【産経新聞:平成25(2013)年8月9日「台湾有情」】
来年末に統一地方選がひかえている台湾では、早くも主要都市の市長選候補者が取り沙
汰されるなど、与野党のかけひきが水面下で始まっている。しかし2期目の馬英九政権の支
持率は、民放世論調査によると、6月に中台が医療や電子商取引などの市場を相互に開放す
るサービス貿易協定に調印して以降、最低の13%で横ばい状態だ。
馬総統は7月、与党・中国国民党主席選で再選を果たしたが、軍の不祥事を受けて新たに
起用した文民の国防部長(国防相に相当)が就任6日で辞任するなど内政面で苦戦が続く。
「しかし民主主義こそ台湾の“万里の長城”。与野党の力の拮抗(きっこう)は歓迎す
べきことだ」と、国民党のベテラン氏はいう。
「野党は市場開放によって中国大陸の資本が一気に押し寄せ、中台一体化が進むと危機
感をあおるが、大陸側は常に台湾の政権交代を警戒しており、台湾への投資には非常に慎
重だ」
同氏によると、独立志向が強い野党の手前、「一つの中国」の建前に立つ与党を、将来
の台湾統一をめざす中国側は追い込むことができない。
ゆえにサービス貿易協定の開放項目数も中国が80、台湾が64と「大陸は台湾に大きく利
を譲った」というのだ。果たして強がりとみるべきか? したたかとみるべきか?
(吉村剛史)