緊迫する東アジア情勢を巡って藤井厳喜、柚原正敬、河添恵子の各氏が夕刊フジにコメント

北朝鮮をめぐって、東アジア情勢がにわかに緊迫感を帯びてきた。

 金正恩・朝鮮労働党委員長による3月25日からの中国電撃訪問による中朝首脳会談、中国の王毅・国務委員兼外相の4月4日からの訪露による5日のラブロフ外相との会談、韓国の文在寅・大統領と金正恩朝鮮労働党委員長による4月27日の首脳会談などが行われ、7月26日には中国の習近平・国家主席が北朝鮮を訪問するとも伝えられている。

 事の発端は、3月8日、米国のトランプ大統領が金正恩・朝鮮労働党委員長の招待を受け入れ5月までに米朝首脳会談に応じると公表されたことだった。

 米国はその一方で、台湾との関係強化を強め、3月16日、トランプ大統領は下院と上院において全会一致で可決された「台湾旅行法」に署名、法律として成立させている。

 この緊迫の度合いを強める東アジア情勢とトランプ政権の今後について、夕刊フジは国際政治学者の藤井厳喜氏、本会の柚原正敬・事務局長、ノンフィクション作家の河添恵子氏の3氏のコメントを基に記事を掲載した。下記にその全文をご紹介したい。

 ちなみに、本年6月12日に新たにオープンする米国在台湾協会(AIT:American Institute in Taiwan)の台北事務所は、他の在外公館と同じく海兵隊が警備する。昨年2月15日、米国のシンクタンク「Global Taiwan Institute(GTI)」が開催したシンポジウムの席上、スティーブン・ヤング元AIT台北事務所長がこの海兵隊配備について「これは米国による台湾重視の具体的な象徴だ」と明らかにしている。

 海兵隊は大統領の命令一下で動く直属の部隊で、警備以外にも300人ほどが常駐するのではないかといわれている。

—————————————————————————————–トランプ氏、次は米韓同盟破棄か 「反米・親中・従北」の文在寅政権への強い不信感 接近する中朝韓に対抗し「日米台連携」も【夕刊フジ:2018年3月31日(3月30日発売)】

 ドナルド・トランプ米大統領は、衝撃の「外交カード」を切るのか−。5月に見込まれる北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との米朝首脳会談で、恒久的な「朝鮮半島の非核化」を条件に、「米韓同盟破棄」を容認する可能性が指摘されている。背景に「反米・親中・従北」という韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権への強い不信感がある。26日の中朝首脳会談や、4月27日の南北首脳会談を横目に、米国は台湾への「軍事的プレゼンス」を高めるとの観測もある。「完全な非核化」のハードルは高いなか、接近する中朝韓に対抗し、「日米台連携」による東アジアの安全保障体制が構築される可能性もある。

「北朝鮮が、完全で検証可能かつ不可逆的な方法で核放棄をすることと引き換えに、トランプ氏が在韓米軍の撤退に応じることはあり得る。その場合、日本が朝鮮半島と対峙(たいじ)する最前線となり、日米同盟の一層の強化が求められる」

 国際政治学者の藤井厳喜氏は、衝撃の予測事態を提示した。

 トランプ氏の文政権に対する不信は根強い。

 昨年9月の日米韓首脳会談直前、文政権は突然、北朝鮮に800万ドル(約8億9000万円)相当の人道支援目的の拠出を決定した。平昌(ピョンチャン)冬季五輪に際しては、米国が制裁対象としている正恩氏の妹、与正(ヨジョン)氏の開会式出席を容認したほか、期間中の米韓合同軍事演習の見送りも強く主張した。

 藤井氏は「米韓同盟の破棄は、日本にとって、必ずしも悪いことではない」と指摘し、続けた。

「米国は、『従北』の韓国に配慮する必要がなくなり、日本との同盟関係を一層重視する。今後は、軍事的膨張を続ける中国に対抗し、日米両国が台湾の安全保障に協力する方向に進むだろう」

 日本と台湾の交流を進める「日本李登輝友の会」の柚原正敬事務局長によると、同会は近く、「日米の安全保障に関する共同訓練に台湾を参加させるべきだ」と、日本政界に提言するという。

 実は、米国と台湾は最近、急接近している。

 米台高官らの相互訪問を促す「台湾旅行法」が16日、米国で成立した。すでに、アレックス・ウォン米国務次官補代理(東アジア・太平洋担当)や、イアン・ステフ米商務次官補代理が訪台し、エド・ロイス米下院外交委員長(共和党)も27日、台湾の蔡英文総統と総統府で会談した。

 米台関係の強化を図る取り組みは、軍事レベルでも進んでいる。

 新しい大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に内定したジョン・ボルトン元国連大使は昨年1月、米紙ウォールストリート・ジャーナルに寄稿した論文で「台湾への米軍駐留」を提言した。

 もし実現すれば、中国が軍事拠点化を進める南シナ海や、中国海軍が沖縄県・尖閣諸島周辺への進出を繰り返す東シナ海での有事に、迅速に対応することが可能になる。

 現在、台湾の米国大使館に相当する「米国在台湾協会」(AIT)台北事務所が建て替え工事中だが、完成後、世界各国の大使館、領事館の警備を担当している海兵隊が警備を担当するとの情報もある。

 前出の柚原氏は「これが実現すれば、台湾も、主権国家並みの位置づけになる。AITの新たな台北事務所は今年6月に開所式が開かれるが、海兵隊は数百人規模になるともいわれている。米国の『台湾重視の象徴』となり、軍事や経済で脅威を増す中国への揺さぶりになるだろう」と話す。

 当然、米台の接近に、中国は神経をとがらせている。

 中国情勢に精通するノンフィクション作家の河添恵子氏は「習近平国家主席は『台湾統一』を成し遂げたい。正恩氏と会談したのも、『北朝鮮との関係悪化を解消し、台湾問題にシフトしたい』という意志のあらわれではないか」と分析し、続けた。

「中朝首脳会談で『非核化』が議題になったと伝えられるが、そう単純ではない。習氏は、北朝鮮に『核・ミサイル』を開発させ、台湾牽制(けんせい)の拠点にすると伝えられた江沢民元国家主席時代の再来を狙っている可能性がある。日本は米国を通じて台湾と緊密に連携していく必要があるが、台湾の軍部には中国系スパイがはびこり、情報漏洩(ろうえい)のリスクがある。慎重な対応が必要だ」

 台湾は、日本と東アジアの平和と安定を確保するための「生命線」(藤井氏)だ。東アジア情勢は、さらなる変化を遂げそうだ。


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