府の拙劣な対応が問題視されたが、昨日「米軍の迎撃態勢と日米の情報共有の全容」が分
かったことを受け、今朝の産経新聞1面トップは「権利は有するが行使はできないという集
団的自衛権の解釈見直しは待ったなしだ」と、早急に憲法解釈を変更して集団的自衛権の
行使を可能にすべきだと力説している。異論はあるまい。議論の余地はすでにない。
日本は友邦台湾の「有事」に対応するためにも、集団的自衛権の確立は急がなければな
らない。
◆北ミサイル発射に米「迎撃は本国防衛のみ」と通告
【産経新聞:平成24(2012)年7月14日】
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120714/plc12071408200010-n1.htm
集団的自衛権の解釈変更急務
【産経新聞:平成24(2012)年7月14日】
北朝鮮の弾道ミサイル発射で米海軍がイージス艦を7隻展開させたことは、北朝鮮による
ミサイルの長射程化と搭載可能な核兵器小型化に対する危機感の表れだ。黄海への配置で
日本の要請に応じる一方、「米国防衛」に限り迎撃するとの対処方針は、日本防衛を目的
にした迎撃の見送りを意味する。ミサイル発射から3カ月たち集団的自衛権の行使を可能に
する憲法解釈変更が急務であることが浮き彫りになった。
◆中国の網の中
「黄海に入ることはリスクを伴う」。政府高官は米イージス艦の黄海への配置をそう振
り返る。中国大陸と朝鮮半島の間にある黄海に展開すれば、中国の情報収集網にさらされ
てしまう。北朝鮮が2009年4月に弾道ミサイルを発射した際には、発射場所は北東部の咸鏡
北道舞水端里だったため、黄海には展開しなかった。
今回のミサイル発射時、中国海軍艦艇などは偵察活動を活発化した。米イージス艦レー
ダーの電波の周波数帯や照射方法、探索パターンを確認しようとしたとみられる。周波数
帯を把握されれば、中国の弾道ミサイルにも対処する米軍のミサイル防衛(MD)が無力
化される恐れもある。
それでも中国国境に近い北西部の「西海衛星発射場」と称する新基地が初めて使われた
こともあり、ミサイルをいち早く探知し、迎撃態勢に入るために黄海配置が決まった。イ
ージス艦はミサイル発射から約1分後に1段目を分離した後に航跡が途絶えたことを確認し
た。
◆片務性の象徴
米側からはミサイルの航跡情報はリアルタイムで自衛隊に伝えられたが、日米同盟に横
たわる「片務性」を広げたことも否めない。
ただでさえMDは片務性を象徴する共同作戦。自衛隊が迎撃できるのは「日本に飛来す
るミサイル」だけで、米国を狙ったミサイルは集団的自衛権の行使にあたるとして、迎撃
できないというのが政府見解だからだ。防衛省幹部は「日本防衛のメリットだけをつまみ
食いしていれば、いずれ日米同盟は破綻する」との懸念を示す。
政府の「国家戦略会議フロンティア分科会」は今月6日、集団的自衛権の解釈見直しを求
める報告書を野田佳彦首相に提出した。首相は12日の衆院予算委員会で「議論は行われて
しかるべきだ」と検討の必要性を認めた。
首相は9月の民主党代表選で再選された場合、その後に解釈見直しの検討を本格化させた
い意向とされるが、旧社会党議員も抱える民主党内の反対論を封じるのは容易ではない。
だが、北朝鮮が再びミサイル発射や核実験を挑発カードとして使う恐れも依然残る。米
側は今回、予測飛行ルートに近い米軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)に落下するケー
スを除けば、日本に落下するミサイルを迎撃しないと通告してきたに等しい。日本側がこ
の方針を翻意させるすべを持たないことも自明で、権利は有するが行使はできないという
集団的自衛権の解釈見直しは待ったなしだ。
(半沢尚久)