本会が今年度の政策提言「新たな対中戦略の策定を急げ」を発表!

日本李登輝友の会では、会員の中の専門家で構成する「日米台の安全保障等に関する研究会」を
毎月開催している。この研究会では、軍事対決には至らないが、放置すれば自国の主権のだけでな
く、アジア太平洋地域の平和と安定にとって深刻な危機をもたらす中国の巧妙な「サラミ・スライ
ス戦術」に、的確に対処するための戦略の策定と断固たる対応を採ることが喫緊の課題であるとの
結論に達した。

 本政策提言は、その研究成果をまとめたものであり、2月8日の研究会で採択されたものである。
その後、理事会及び総会の承認を得て確定された。

 すでにこの政策提言は、安倍晋三内閣総理大臣をはじめ衆・参両院議長、外務大臣、防衛大臣な
どの関係大臣に提出し、主だった国会議員に送達するとともに、台湾の李登輝元総統や台湾安保協
会などにもお送りしている。ここにその全文をご紹介したい。

 ちなみに、本会はこれまで「集団的自衛権に関する現行憲法解釈を修正せよ」(2012年)、「台
湾との自由貿易協定(FTA)を早期に締結せよ」(2012年)、「我が国の外交・安全保障政策推進のた
め『日台関係基本法』を早急に制定せよ」(2013年)を発表している。


                               平成27年(2015年)3月22日

                    会 長
                   小田村四郎

                    副会長
           加瀬英明 川村純彦 黄文雄 田久保忠衛 中西輝政

日本李登輝友の会「2015政策提言」
新たな対中戦略の策定を急げ 「サラミ・スライス戦術」で勢力圏の拡大を図る中国

 中国は現在、習近平国家主席の下、「中華民族の偉大な復興」の夢を実現するため「海洋強国」
を建設し、米国と太平洋を分割統治することを狙って海洋進出を図っている。しかし、東アジアの
覇権獲得を目指す中国にとって最大の障害は米国の軍事プレゼンスである。

 中国は、80年代半ばに近海積極防衛戦略を策定し、2010年までに日本本土‐南西諸島‐台湾‐
フィリッピン‐ベトナムを結ぶ「第1列島線」の内側海域で敵の行動を拒否し得る能力を、さら
に、2020年までに日本本土‐小笠原諸島‐サイパン‐グアム‐パプア・ニューギニアを結ぶ「第2
列島線」の内側海域で敵の接近を阻止し得る能力を獲得すべく海軍建設計画を推進中である。

 中国は、有事に侵攻して来る強力な米海軍に対処するため、対艦弾道ミサイルや潜水艦を中核と
する接近阻止/領域拒否(A2/AD)能力の獲得を図るとともに、平時においては、自国勢力圏の拡大
によって米国の軍事プレゼンスを減少させることを狙っており、南シナ海及び東シナ海において、
急増した軍事力を背景に、他の沿岸諸国が領有権を主張する島嶼を巧妙な方法で奪取し、勢力圏を
拡大しつつある。

 中国は、他国の領土を奪うため、まず国際規約とは相容れない一方的な管轄権主張を掲げつつ、
相手国の隙を狙って海警局の公船や海上民兵が乗った漁船群を次々に紛争海域に投入し、実効支配
の既成事実を少しずつ積み重ねる方法で、既存の安全保障秩序を覆し、現状を変革することを狙っ
ている。

 その実例は、南シナ海での国際法を無視した管轄海域の拡大や奪った岩礁での基地建設、東シナ
海でのわが国領海への常続的な侵入に見ることができる。

 最近、南シナ海では実効支配中の6つの岩礁のうち5つを埋め立て、「人工島」を造成中であり、
中でも最も西側にあるフィアリー・クロス(永暑)礁は、埋立ての結果、面積約1平方kmの島と
なり、3000m級の滑走路の建設も始まった。

 同礁に航空基地が完成すれば、マラッカ海峡を含む南シナ海全域が中国軍機の行動圏に入り、中
国が南シナ海全域の航空優勢を獲得することとなり、南シナ海が事実上、中国の内海となる恐れが
ある。

