この判決がもたらす影響は小さくない。韓国は国際条約もルールも守れない非法治国家という烙印を押されて信用失墜し、国際社会における活動は相当狭められるはずだ。日本は堂々と国際司法裁判所へ提訴すればよい。それが、台湾へ圧力を加え続ける中国への牽制ともなる。
この韓国最高裁判決を巡って、西日本新聞が詳しく論評しているので下記に紹介したい。
なお、この韓国出身者が「徴用工として強制的に連行・労働させられた」ということの比較で、台湾の少年工を持ち出す記事も出たが、これは誤解を招きやすい。台湾少年工は強制的でもなければ、連行させられたのでもないからだ。詳しくは、10月20日に開催した「台湾高座会留日75周年歓迎大会」のホームページをご覧いただきたい。
台湾少年工は競争率10倍を超える試験を突破して来日し、高い技術力を身につけた。彼らにとって「少年工」として日本で働きながら勉学に励んだことは誇りなのだ。その矜持を胸に戦後台湾を生き抜き、日台の架け橋になったのである。
◆台湾高座会留日75周年歓迎大会開催のご案内 http://jt75.info/
————————————————————————————-韓国側の「矛盾」露呈 元徴用工判決、歴代政府の立場とずれ【西日本新聞:2018年10月31日】
韓国最高裁が30日、第2次大戦中の日本で強制労働させられたとする元徴用工の訴えを認め、日韓の戦後補償問題で初めて日本企業に対する賠償命令が確定した。国交正常化の根拠となる1965年の日韓請求権協定を根底から揺さぶる判断といえ、日本政府は猛反発。一方の韓国の文在寅(ムンジェイン)政権も、どう決着を図るか見通せていないとみられる。「未来志向」を目指す日韓はこれまでにない重い外交課題を抱えることになった。
韓国 歴代政府の立場とずれ 「政府は今回の判決が韓日関係に否定的な影響を及ぼさないよう、両国が知恵を集める必要性を日本側に伝えた」。歴史的な判決から数十分後、韓国外務省の報道官は記者会見で言葉を慎重に選んだ。日本による植民地支配を「日帝時代」と呼んで徹底的に批判してきた韓国政府だが、この日は夕方に李洛淵(イナギョン)首相名で「司法府の判断を尊重する」などとする短いコメントを出しただけだった。
こうした微妙な反応は、元徴用工訴訟の影響の大きさを韓国政府が自覚していたことを示す。2012年に公表した強制労働の「戦犯企業」は九州の旧炭鉱や港運会社などを含む299社。申告があった元徴用工は22万人以上に達する。上告審で日本企業の敗訴が確定し、日本側に賠償を求める訴訟がさらに増えるのは確実。実のところ、政府内でも元徴用工訴訟は「日韓関係の最大の地雷」と警戒されていた。
韓国側の「矛盾」も露呈
韓国側の「矛盾」も露呈した。請求権協定で韓国政府は当時の国家予算の2倍に当たる5億ドルの経済協力金を日本から受け取り、従軍慰安婦も含めて全ての個人請求権が解決したとの立場を取ってきた。
盧武鉉(ノムヒョン)政権時の05年には同協定の経緯を検証。元徴用工への補償という性質が、日本から受け取った協力金に含まれていると結論づけ、補償に問題があるとすれば「韓国政府に道義的な責任がある」とした。この検証作業には文氏も政府高官として参加していた。
日韓外交に詳しい国民大学の李元徳(イウォンドク)教授は「まず、司法の確定判決と、歴代の韓国政府の立場、文氏の立場との整合性を整理する必要がある」と指摘する。そのため、韓国政府が再び05年のような検証作業に入るとの見方が出ている。
今月は1998年に金大中(キムデジュン)大統領と小渕恵三首相(共に故人)が日韓の未来志向の関係発展を約束した「日韓パートナーシップ宣言」から20年の節目だ。文氏は9月、米ニューヨークで安倍晋三首相と会談した際、最優先課題に掲げる北朝鮮の非核化実現に向けて連携強化の必要性を確認した。
一方で文氏はその際、従軍慰安婦問題を巡る2015年の日韓合意に基づいて発足した韓国の「和解・癒やし財団」が活動停止状態になったとして、解散の可能性を示唆。財団を合意の核心と位置づける日本政府は反発を強めている。
韓国外務省関係者は「慰安婦問題に徴用工問題まで加わり、日韓関係がさらに不安定になりそうだ」と表情を曇らせた。
日本 国際常識を逸脱と反発
韓国最高裁の判決を受け、日本政府は「国際社会の常識では考えられない」(河野太郎外相)と強く反発した。ただ、北朝鮮情勢を踏まえれば、日韓関係の悪化は最小限にとどめたいのも本音だ。当面は国際司法裁判所(ICJ)への提訴など対抗措置をちらつかせつつ、韓国政府が事態をどう収拾するかを見極める。
「国交正常化以来、両国の友好関係の基盤となってきた法的基盤を根本から覆すものだ」。河野外相は30日、李洙勲(イスフン)駐日韓国大使を外務省に呼び、判決に強く抗議した。
政府は日本企業に賠償金の支払い義務はないとの立場だ。韓国は1965年の国交正常化で、日本から経済協力金の名目で5億ドルを受け取っている。元徴用工への補償は韓国の国内問題であり「日本企業に影響が及ばないように対応する責任は韓国政府にある」(外務省幹部)。
政府は韓国側の出方次第では、強硬措置も辞さない構えだ。日韓請求権協定には、紛争解決のため第三者を交えた仲裁委員会を設ける規定がある。政府は同委員会設置のほか、国際司法裁判所への提訴など「あらゆることを視野に入れた対応」(河野外相)を強調している。
全面衝突の可能性は低いとの見方強く
ただ、全面衝突の可能性は低いとの見方が強い。今回の判決について、日韓関係に詳しい専門家は「国際法上の解釈で勝ち目が薄いことは韓国政府も知っている。日本の圧力は、韓国政府を動かすための脅し」。外務省関係者も「いつまでに、とはあえて言っていない」と言い、期限を切って韓国政府に対応を迫っていないことを明かす。
国交正常化交渉では、過去の植民地支配を違法とする韓国と、合法だったとする日本が対立。双方が都合よく解釈できる「もはや無効」とのあいまいな表現で基本条約締結にこぎ着けた経緯がある。外務省幹部は「この論点を蒸し返すのは不毛だ。韓国政府も分かっているはずだ」と話す。
韓国進出企業に不安 経団連や日韓経済協会など経済4団体は30日夕、都内で緊急記者会見を開き「韓国政府に対し、日本企業の正当な経済活動が保護されるよう適切な措置を取ることを強く要望する」とのコメントを発表した。同種訴訟を抱える企業や韓国に拠点を持つ企業から、影響を懸念する声が出ている。
敗訴が確定した新日鉄住金はコメントで、判決に対して「日韓請求権・経済協力協定や政府見解に反する」と指摘。今回の原告4人中2人が同様に提訴し、同社が勝訴した日本の確定判決にも反すると批判した。賠償の支払いを拒めば今後、韓国内の資産が差し押さえられる可能性があるが「資産の有無も含めコメントしない」とした。
元徴用工が日本企業を相手取って係争中の訴訟は他に14件あり、今回の判決がこれらの訴訟に影響を与える恐れもある。係争中の三菱重工業は「当社の判決がいつ出るかも分からない。今回は他社の事案なのでコメントを差し控える」(広報グループ)とした。
韓国2都市にホテルを持ち、国際物流網もある西日本鉄道(福岡市)は「どのような影響があるのか、注視したい」(広報課)としている。