問題」の根は深い。
台湾の教科書検定で、出版社3社の作成した高校の歴史教科書が、日本統治時代を「日據
(日本占領時代)」、中華人民共和国を「中共」、台湾史・中国史を「本国史」などと記
述、いずれも検定意見がついたという。さらに「委員会はほかにも、『馬英九総統の対外
政策に北京は善意をもって反応』『陳水扁前総統一家の汚職』などの表現を問題視、『台
湾は中華文化を主体とする社会』についても『多元文化を主体とする社会』に改めるよう
求めた(中央通信社)という。
これらの出版社はいずれも「両岸統一を主張する学者が後ろ盾となり昨年新たに設立さ
れた出版社」だと伝えられている。
検定意見に対して出版社側が反発したため、教育部(文部科学省に相当)の教科書審査
委員会は「日據」などの表現は学習指導要領に合わないとして認可申請を却下したという。
ところが、今度は行政院(内閣に相当)が役所などの公文書上の表記を「日治(日本統
治時代)」ではなく「日據」に統一すると発表した。その理由は「中華民国の主権と民族
の尊厳を守るため」(日経新聞)だそうだ。
李登輝氏が総統時代に行った1997年の教育改革では、「日據」か「日治」か、「光復
後」か「戦後」かなど、台湾の歴史認識をめぐる大論争の末、中学校の歴史教科書におい
て「日治」や「戦後」を使うようになった。それが高校教科書にも定着した。だから冒頭
で「蒸し返し」と指摘したのである。
国際条約によって台湾は日本に割譲された。日本の台湾統治には正当性がある。けっし
て「盗み取った」のではない。しかし、その歴史事実を無視して「占領」とするなら、戦
後の中華民国による台湾統治こそ「占領」と記述すべきだろう。
中華民国が台湾を統治する正当性に根拠はあるのか。いわば、米国に帰れなくなったマ
ッカーサーやその後継者が未だに日本を「占領」しているのと変わらないのではないか。
日據?日治? 政府文書は「日據」に統一/台湾
【中央通信社:2013年7月23日】
(台北 23日 中央社)行政院は22日夜、日本が台湾を植民地統治していた時期について、
政府の公文書では今後、一律で「日據(日本占領時代)」との表現を使用すると発表し
た。今月に入り教科書での表記が問題となり、教育部では、植民地統治への評価に関わら
ず多様な表現を併記するとの方針を固めたばかり。
戦後台湾の歴史教科書では、1895年から1945年までの日本による植民地統治について、
中華民国史観の立場から「日據」としてきたが、1997年の教育改革で中学校の歴史教科書
では「日治(日本統治時代)」を使うようになり、その後高校でも「日治」に一本化され
た。
教科書は各出版社が作成し教育部が審査する形で、先ごろ3社が新たな歴史教科書を申請
したが、「日據」などの表現に意見が付き認可されなかった。出版社側が反発し騒動が拡
大、教育部はいずれの使用も認め用語解説も併記することとし収束を図ったが、一部メデ
ィアは論争を続けている。
行政院は、教育部の決定および教科書編集の自由は「尊重する」としながらも、中華民
国の国家主権と民族の尊厳の立場から、政府文書では「日據」に統一すると説明。地方自
治体にも同様の対応を求めるとしている。
ただ、日本が残した建造物などを市の古跡や観光資源としている自治体も多く、地方か
らは「画一的にひとつの言い方にするのは非現実的」との声も上がっている。
(編集:高野華恵)