荘「マー・ア・ラゴ」で行われる。2月に電話会談はしているものの、直接会っての会談は初のこ
とで、世界の注目を集めている。
報道によれば主要テーマは、1)北朝鮮の核・ミサイル開発問題、2)韓国の在韓米軍への高高度
防衛ミサイル(THAAD:サード)配備問題、3)米国の対中貿易赤字問題、4)人民元の人為的
押下げ問題、5)中国軍の南シナ海への侵出問題、6)「一つの中国」と台湾などと伝えられてい
る。問題山積、対立点ばかりが並べ立てられている。
台湾はトランプ氏に交渉の材料に使われないか、首脳会談を注意深く見守る意向とも伝えられて
いて、今後の米中関係に台湾がどのように位置づけられるのかもポイントの一つだ。台湾関係者に
とっても目の離せない会談となる。
この会談について、産経新聞の東京特派員、湯浅博記者による「湯浅博の世界読解」が習近平の
選択する交渉姿勢について、日本の安倍総理とドイツのメルケル首相を比較し、日本型の交渉姿勢
を選択するだろうと予測している。
それにしても、トランプ外交はかなりしたたかだ。事前準備は徹底している。湯浅記者も「中国
を最大の標的とする貿易赤字削減を目指す大統領令に署名した。なにより、北朝鮮の核・ミサイル
開発阻止に中国が手をこまねけば『米国単独で行動する』とまで警告した」と指摘している。
また、トランプ大統領は本日早朝(日本時間)、北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けて安倍総理と
35分の電話会談を行い、北朝鮮問題への対応を強化してゆくことで合意している。トランプ大統領
は、中国の出方に注目する日本とすり合わせをした上で習近平との首脳会談に臨む。もちろん、台
湾にも習近平会談へ臨む姿勢が伝えられている可能性は高い。
さらに米国は、4月11日にティラーソン国務長官をモスクワに派遣し、シリアや朝鮮半島、ウク
ライナの情勢について協議するという。
米中首脳会談、習近平氏は「成功した日本」と「失敗したドイツ」のどちらの道をたどるのか
【産経新聞:2017年4月5日「湯浅博の世界読解」】
米中首脳会談を前に、中国の習近平政権はトランプ外交の行動パターンを分析し、首脳会談のノ
ウハウを慎重に吟味したはずだ。
目の前には、主要国の対米首脳外交で際立つ前例が二つある。「感謝を勝ち取った日本」と、そ
の逆に「請求書を突きつけられたドイツ」であった。
明暗を分けた日本型とドイツ型の外交をみながら、難問山積の中国は悪くても「つつがなく終わ
る」という真ん中を狙うだろう。
安倍晋三首相は来日したマティス国防長官から在日米軍基地の思いやり予算を「世界の手本」と
いわせ、トランプ大統領とはフロリダでゴルフに興じた。現地で北朝鮮のミサイル発射実験の報に
遭遇し、首相がすかさず記者会見して、大統領から「日本を100パーセント支持する」との言葉を
引き出している。
対照的なのはドイツのメルケル首相で、会談も仕事優先のホワイトハウスを選択した。英紙によ
ると、北大西洋条約機構(NATO)に対する貢献不足が不満なトランプ大統領は、メルケル首相
に3000億ドルの“請求書”を手渡した。
この席で、メルケル首相が20124年までに国内総生産(GDP)比2%の国防費を支出すると約束
をした。それにもかかわらず、メルケル首相が帰国時に飛行機に乗り込んだ瞬間に、大統領から
「ドイツはNATOに巨額の借金がある」とツイートで追い打ちをかけられた。
習国家主席もここは安倍首相をまねて日本型を狙うしかなかったのだろう。
いまの中国経済は巨大バブルを抱え、資金の海外流出が止まらず、今秋の共産党大会を乗り切る
ことが最大の課題だ。習主席は見た目にも堂々と振る舞い、国内向けに弱みを見せることはできな
い。
破天荒なトランプ大統領から、「米国の労働者をレイプする抑圧的な政権」などと非難されては
かなわない。仮にもトランプ政権による45%の輸入関税など対中経済制裁が実行されると、「経済
のハードランディングは避けられない」と、エコノミストから宣告があった。
安倍首相の訪米を「朝貢外交」と皮肉っていた当の中国が、日本の成功例にあやかり、トランプ
氏の別荘を会談場所に所望した。だが、米中間には貿易や為替問題はじめ、北朝鮮の核開発阻止、
南シナ海の中国による人工島の造成など対立点ばかりだ。
しかも、トランプ大統領は短期成果主義の「取引の美学」という変則外交を好む。さっそく米中
首脳会談に先駆けて、思い切り交渉のハードルを引き上げていた。
つい先頃、米捜査当局は中国情報機関から資金提供を受け、外交機密を漏らしていた国務省職員
を逮捕した。台湾に対しては、最新鋭兵器など武器売却の検討に入ったという。さらに、中国を最
大の標的とする貿易赤字削減を目指す大統領令に署名した。なにより、北朝鮮の核・ミサイル開発
阻止に中国が手をこまねけば「米国単独で行動する」とまで警告した。
習主席は南シナ海を「核心的利益」と譲らず、北に対する圧力ではどこまで譲歩するか。訪米に
あたっては、いつも通りインフラ投資や米国債の購入などの”手土産”で米政権の気を引くことだ
ろう。これでトランプ政権が「取引」の成立とするなら、とてもとても「美学」とはいえない。
(東京特派員)