王育徳から受け継いだ台湾魂、そしてブヌン族研究から「タイワンダー☆」へ  近藤 綾

『すぐ使える!トラベル台湾語』著者の近藤綾(こんどう・あや)さんは、台湾語研究者で台湾
独立運動の指導者だった王育徳・明治大学教授を祖父に、台湾独立建国聯盟日本本部委員長をつと
める詩人の王(近藤)明理さんを母としています。

 高雄日本人会発行『高雄プレス』11月号にインタビューが掲載され、それに加筆修正したインタ
ビューが「日台若手交流会」(加藤秀彦代表)のウェブサイトに掲載されました。

 20歳まで話せなかった台湾語を習得してみようと思ったきっかけや、「台湾人意識」を育ててく
れた背景などについてお話していて、示唆に富むインタビューです。下記に全文をご紹介します。

 なお本会の昨年の「日台共栄の夕べ」に登場いただいた台湾応援ゆるキャラの「タイワンダー
☆」オフィシャルサイトは下記のとおりです。

◆「タイワンダー☆」オフィシャルサイト
 http://www.cheer4taiwan.org/

                 ◇    ◇    ◇

近藤綾 プロフィール
1979 年東京都出身。『すぐ使える!トラベル台湾語』(日中出版、2007 年)の著者。日本人のお
父様と台湾人のお母様の間に生まれ、台湾語研究の第一人者、王育徳氏のお孫さんでいらっしゃい
ます。近藤さんご自身は日本で育ったこともあり、台湾語を勉強し始めたのは大学時代からとのこ
と。台湾原住民族史をご専門とされ、台北駐日経済文化代表処(台湾駐日大使館)代表秘書室にご
勤務経験があり、現在も積極的に日台をつなぐ活動をされています。


王育徳から受け継いだ台湾魂、そしてブヌン族研究からタイワンダー☆へ (『トラベル台湾語』
著者 近藤綾インタビュー その1)
日台若手交流会:2017年1月28日】

http://jteang.org/column/%e7%8e%8b%e8%82%b2%e5%be%b3%e3%81%8b%e3%82%89%e5%8f%97%e3%81%91%e7%b6%99%e3%81%84%e3%81%a0%e5%8f%b0%e6%b9%be%e9%ad%82%e3%80%81%e3%81%9d%e3%81%97%e3%81%a6%e3%83%96%e3%83%8c%e3%83%b3%e6%97%8f%e7%a0%94/20170128
*祖父で台湾語研究者の王育徳博士と一緒の写真などを掲載。

── 近藤さんは、台湾とはどのようなつながりがあるのですか?

 アコン(祖父)の王育徳は、台湾語・台湾史の研究者でもあり、台湾独立建国聯盟の前身「台湾
青年社」を立ち上げるなど、台湾の民主化運動に尽力するとともに、台湾人元日本兵の補償問題に
も携わった活動家でした。1947 年の 2・28 事件で兄を殺され、自身も政府に批判的な劇を上演し
たことで国民党政府に睨まれ、1949 年に日本へ亡命してきました。その後家族を呼び寄せ、そこ
で生まれたのが私の母です。母は、そのまま東京で育ち、日本人の父と結婚し、私と弟を産みまし
た。なので、私は在日台湾人三世(日台ダブル)ということになります。

 アコンは、私が 5 歳の時に亡くなったので、活動については著作を通して知りました。そこ
で、「台湾は台湾である」というスピリットをかなり早い段階で培ったと思います。とはいえ、直
接の記憶では、いつも手を引いて散歩に出かけては駄菓子屋さんで飴やガムを買ってくれる、どこ
までも優しいおじいちゃんでした。

 アコンは、志半ばにして亡くなったため、遺稿がたくさん残されており、その整理や編集・翻
訳・出版作業にも、のちに随分関わることになりました(王育徳『「昭和」を生きた台湾青年』草
思社、2011 年ほか)。

 母も日本生まれ日本育ちですが、熱い台湾魂の持ち主なので、私が小さい頃から、台湾関係の会
合によく連れて行ってくれました。実家の本棚は、1コーナー丸々、台湾関係の書籍で埋め尽くさ
れています。それで、私も、自然と、「自分は台湾人でもあるんだ」と思いながら育ちました。