 東シナ海では、第1列島線を突破して太平洋へ展開することが中国にとって至上命題であり、そ
のためには我が南西諸島をコントロールすることが目前の戦略目標である。中国が南西諸島攻略の
絶好の足掛かりとして狙ったのが尖閣諸島であり、米国との軍事対決や国際社会の制裁を招くよう
な本格的紛争に陥る事態を慎重に避けながら、実効支配の既成事実化を図っている。

 そのため海軍力の使用は控えつつも、準海軍兵力(海上民兵)と位置付けられる漁船群や他国の
法規制を受けない政府公船を尖兵として次々投入している。

 2014年秋には第1列島線を越えて、200隻以上の中国漁船群が小笠原諸島周辺海域に押し寄せ、太
平洋への進出を目指す中国の作戦が始まったことを示した。今回の動きは、1974年4月、中国が武
装漁船を含む約200隻の漁船群を尖閣諸島に送り、初めての示威行動を行った事例と酷似してお
り、その目的は、単なるサンゴの密漁などではなく、第2列島線上の小笠原諸島海域におけるわが
国の対応や、海上警備能力を見極めるための動きであった可能性が高い。

 このように中国は、軍事対決には至らないが、阻止することが困難な侵犯行為を積み重ねること
によって、時間をかけながらも現状の変革を目指しており、一連の中国の行動に対して、「サラ
ミ・スライス戦術」という呼称が国際的に定着している。

 残念ながらわが国には、「サラミ・スライス戦術」に有効に対処するための総合的な国家戦略が
存在しないため、対処は常に受け身に回っており、個々の事案に対し、その都度場当たり的な対応
をせざるを得ない状態である。

 米国も2012年にアジアへの回帰(リバランス)を宣言したものの、差し迫った他の地域での事態
対処に追われ、中国の「サラミ・スライス戦術」がもたらす深刻な脅威に対処するための具体的な
戦略はまだ策定していない。

 その上、米国は、同盟国や友好国が抱える中国との領有権問題について、中立の立場を保ってお
り、たとえ同盟国と中国の間で領土紛争が発生しても、米国が同盟国のために自動的に介入するこ
とは期待できない状況である。

 最も懸念されるのは、中国が「サラミ・スライス戦術」によって少しずつ現状を変革して行くこ
とにより、米国が介入できない状況が続き、その結果、米国のコミットメントに対するアジア太平
洋地域諸国の不信感が高まって、米国が地域にプレゼンスを維持することが困難となる事態が生じ
ることである。

 米国のこれまでの対中関与政策は破綻したことが明らかとなった以上、今後、対中戦略の抜本的
な見直しは不可欠であり、対中戦略の中軸を担う日米同盟においても戦略の再調整は避けて通れな
いであろう。

 この中国による新しい脅威に有効に対処するには、まず中国が実施する「サラミ・スライス戦
術」についての正確に認識することが前提である。

 その上で中国に対して、わが国が断固として主権を守り抜き、かつ既存の秩序を打破して地域の
平和と安定を乱す試みは絶対に容認しないという確固たる決意を、所要の防衛力整備や法制整備等
の実際の行動によって認識させることが重要である。

 その第1歩は、防衛力を目に見える形で増強することであり、そのためには、防衛費を欧州主要
国と同程度のGDP比(2〜3%)に増額すると同時に、政治および法制上の制約を是正して、わが
国の防衛能力を最大限に発揮するための体制を整えなければならない。

 また、米国との安全保障体制を一層強化し、日米両国の総合戦力が常に相手を凌駕する状態を維
持することも忘れてはならない。

 安全保障体制の整備に際しては、国家安全保障会議を拡充して、情勢の判断、戦略の策定及び戦
略に基づく計画の実施に必要な対外調整に当たらせるため、首相直属の「国家戦略本部」を創設す
る必要があろう。

 それと同時に、情報に関する国家戦略を策定するため、内閣情報調査室を核とした組織を拡充し
て、「国家情報本部」を創設することも必要であろう。

 さらに、中国が仕掛ける情報戦に的確に対処し、国際法を無視した一方的な領有権主張や強引な
行動に対する反駁や非難のメッセージを、国際社会に向かって積極的に発信するための内閣直属の
情報発信機関も創設する必要もある。

