忘れてはならない二・二八事件  王 明理(台湾独立建国聯盟日本本部委員長)

【台湾の声:2018年2月28日】

 1947年2月28日、終戦から一年半後に起きた二・二八事件は、台湾史上、最も凄惨な虐殺事件であった。自分たちの権利を主張した台湾人に対して、中国人が無差別殺人を行ったものである。わずか一カ月の間に、戦場ではない市民生活の場で3万人の台湾人が惨殺された。将来を担うリーダーとなるべき人、医者や弁護士、教師、青年、学生たちが、みせしめの為に残虐な方法で殺された。

 戦後の台湾の状況を捉える際にもっとも誤解されている解釈として、「台湾(台湾人)が祖国である中国に返還された」という認識がある。ここに立脚すると台湾を正しく理解することはできない。二・二八事件を含む台湾の戦後史を理解するには、「台湾人は終戦後、中国人に植民地統治された」という事実に気付くことが大事である。

 台湾人は、四百年前頃から台湾に入った移民と有史以前から台湾に住む原住民族が共に暮らし、オランダや清朝や日本の統治をうけて出来上がって来た民族であり、中国大陸で行われていた政権の盛衰とは全く別の歴史を歩んできた。

 それにもかかわらず、日本人や外国人だけでなく、台湾人のなかにも、「台湾人は中国人だ」という思い込みから抜け出せない人がいまだに多くいる。このことは、歴史認識を見間違うばかりでなく、台湾の正常化を妨げる一大原因となっているとも言うことができる。

 戦後、連合国の一員として台湾の接収に来た中国(中華民国)は、不当にもそのまま台湾を私物化し、台湾人の権利も財産も奪い、自由と希望を踏みにじった。日本時代に法に基づき社会を運営していく近代精神を知った台湾人にとって、やってきた中国人の傍若無人な統治は耐えられないものであった。失業者があふれ、食糧難で餓死者まで出る事態になった。

 「祖国」の胸に帰れ、という甘い言葉とはうらはらに、徹底的に中国人に蔑視され、母語さえ禁じられた台湾人が、自らの置かれた立場に気付いた時は、時すでに遅く、台湾人を助ける者は誰もいなかった。日本は敗戦国として台湾から引き揚げ、GHQの管理下にあった。中国は国連の常任理事国であり、アメリカの支援を受けていた。

 教育程度の非常に高かった台湾人が、その状況を理解していないわけはなく、だからこそ、中国人当局(中華民国行政長官公署)に抗議することもできず耐えていたのであった。

 しかし、1947年2月27日の偶発的な事件から派生した民衆の抗議活動は全島に広がり、「台湾人にも社会参画する権利をあたえよ」という正式な要求を行政長官に行うまでに至った。陳儀行政長官は紳士的にそれに応じるかのようにふるまいながら、一方で中国大陸の蒋介石に救援を求める電報を打った。蒋介石はすぐに軍隊を台湾に差し向け、3月8日に上陸した中国兵は無差別に台湾人を殺し始めたのだった。無実で無抵抗な台湾人を簡単に殺す中国兵こそが、「台湾人は中国人ではない」と証明したのである。

 二・二八事件の後、台湾人の報復を恐れる中国人は、監視体制を強化し、白色テロと呼ばれる弾圧を40年間も続けた。ナチスやポルポトの場合、彼らが勢力を持っていたのは歴史的に見れば短期間であったが、中国国民党の場合は、戦後ずっと台湾で支配者として生きながらえた。台湾人の置かれた筆舌に尽くしがたい状況の一つがここにある。

 李登輝総統以後、徐々に民主化され、言論の自由を得て、やっと少しずつ、二・二八事件や白色テロ被害のことを語れるようになったとはいえ、事件における死傷者の数や、責任を負うべき人々などについて、まだまだ調査が必要である。だからこそ、“転型正義”が求められている。

 転型正義とは「transitional justice」から来た言葉で、台湾においては、蒋介石・蒋経国時代に行われた違法行為や人権侵害に対し、国家として調査し、責任者の処罰や被害者の名誉回復・補償を行なうという意味である。

 2016年の選挙によって、台湾史上はじめて、総統も国会も台湾派が担うこととなった。台湾人の期待を背に、蔡英文総統はスピードが遅いと批判をあびつつも、少しずつ改革を進めている“転型正義”に対しても幾つかの方策を打ち出した。

 2017年11月20日、立法院は「国家人権博物館組織法」を可決。国家人権博物館は、白色テロ時代、専制政権下に起こした人権関連公文書、歴史資料、関連ファイルの収蔵、研究、展示、及び教育などを中心に活動を行うこととなった。

 続いて、12月5日、「転型正義促進条例」が立法院で可決された。促進委員会の任務は、政治関連資料を開放、強権シンボルの撤去、不義跡地(刑務所、墓地等)の保存、司法の回復、歴史真相の還元、社会全体の和解促進である。

 二・二八事件や白色テロの被害を過去の事として蓋をする前に、まずは真相を明らかにしようとする台湾人の取り組みは、勇気ある歴史認識作業である。

 台湾人の悲劇は教訓として、台湾人だけでなく、他国からの侵略の危機を感じている全ての人々の記憶にとどめ、生かされるべきだ。そうでなければ、数万の被害者の魂は救われないであろう。


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