識別圏」を設定したことに対し、日米をはじめ韓国、台湾、フィリピン、ベトナムなど関
係各国から抗議や反発、懸念の声が即座に上がった。オーストラリアや欧州連合(EU)
も「不安定化を招く」などと中国を批判している。
その中でも、アメリカがまず26日にB52戦略爆撃機2機を尖閣諸島上空に飛行させた。も
ちろん中国へは無通告だ。これに対し、中国は緊急発進(スクランブル)を行わなかっ
た。アメリカはよほど腹に据えかねたのだろう。中国はアメリカの逆鱗に触れたのだ。28
日には日本の自衛隊機と韓国軍機も事前通告なしにこの空域を飛行した。これに対して中
国が抗議した形跡はない。
台湾の国防部は24日、中国大陸が設定した東シナ海防空識別圏について「(台湾の)現
状を維持し、いかなる情勢の変化も受けることはない」とコメントし、外交部も25日、
「日米とは連絡が取れており、区域の安定を共同で維持したい」との考えを示した。
29日には、立法院(国会)において与野党が中国への「厳正な抗議」を政府に求める共
同声明を決議したことを受け、行政院(内閣)は同日午後、防空識別圏が台湾海峡両岸の
前向きな関係の発展に寄与することはないとする政府声明を中国に伝えると発表した。
中国が事前協議もなく防空識別圏を設定したことで、日米台が緊密に連絡を取り合うこ
ととなった。これは中国が想定していたことと逆ではないのか。習近平国家主席は致命的
失敗を犯したのかもしれない。日本を恫喝しようと防空識別圏を設定したが、逆に日米台
の関係を強化させ、各国からの批判を招いてしまったのだ。読売新聞の11月30日付けの社
説が指摘するように「中国の外交的孤立は、今や決定的になりつつある」状況だ。
李登輝元総統も日米台のこの動きを歓迎し、昨日開かれた台湾団結聯盟(黄昆輝主席)
の募金パーティーで「日本とアメリカは同設定に伴う要求を受け入れておらず、台湾もそ
の要求に従う必要はない」と表明、台湾の針路を示した。中央通信社が伝えている。
ただ、アメリカのオバマ政権は29日になって「航空各社に対し飛行計画の事前提出など
中国側の要求に従うよう促した」という。台湾も中国への民間機の飛行計画提出は続ける
という。
日本は、中国の程永華駐日大使が「民間機の飛行の自由を妨げない」と表明したことで
民間機飛行の安全が確保されると判断、計画提出中止を各社に要請したことで11月26日、
全日空や日航など国内航空各社は中国当局への飛行計画提出の取り止めを決めている。現
在もその決定に変わりはない。
決して日本が強硬策を取っているわけではない。日本は中国から直接「民間機の飛行の
自由を妨げない」と言質を取っているのだから、飛行計画を提出する理由はない。当然の
措置だ。
ここにきて日米台の足並みが乱れているように見えるが、問題は、政策のブレが目立つ
オバマ政権の対応であり、台湾も立法院が決議した共同声明では中国への「厳正な抗議」
とともに飛行計画提出の中止を求めていたにもかかわらず、政府声明では抗議の言葉を使
わなかった馬英九政権の腰の引けた対応だ。
李元総統が安倍政権による「当然の措置」を支持し、弱腰のオバマ政権や馬英九政権に
喝を入れた。
李登輝氏、「日米に見習え」 中国大陸への飛行計画提出で
【中央通信社:2013年11月30日】
http://japan.cna.com.tw/news/apol/201311300009.aspx
(台北 30日 中央社)李登輝元総統は29日、同氏をその精神的指導者とする野党・台湾
団結連盟の募金活動に出席した際、中国大陸が釣魚台列島(日本名:尖閣諸島)を含む東
シナ海上空の広い範囲に防空識別圏を設定したことについて「この設定は我々には関係な
い」との見解を示した。
李元総統は、防空識別圏の設定は国際的な問題で事前に話し合う必要があるもので、
「日本とアメリカは同設定に伴う要求を受け入れておらず、台湾もその要求に従う必要は
ない」とし、「一国の指導者ならそう考えるべきだ」と述べた。
大陸は防空圏を通過する航空機についてのフライトプラン提出を求めており、これに従
わない場合、武力による緊急措置を取るとしている。
台湾はこの問題に対して国際民間航空機関の規定に則って内外航空会社の要請などに基
づき、飛行計画の伝達を代行する立場を表明した。日本では自国の航空各社にフライトプ
ランの提出要求に応じないよう求めている。米国の場合は飛行計画を提出する方針。