しかし我が法務省は、これまで台湾出身者が日本人と結婚したり帰化した場合、戸籍の
国籍や出生地を「中国」や「中国台湾省」としてきた。中国とは中華人民共和国のことで
あり、中国台湾省とは中華人民共和国の行政区を指す。即ち、台湾出身者を中国人として
いるのが現在の戸籍制度だ。
戸籍において、台湾出身者の国籍を「中国」としたのは、昭和三十九年六月十九日付で
出された法務省民事局長による「中華民国の国籍の表示を『中国』と記載することについ
て」という通達だった。このことは日本政府も、大江康弘・参議院議員の「質問主意書」
に対する「答弁書」で明確に認めている。
昭和三十九年といえば東海道新幹線が開業し、東京オリンピックが開催された年であり、
日本が中華民国と国交を結んでいた時代だ。しかしその後、日本は中華民国と断交して中
華人民共和国と国交を結ぶなど、日本と台湾・中国の関係は大きく変わっている。
このような中、東京都は平成二十年五月、住民基本台帳の表記について昭和六十二年の
通知が現状に即さず、正確ではないとの判断から、台湾からの転入・台湾への転出の際に
は「台湾」の表記を認めるという通知を出している。また、平成二十一年七月の法改正に
よる外国人登録証明書の在留カード化措置において、台湾出身者の「国籍・地域」表記は
「中国」から「台湾」に改められる。
また、日本政府は観光客に対するノービザや運転免許証について台湾とは相互承認を行
い、中国とは行っていないなど、明確に台湾と中国とを区別している。さらに、台湾では
天皇誕生日祝賀会が開催されたり叙勲を復活させたりするなど、中国とは状況が異なって
いる事例には事欠かない。
ましてや台湾は中国の領土ではなく、これまで一度たりとも中華人民共和国の統治を受
けたことはない。台湾を中国領土とするのは、台湾侵略を正当化するための中国の政治宣
伝以外のなにものでもない。事実、この戸籍表記は日本政府の見解にも合致していない。
このように、五十年前とは様変わりしている事情や現実を踏まえ、戸籍における台湾出
身者の国籍表記を早急に改めるべき状況にもかかわらず、これを放置しておくことは中国
の政治宣伝を受け入れたことにもなる。
従って、法務大臣は戸籍の国籍欄および出生地欄を在留カードにならって「国籍・地域」
とし、台湾出身者は「中国」ではなく「台湾」と表記すべく、早急に民事局長通達を出し
直すよう要求する。
右、決議する。
平成二十三年九月十一日