岸田文雄・外相は「科学的根拠に基づかない一方的な措置」と批判、「輸入規制の撤廃緩和を強く
求めていく」と表明している。
交流協会台北事務所も「表示偽装問題と食品安全(輸入規制強化問題)は別々の問題」としたう
えで、台湾当局に提出済みの資料の一部を公表した。
次世代の党も昨日、松沢成文・幹事長、中野正志・国対委員長、和田政宗・政調会長が台北駐日
経済文化代表処を訪問し、沈斯淳駐日代表に対して輸入規制強化に対する申し入れを行った。
ただし台湾側は14日、これまでも必要だった輸出関連書類の記載を「証明」として扱うことを決
めたため、朝日新聞は「影響は限定的になりそうだ」「規制強化後も大きな混乱はなさそう」と報
じている。
一方、産経新聞は「通関に必要な書類を日本との事前協議抜きに一方的に発表し、手続きをめぐ
る情報が交錯」と伝え、台北市日本工商会の「船便が到着する来週以降になれば、混乱はさらに大
きくなるのではないか」という懸念の声を紹介している。
記事にはかなりニュアンスの違いがあるが、混乱を拡大させた原因は表示偽装問題の解決が先だ
として食品安全規制問題を後回しにした馬英九政権にあることは明白だ。
王金平・立法院長が規制撤廃の方向で動いていたため、王院長に花を持たせて総統選に出馬され
ては困る馬英九総統の思惑が働いたとも見られる。16日が中国国民党では総統選出馬候補者の予備
選挙の書類届け出の締切日だった。馬総統としてはなんとしても規制を実施し、王院長の出馬を止
めたかったという裏事情もあったようだ。
案の定、昨日、食品規制を撤回できなかった王院長は総統選への出馬を取り止める声明を発表し
ている。しかし、この馬・王の暗闘により中国国民党はますます国民の支持を得られないことだけ
は十分に予測できる。
台湾、日本食品の規制強化開始 日本政府は提訴も検討
【朝日新聞:2015年5月15日】
台湾は15日、日本産食品の輸入に都道府県別の産地証明を義務づけるなどの規制強化を始めた。
日本政府は撤回を求めている。ただ、台湾はこれまでも必要だった輸出関連書類の記載を「証明」
として扱うことを決めたため、影響は限定的になりそうだ。
規制強化は福島第一原子力発電所の事故に関連したもので、東京産の水産物など一部地域の特定
品目については放射性物質の検査証明を添付するよう義務づけた。15日以降に日本から出荷される
ものが対象で、台湾に空輸される生鮮食品などにまず適用される。
台湾は原発事故後、福島など5県で生産・製造された食品の輸入を全面的に禁止してきた。だ
が、3月にこの5県の産品が、産地が明示されずに台湾に入っていたことが発覚し、規制強化を決め
た。
これに対し、日本側は「表示問題と規制強化は別。科学的根拠がない」と猛反発。台湾は日本政
府や地方自治体の公的な産地証明を求めたが、日本側は証明書の様式などの話し合いに応じていな
かった。
このため、台湾は14日、一次産品については日本からの輸出にもともと必要な検疫証明にある都
道府県記載を「証明」として受け入れると発表。加工食品については、商工会議所の証明書に都道
府県を注記すれば良いとした。日系食品メーカーによるとすでにこうした対応は始まっており、規
制強化後も大きな混乱はなさそうだという。
放射性物質の検査については既定方針通りに行われる。保存の難しい生鮮水産物などは対象地域
からの輸出は難しくなりそうだ。 (台北=鵜飼啓)
■農水相「WTO提訴も含め検討」
台湾が日本産食品の輸入規制強化に踏み切ったことについて、林芳正農林水産相は15日、閣議後
会見で「科学的根拠に基づいて輸入規制の撤廃緩和を強く求めていく」と述べ、引き続き撤回を求
めていく方針を強調した。その上で、進展がみられない場合には「WTOの提訴も含めて検討して
いきたい」と語った。
林氏は台湾の規制強化を「科学的根拠に基づかない一方的な措置」と批判。「具体的な事実関係
の説明がない中で行われたということで極めて遺憾」と不満をあらわにした。
一部の産地と品目が放射性物質の検査対象とされたことについては、「証明書を作成、発行する
には時間と経費がかかる」と懸念を表明。「どういう影響があるのか注視していきたい」と述べ
た。
農林水産省によると、台湾は香港、米国に次ぐ日本産の農林水産物・食品の輸出先で、2014年の
輸出額は約837億円。