米政界の決意を引き出した蔡英文総統の「民主パートナーとの共栄の旅」

 台湾の蔡英文総統は3月29日から呉[金リ]燮・外交部長や林佳龍・総統府秘書長などを伴い国交国のグアテマラとベリーズを訪問、また往路と復路には米国にトランジットする9泊10日に及ぶ「民主パートナーとの共栄の旅」から本日(4月7日)帰台する。

 出発直前の3月26日、台湾と国交を持っていたホンジュラスが台湾と断交して中国と国交を樹立し、3年ぶりの外遊を不安視する向きもあった。

 しかし、米国への立ち寄りでは、往路のニューヨークでは3月30日に下院民主党トップのハキーム・ジェフリーズ院内総務と面会し、31日にはダン・サリバン議員(共和党)、ジョニー・アーンスト議員(共和党)、マーク・ケリー議員(民主党)の3人の上院議員と朝食会を行っていた。また、帰路のカリフォルニア州ロサンゼルスでは、4月5日にロナルド・レーガン大統領図書館でケビン・マッカーシー下院議長と、マイク・ギャラガー委員長はじめ下院の「米中戦略競争特別委員会」メンバー多数が同席する中で会談している。

 台湾総統が米国内で大統領権限を継承する順位が副大統領に次ぐ2位の要職である下院議長と会談するのは初めてのことで、また、政権与党である民主党の下院院内総務と米国内で会談するのも初めてで、米台関係に新たな地平を切り開いたと言える。

 会談後、マッカーシー下院議長が記者会見で「アメリカは今後も台湾への武器売却を継続し、武器が速やかに台湾に届くようにしなければならない。また、貿易や先端技術の分野での経済協力を強化するとともに両者の共通の価値観を引き続き促進していくべきだ」(NHKニュース)と述べたことに表れているように、米政界から安全保障と経済面での関係強化の意向を引き出したことも見逃せない。

 なにより、下記に紹介する産経新聞が指摘するように「防衛協力の重要性を踏まえた米政界の決意」を引き出したことが大きな成果と言えるのではないだろうか。世界が注目する中で米政界が決意を披露したことは、中国への大きな抑止力として働くだろう。

https://www.youtube.com/supported_browsers?next_url=https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fwatch%3Fv%3Df3nfrNWRDvo

—————————————————————————————–米の台湾関与は新段階 中国の侵攻に備え抑止強化 米台会談【産経新聞:2023年4月7日】https://www.sankei.com/article/20230406-DDZHNUSUJJLX3GPEC6D2SWCUSU/?847445

【シミバレー(米カリフォルニア州)=坂本一之】米国で下院議長と台湾の総統による断交後初の会談が実現し、米国の台湾関与は新たな段階を迎えた。台湾統一を掲げる中国の習近平政権が軍事力を増強しており、バイデン米政権は台湾への防衛支援を強化し、侵攻抑止に力を入れる。米政権や議会は「一つの中国」政策を維持しつつ、中国が台湾への軍事圧力を高めていることに合わせ台湾関与の水準も引き上げている。

「台湾への武器売却を継続し、武器がタイムリーに台湾に届くようにする」

 マッカーシー米下院議長は5日、蔡英文総統との会談に参加した超党派議員団と記者会見を開き、会談を踏まえた対応として武器売却の充実をあげた。

 議会とバイデン大統領は昨年12月、2023会計年度の国防予算の大枠を決める国防権限法を成立させ、台湾の防衛力向上に向けて5年間で最大100億ドル(約1兆3千億円)を確保した。ただ実際の売却には調整に時間を要し、台湾側の要望通り供与することが難しいのが実情だ。マッカーシー氏はより需要に即した支援を目指す姿勢だ。

 中国の台湾侵攻に危機感を強める米政権で、オースティン国防長官が3月の議会公聴会で、沿岸防衛力に関する武器供与を「より迅速に行う」と表明。米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は米軍の支援で台湾の防衛力を3〜4年で強化する考えを示した。

 政権は中国が2027までに台湾を侵攻できるように準備していると判断し、抑止力強化を急ぐ。フィリピンとは同国内で使用できる米軍拠点の拡充で合意。フィリピン大統領府が今月3日、台湾に近い北部や、中国が海洋進出を強める南シナ海に面した西部の4拠点を発表した。

 台湾への米防衛協力の基礎となっているのが、レーガン政権が1982年に定めた「6つの保証」だ。武器売却の終了期日を設けないことなどをうたい、台湾支援の姿勢を示した。マッカーシー氏が米台関係の象徴のひとつであるレーガン大統領記念図書館で蔡氏と会談したことは、防衛協力の重要性を踏まえた米政界の決意を示したといえる。

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