1月15日に行われた李登輝、陳水扁の両元総統による会見は少なくとも12年ぶりで、台湾メディアは長らく没交渉だった両者の和解だと報じている。週刊誌を発行する『鏡週刊』は次のように報じている(抄訳:本会台北事務所)。
「12年ぶりに陳水扁総統と対面 李登輝総統の第一声は」
両者の対面はヤフー台湾のトップニュースでも報じられた
李登輝総統が数えで96歳の誕生日を迎えた本日(1月15日)午後3時、治療のため仮釈放中の陳水扁氏は、息子の陳致中氏や看護婦とともに翠山荘に李登輝総統を訪問した。両者の対面は12年以上ぶりとも言われている。
また、李総統が陳氏を迎えた際の第一声は「陳総統、久しぶり!」で、陳氏も李総統を「総統!」と呼びかけたという。双方は互いに著書や写真集を贈り合ったが、陳氏が贈った写真週には直筆で「李登輝総統のご長寿とご健康をお祈りします」「台湾民主の父へ」などと記されていた。
李総統が陳氏の健康について尋ねると、陳氏は脳血管障害の影響で右手の震えが止まらないと話したが、李総統も2015年末に軽い脳梗塞をやったために同じく右手がうまく動かないと答えたという。李総統は陳氏に身体を労り、ストレスを抱え込まないようにと話した。また、李登輝総統が推進する台湾和牛種「源興牛」は、現在花蓮の牧場で飼育が進められているが、そのことに話が及ぶと李総統は「一緒に見に行こう」と誘ったという。
李総統の側近は常日頃から李総統を「総統」と呼んでいるが、「総統」との呼びかけに、陳氏が「なんですか?」と答え、笑いに包まれるなど、会談は終始和やかな雰囲気で進められた。
会談は1時間弱で終わり、午後3時50分過ぎ、李総統は陳氏を玄関まで見送った。2人は握手を交わし、川を挟んだ対岸に陣取るメディアに向けて手を振った。李登輝総統事務所の王燕軍主任は、この会談は双方の共通の友人が取り持ったものだと話した。
会談終了後、李登輝総統のFacebookでは、陳氏との会談について次のように掲載された。
「今日は陳水扁元総統がわざわざ高雄から訪ねてきてくれた。また、写真集なども届けてくれ、大変感謝している。アジア太平洋地域の情勢が書き換わり、両岸関係も不安定な状況であるものの、台湾はあらゆる力を団結し、あきらめることなく、党派にこだわらず、国民が力を合わせて国のために尽くすことで、台湾を偉大なる国家にしようではないか。」
さらに旧約聖書「箴言」第19章11節にある「悟りは人に怒りを忍ばせる、あやまちをゆるすのは人の誉である」を引用したが、これは今回の対面が和解のためのものだということを示唆しているようだ。李総統は陳氏に対してもこのくだりを直接読んで聞かせたそうで、李総統自身も陳氏との和解によって台湾の政界が団結することを期待していることの表れだろう。
李登輝総統と陳氏は、陳氏の総統在任初期は親子のように形容されることもあった。特に、2004年に陳氏が再選を目指した際には、李総統自ら「牽手護台湾(人間の鎖)」に参加し陳氏の再選を後押しした。しかし、2期目に入ると、両者の関係は悪化し始め、陳氏や周辺の汚職案が取り沙汰され始めると、李総統は陳氏を批判し、袂を分かつこととなった。