 また、アマァ(祖母)は、91 歳の今もかくしゃくとしていて、毎日ちゃんと新聞を読み、台湾
情勢をばっちりフォローしています。もちろん、台湾の昔話や台湾文化のことも沢山話してくれま
す。特に、台湾料理に関しては名手なので、色々教わりました。アマァのビーフンやアンショー
ヒィ(揚げ魚のあんかけ)は最高です! 家族みんなでバーツァン(肉粽)を包んだり、腸詰を手
作りしたり、小さいころから食卓を通していつも台湾が近くにありました。アマァの存在も、私の
「台湾人意識」を育ててくれた大きな一因です。

── ご専門は台湾原住民史と伺いましたが、ご自身の研究について簡単に教えてください。

 もう研究から遠ざかって久しいので、研究者を名乗るのは憚られますが……。修論のタイトル
は、「日本植民地期の台湾原住民に対する集団移住政策と『マラリア流行事件』−台中州ブヌン族
の事例研究を中心に−」というものです。多くの台湾の先住民族(「原住民族」)は、日本植民地
時代に、元来の居住形態である標高 1500mの高山に散住する形態から、低標高(700〜800m)の
土地に集団で住むよう強制移住させられた歴史があります。また、その際、狩猟+焼畑農耕だった
生業も、定住水稲農耕へと強制転換させられました。そのほうが、統治者側としては管理しやす
かったためです。

 ところが、当時の台湾の低標高地にはマラリアが蔓延していたうえ、水田の用水路などがマラリ
ア蚊の発生を助長し、その結果、多くの死者を出す大流行が起きました。例えば、武界という移住
先の村では、1933 年だけで人口の 81.6%にあたる 1707 人もが罹患し、21人もの死者を出してい
ます。その結果、1927 年に 796 人だった人口は、1942 年には 356人へと激減しました。こうし
た事例はいくつもあり、しかも現場の警察官や公医は、こうした事態を重く見て、移住の中止を進
言したものも少なからずいたようです。しかし、上層部はこうした意見を無視し、移住政策を強行
し続けました。

 現在の言論、特に日本における台湾関係書は、日本植民地統治に関して、良い面ばかりに光を当
てることが多く、偏った印象を覚えます。特に、この「マラリア流行事件」に対しては、ほとんど
語られてきませんでした。おそらくそれは、それまでの論文や書籍の多くが、為政者側が残した記
録のみに基づいて書かれていたことにも起因すると思います。

 私はこうした状況に危機感を覚え、現地でまだ記憶を持っていらっしゃるお年寄りたちから話を
聞き、それをインタビュー形式でまとめるとともに、日本側の記録史料および医療関係の資料など
に基づいて、上述の論文を書きました。お蔭様で、大学院でも高い評価をいただき、その後、自費
で製本することになりました。

 今でも、このときフィールドワークに入った南投縣信義郷のブヌンの方々とはとても仲良くさせ
ていただいており、第二の故郷とも言える気持ちを抱いています。ブヌンを知って、「台湾」とい
うものを見る視野がぐっと広がりました。ブヌン語も、私は最低限の日常会話くらいしかできませ
んが、とても魅力的な言語です(文法はとても複雑ですが、発音はかなりシンプルなので、丸覚え
が効きます)。皆さんも、高雄縣にはたくさん先住民族の方が住んでいるので、ぜひ遊びに出かけ
ていらしてください。旅行だとなかなか足を延ばせない地方も多いですし、在住者の方ならではの
貴重な体験ができるかと思います。

── 『すぐ使える!トラベル台湾語』の著者でいらっしゃる近藤さん。なぜ台湾語の本を書こう
   と思ったのですか?

