安を国
民党政府さらには中国指導部もしっかり認識してほしい。