日本経済新聞が「台湾、知られざる素顔」記事について釈明の「お知らせ」

 日本経済新聞は、2月28日から4回にわたって連載した中村裕、龍元秀明両記者による記事「台湾、知られざる素顔」は中国寄りの偏向記事であり、与太記事といってよい。一般読者が台湾の「知られざる素顔」を理解できるような公平な記事ではない。

 台湾の国防部や外交部からの反論声明が出されたことで、日本経済新聞は3月7日、「お知らせ」を紙面の片隅に掲載した。

<2月28日付「迫真 台湾、知られざる素顔1」の記事中のコメントは、取材対象者の見解や意見を紹介したものであり、日本経済新聞社としての見解を示したものではありません。混乱を招いたことは遺憾です。公平性に配慮した報道に努めて参ります。>

 4回の連載についてではなく、2月28日に掲載した1回目の「『それでも中国が好きだ』 台湾軍に潜む死角」についてだけで、それも、記事で書いたことは「取材対象者の見解や意見」で、日本経済新聞の見解ではないが、混乱を招いたことを遺憾とする「お知らせ」だった。

 日経は「遺憾です」と述べているだけで、「深く遺憾とする」や「遺憾にたえない」などの表現ではないから、単に残念だと表明しているに過ぎない。お詫びでもない、反省でもない、単なる釈明である。この「お知らせ」を自己保身の言い訳と受け取った読者も多いのではないだろうか。

 ましてや「台湾、知られざる素顔1」では、軍改革を訴えて蔡英文総統が軍を視察したことについて「この1年間で30回近く軍の現場に足を運んだ。寄り添う姿勢をアピールしたが『軍は終始、中国に強硬な蔡の改革案に抵抗し続けた』(専門家)。蔡は軍を掌握できていない」と書き、「専門家」という匿名氏の見解を支持する記事となっているのだ。

 記事には「有事を見据え今後、日台連携で中国対抗の絵を描いても『日本と距離を置くあの台湾軍が、いまさら日本と領土防衛で本当に協力できるのか』(軍事専門家)。多くの課題を残す台湾。緊張は日に日に高まっている」とする箇所もある。「軍事専門家」の見解を全面的に支持する内容となっている。

 記事としての公平性には深い懸念が残る。普通の読解力があれば「取材対象者の見解や意見を紹介した」だけではなく、「日本経済新聞社としての見解を示したもの」と受け取らざるを得ない書き方になっている。

 台湾の外交部は日経の「お知らせ」を受け「報道資料を通じて同紙の声明を評価するとした上で、社会が理性を取り戻すことを期待するとの見解を発表した」(中央通信社)という。

 しかし、日経の連載記事を糾弾してきた「台湾の声」は、この「お知らせ」を中国バイアスがかかった責任逃れと徹底批判し、「偏った記事を掲載したことについて謝罪し、記事を撤回すべき」と主張している。 —————————————————————————————–糾弾 日経新聞の対応は恥知らずだ!【台湾の声:2023年3月7日】

 日本経済新聞は問題のシリーズ「台湾、知られざる素顔」の初日の記事について、本日3月7日の朝刊で下の「お知らせ」を出した。これは自らの記事掲載の責任から逃れようとするものであり、台湾人の親日感情を傷つけ、冒涜する不遜な対応である。

 「お知らせ」では「取材対象者の見解や意見を紹介したものであり、日本経済新聞社としての見解を示したものでは」ない、としているが、それらのコメントを引用して記事を構成し、掲載したのは日本経済新聞社にほかならない。そのうえ、それらの発言を前提として、まさに「蔡は軍を掌握できていない」と論じているではないか。

 この中村裕、龍元秀明の執筆記事中の表現について、ジャーナリストの野島剛氏も「プロの報道人の目からみて非常に問題がある」と指摘し、『東洋経済』記者の劉彦甫氏はこのシリーズについて「30年前から続き、今では実態にそぐわない古い台湾認識を焼き直しただけに過ぎない」「これらの古い台湾イメージをもっている(もたせているともいえる)のが中国であ」ると指摘している。

 一般社会では、「リツイート」(転載)しただけでも名誉棄損が認定されている時代において、日経新聞の記事掲載と、その記事に対する抗議・批判への対応は、伝統的メディア全体を冒涜する行為でもある。日本のメディアの恥である。

 4日目、3月3日の記事「台湾総統への登竜門 蒋介石のひ孫、台北市長に」は、蒋万安台北市長(44)を取り上げた。上海市政府の幹部が、記者団に「(蒋の印象が)とてもいい」と含みあるコメントを残したことをわざわざ紹介し、行政手腕が未知数であるにもかかわらず、「台北で結果を残せば、勢いをそのまま総統選に持ち込める」とする提灯記事を出した。中国の全人代開会(3月5日)を前に、中国当局の台湾工作が順調に進んでいるかのように宣伝したものと見られる。3月3日の翌日には、台湾の南投県で行われた立法委員補欠選挙で民進党が勝利しているが、日経新聞はこちらのニュースは報道していない。

 日経新聞は、「台湾、知られざる素顔」シリーズで偏った記事を掲載したことについて謝罪し、記事を撤回すべきである。もしこの「お知らせ」に見られるように、自身の責任について謝罪する必要がないと考えるのであれば、匿名の人物のコメントについて、そのような事実があることを証明することで正々堂々と批判にこたえるべきである。

「お知らせ 2月28日付「迫真 台湾、知られざる素顔1」の記事中のコメントは、取材対象者の見解や意見を紹介したものであり、日本経済新聞社としての見解を示したものではありません。混乱を招いたことは遺憾です。公平性に配慮した報道に努めて参ります。(2023/03/07日本経済新聞 朝刊)」

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