 まず、自分の台湾語とのかかわりについてお話しますと、実は 20 歳までは数字と限られた単語
しか知りませんでした。何せ、家庭内の会話は全て日本語で、母も台湾語はほとんど話せなかった
からです。アマァが時々電話で「ホー」とか「ヘー」とか言っているのが「台湾語」だということ
は知っていたのですが、それを話せるようになろうとはあまり思っていなかったんですね。その
後、大学に入学してすぐ、第二外国語として中国語を学びましたが、台湾語は手付かずでした。

 転機は、大学2年生の時でした。日本人の先輩で台湾語を話せる方がいて、その人に祖父のこと
を話したら、「王先生のお孫さんなの!? なのに台湾語やってないの!? もったいないよ!」と強
く言われて大ショック。悔しかったのなんのって……! その日から猛勉強して、日本で出ている
テキストは全てやりこみ、一年後には一通り話せるようになりました。同時期に、台湾人留学生の
お友達が大勢できたのもタイミングが良かったです。

 また、2004 年から 4 年間、台北駐日経済文化代表処(台湾駐日大使館に相当)代表秘書室に勤
務したことも大きかったですね。私には留学経験がないのですが、このとき同僚の99%は台湾人
だったので、「駅前留学」状態で、台湾語力が飛躍的にアップしたと思います。この代表処勤務時
代に、慶應義塾大学の教室を借りて、小さな台湾語教室を 1 年ほど開いていたのが、『トラベル
台湾語』執筆の直接のきっかけです。最初は、既存のテキストを切り貼りして作っていたのです
が、まどろっこしくなって、「もういいや、自分で作ろう!」と(笑)。

 テキストがある程度書きたまってきたところで、もっと多くの方に台湾語に親しんでもらいたい
と思い、出版することになりました。その際、初心者にもわかりやすいように、自分で考案して
使っていた「発音すべき声調をそのまま示す」矢印声調記号を使いました。おかげで組版まで自分
でやるハメになり、大変苦労しましたが……(笑)。総じて、とても楽しかったです。

── 現在、日本と台湾をつなぐ活動をされていると伺いましたが、どのようなことをされている
   のですか?

 2013年から、「台湾を応援する会」という NPO を立ち上げ、そこで事務局長兼デザイナーを務
めています。台湾本島の形をした「タイワンダー☆」というキャラクターを通じて、台湾をもっと
メジャーにしよう! という活動です。

 タイワンダー☆を台湾系のイベントへ派遣したり、台湾関係のニュースを配信したり、台湾で災
害が起きた時には募金活動をしたり、さまざまな形で台湾を応援しています。また、グッズも全て
台湾製か日本製にこだわっていて、売上の一部は、台湾の母語教育や児童福祉活動などへ寄付する
予定です。

 おかげさまで、活動4年目の今、4万5千人を超えるFacebookファンがついてくださっていて、そ
の 8 割以上が台湾の方です。タイワンダー☆は、2015 年から「ゆるキャラ®グランプリ」にも参
加していて、今年は上位3分の1以内に入る大健闘を見せています! これも、ファンの皆様のお
かげです。

 また、「台湾を応援する会」のボランティアスタッフさんは20代から70代と幅広い年齢層にわ
たっており、男女比も半々、色んな職種の方がいます。『高雄プレス』をご覧の皆さんにも、お手
伝いいただけたらとても嬉しいので興味がおありの方、どうぞお気軽にご連絡ください☆

※『高雄プレス』(高雄日本人会発行)11月号掲載分に加筆修正。


【日本李登輝友の会:取扱い本・DVDなど】 内容紹介 ⇒ http://www.ritouki.jp/

*ご案内の詳細は本会ホームページをご覧ください。

● 台湾フルーツビール・台湾ビールお申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/rfdavoadkuze

*台湾ビール(缶)の在庫がほとんど切れかかっています。お申し込みの受付は、卸元に在庫を確
 認してからご連絡しますので、お振り込みは確認後にお願いします。【2016年12月8日】

●美味しい台湾産食品お申し込みフォーム【随時受付】
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/nbd1foecagex

