朝日新聞は5月21日付の社説で「『現状維持』を掲げ、対立を避けた政権運営は評価できる」としつつ、11月の統一選挙向けに「支持集めをねらって台湾の独立心をあおるのは、危うい」「自ら現状を変えるかのような言動で緊張を高めては、展望はひらけない」と自制を求める。抑制的な姿勢を崩さなければ、「民意を尊ぶ台湾社会の成熟ぶりを、国際社会は認めている」のだから、中国は「力でつぶすことは決して出来ないはずである」と主張している。
また、産経新聞は「各種の経済指標は好調ながら、支持率は低空飛行が続く」としてTVBSが5月15日に発表した世論調査を引用し「支持26%、不支持60%と評価は厳しい」(5月18日付)とネガティブなニュアンスで政権運営ぶりを伝えた。
この世論調査の数字を見て、思い出したのが今年2月に聯合報が伝えた世論調査だ。この世論調査は「台湾競争力フォーラム」というところが実施したもので「蔡英文総統の不満足者は60・3%に上り,満足者は僅かに27・6%」という結果だった。
産経が引用したTVBSの世論調査とほぼ同じで、野党第一党の国民党もこの聯合報の記事を要約して「NPF News Website」で紹介していた。この国民党の「NPF News Website」では、政党支持率について「台湾競争力フォーラム」の世論調査は「国民党が19・1%で,民進党は18・1%、時代力量が6・2%で親民党2・1%」となっていたそうで、蔡英文政権になって初めて国民党の支持が民進党を上回ったとも報じていた。
一方、5月20日に台湾民意教育基金会が発表した世論調査では「蔡総統の施政に対する支持率は39.2%で前月より7.2ポイント回復した」と中央通信社は報じている。記事では「昨年11月以来の高水準となった」背景について、陳菊氏の総統府秘書長起用や「蔡総統が最近、実績や政策のアピールに力を入れたことも影響している」と伝え、朝日新聞の観点とほぼ真逆の分析を紹介している。
————————————————————————————-蔡総統就任2周年 支持率前月より回復も30%台=民間団体【中央通信社:2018年5月20日】http://japan.cna.com.tw/news/apol/201805200002.aspx
(台北 20日 中央社)蔡英文総統は20日、就任2年を迎えた。民間団体の台湾民意教育基金会が同日発表した最新の世論調査の結果によれば、蔡総統の施政に対する支持率は39.2%で前月より7.2ポイント回復した。だが、不支持率は47.6%に達し、支持率を上回った。
蔡総統の支持率は昨年11月以来の高水準となった。同基金会の游盈隆董事長(会長)は支持率回復の理由に、高雄市長だった陳菊氏の総統府秘書長(官房長官に相当)起用などを挙げた。また、蔡総統が最近、実績や政策のアピールに力を入れたことも影響しているという。
だが主要な政策については、ほとんどの項目で「不満足」が「満足」を上回る結果となった。満足から不満足を引いた値がプラスとなったのは「年金改革」のプラス8.2%のみで、「国防」はマイナス3.8%、「外交」はマイナス14.5%、「両岸(台湾と中国大陸)関係」はマイナス18.4%、「経済」はマイナス25.8%だった。
游董事長は、蔡総統の支持率が回復しつつも低迷を続けている理由は改革の推進自体ではなく、改革に成果が見られないことにあると指摘。支持率が低いのを改革のせいにしていては説明がつかないと苦言を呈した。
調査は14〜15日、台湾に住む20歳以上の男女を対象に電話で実施された。有効回答件数は1071件だった。
(顧セン/編集:楊千慧)