 これらの施策に加えて、安倍首相が主唱する積極的平和外交を推進するために、自由と民主主
義、法の支配、人権等の価値観を共有するASEAN諸国や豪州、インドなどの諸国との安全保障協力
を更に強化すべきことは言うまでもない。

 ここで忘れてならないのは、中国の強引な海洋進出を牽制する上で、東シナ海と南シナ海にまた
がり、戦略的に極めて重要な位置を占める台湾との緊密な安全保障協力を推進する必要性である。
そのためにも「日台関係基本法」の制定は緊急、かつ不可欠の要件である。

 以上を踏まえて、中国が仕掛ける巧妙な「サラミ・スライス戦術」を抑止し、有効に対処するた
めには、下記の事項を基軸とする政策を推進することが急務であると考える。

                    記

1)防衛力の強化

・ 首相直属の「国家戦略本部」及び「国家情報本部」の創設
・ 防衛関係費の顕著な増額による自衛隊及び海上保安庁の増強
・ 総合防空ミサイル防衛(IAMD)、対艦・対潜能力、島嶼防衛能力、対テロ戦能力の強化及び敵
  基地制圧能力の構築
・ 中国が実施するサイバー戦及び「三戦(世論戦、法律戦、心理戦)」に対処するための攻防
兼備した戦略の策定及び能力の強化
・ 上記関連で、情報戦に対処し、国際法を無視した一方的な領有権の主張や強引な行動に対する
反駁と非難のメッセージを国際社会に向けて積極的に発信するための内閣直属の情報発信機関
の創設
・ 都市、中枢基地、エネルギー・生活関連施設等重要インフラの抗堪性の強化
・ 信頼できる拡大核抑止力の確保のための必要な措置

2)法制面の整備

・ 自衛権や国軍の保持を含む憲法第9条の改正
・ 集団的自衛権の行使容認を具体化するための安全保障法制の早期整備
・「専守防衛」及び「非核3原則」の見直し
・ グレーゾーン事態に有効に対処するための「領域警備法」の制定
・ 自衛隊に諸外国と同様の国際法規・慣例に基づく軍隊としての権限の付与
・ 自衛隊の権限に関する法律を「ネガティブ・リスト」方式とするための改正
・ 武器使用等権限の拡大等、海上保安庁、警察の権限の強化
・「日台関係基本法」の制定

3)日米同盟の再強化

・ 対「接近阻止/領域拒否」戦略、対中防衛戦略等の米国とのすり合わせ、調整の実施
・ 自衛隊と米軍の間の協力関係に限らず、海上保安庁と米国沿岸警備隊との協力関係の一層の緊
密化による、中国の能力を凌駕する日米両国の総合防衛警備能力の整備・維持
・ 中国による南シナ海の内海化阻止のための日米両国による南シナ海の合同哨戒

4)諸外国との安全保障協力の推進

・ 豪州、インド、フィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシア、ブルネイとの情報交換及
び所要の経済、技術、教育訓練等の支援の推進
・ 戦略的に極めて重要な場所に位置する台湾との安全保障協力を推進するための「日米台戦略対
話フォーラム」の創設
・ 東シナ海及び南シナ海における多国籍海軍共同演習の積極的実施
・ アジア太平洋地域における日米同盟を基軸とした有志連合による常設艦隊の創設と集団航行の
実施


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・2007年 李登輝前総統来日特集「奥の細道」探訪の旅(2007年5月30日〜6月10日)
・2004年 李登輝前総統来日特集(2004年12月27日〜2005年1月2日)
・許世楷先生講演録「台湾の現状と日台関係の展望」(2005年4月3日)
・盧千恵先生講演録「私と世界人権宣言─深い日本との関わり」(2004年12月23日)
・許世楷新駐日代表歓迎会(2004年7月18日)
・平成15年 日台共栄の夕べ(2003年11月30日)
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・日本李登輝友の会設立総会(2002年12月15日)


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