*沖縄県や伊豆諸島を含む一部離島への送料は、1件につき1,000円(税込)を別途ご負担いただ
 きます。【2014年11月14日】

・奇美食品の「パイナップルケーキ(鳳梨酥)」 2,910円+送料600円(共に税込、常温便)
 *同一先へお届けの場合、10箱まで600円

・最高級珍味「台湾産天然カラスミ」 4,160円+送料700円(共に税込、冷蔵便)
 *同一先へお届けの場合、10枚まで700円

●書籍お申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/uzypfmwvv2px

・門田隆将著『汝、ふたつの故国に殉ず』 *new
・北國新聞出版局編『回想の八田與一』 *new
・藤井厳喜著『トランプ革命で復活するアメリカ』*new
・呉密察(國史館館長)監修『台湾史小事典』(第三版) *new
・李登輝・浜田宏一著『日台IoT同盟─第四次産業革命は東アジアで爆発する
・李登輝著『熱誠憂国─日本人に伝えたいこと
・王育徳著『台湾─苦悶するその歴史』(英訳版)
・浅野和生編著『1895-1945 日本統治下の台湾
・片倉佳史著『古写真が語る 台湾 日本統治時代の50年
・王明理著『詩集・故郷のひまわり』
・李登輝著『新・台湾の主張
・李登輝著『李登輝より日本へ 贈る言葉
・宗像隆幸・趙天徳編訳『台湾独立建国運動の指導者 黄昭堂
・石川公弘著『二つの祖国を生きた台湾少年工
・林建良著『中国ガン─台湾人医師の処方箋』
・盧千恵著『フォルモサ便り』(日文・漢文併載)
・黄文雄著『哲人政治家 李登輝の原点
・李筱峰著・蕭錦文訳『二二八事件の真相』

●台湾・友愛グループ『友愛』お申し込みフォーム *第14号が入荷!
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/hevw09gfk1vr

●映画DVDお申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/0uhrwefal5za

・『KANO 1931海の向こうの甲子園
・『台湾アイデンティティー
・『台湾アイデンティティー』+『台湾人生』ツインパック
・『セデック・バレ』(豪華版)
・『セデック・バレ』(通常版)
・『海角七号 君想う、国境の南
・『台湾人生
・『跳舞時代』
・『父の初七日』

●講演会DVDお申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/fmj997u85wa3

・片倉佳史先生講演録「今こそ考えたい、日本と台湾の絆」(2013年12月23日)
・渡部昇一先生講演録「集団的自衛権の確立と台湾」(2013年3月24日)
・野口健先生講演録「台湾からの再出発」(2010年12月23日)
・許世楷駐日代表ご夫妻送別会(2008年6月1日)
・2007年 李登輝前総統来日特集「奥の細道」探訪の旅(2007年5月30日〜6月10日)
・2004年 李登輝前総統来日特集(2004年12月27日〜2005年1月2日)
・許世楷先生講演録「台湾の現状と日台関係の展望」(2005年4月3日)
・盧千恵先生講演録「私と世界人権宣言─深い日本との関わり」(2004年12月23日)
・許世楷新駐日代表歓迎会(2004年7月18日)
・平成15年 日台共栄の夕べ(2003年11月30日)
・中嶋嶺雄先生講演録「台湾の将来と日本」(2003年6月1日)
・日本李登輝友の会設立総会(2002年12月15日)


◆日本李登輝友の会「入会のご案内」

・入会案内:http://www.ritouki.jp/index.php/guidance/
・入会申し込みフォーム:https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/4pew5sg3br46


◆メールマガジン日台共栄

日本の「生命線」台湾との交流活動や他では知りえない台湾情報を、日本李登輝友の会の活動情報
とともに配信する、日本李登輝友の会の公式メルマガ。

●発 行:
日本李登輝友の会(渡辺利夫会長)
〒113-0033 東京都文京区本郷2-36-9 西ビル2A
TEL:03-3868-2111 FAX:03-3868-2101
E-mail:info@ritouki.jp
ホームページ:http://www.ritouki.jp/
Facebook:http://goo.gl/qQUX1

●事務局:
午前10時〜午後6時(土・日・祝日は休み)

●振込先:

銀行口座
みずほ銀行 本郷支店 普通 2750564
日本李登輝友の会 事務局長 柚原正敬
(ニホンリトウキトモノカイ ジムキョクチョウ ユハラマサタカ)

郵便振替口座
加入者名:日本李登輝友の会(ニホンリトウキトモノカイ)
口座番号:0110−4−609117

郵便貯金口座
記号−番号:10180−95214171
加入者名:日本李登輝友の会(ニホンリトウキトモノカイ)

ゆうちょ銀行
加入者名:日本李登輝友の会 (ニホンリトウキトモノカイ)
店名:〇一八 店番:018 普通預金:9521417
*他の銀行やインターネットからのお振り込みもできます。