尖閣諸島沖の我が領海内で台湾の遊漁船が六月十日、海上保安庁の巡視船と衝突して
沈没。これを受け台湾国内では国民党政権の外省人(在台中国人)勢力が反日を煽った。
まず周錫[王韋]台北県長が反日グループを率いて抗議デモを行い、「釣魚台(尖閣諸
島)に艦隊を派遣せよ」と叫んだ。これに対して海上保安庁は、衝突には自らに落ち度
ありと認めて「遺憾の意」を表明したが、「遺憾が謝罪か」と火に油を注いだ。一方海
巡署の艦艇は反日活動家を乗せた漁船を護衛して尖閣海域を侵犯。こうした情況に慌て
た日本側は二十日、あらためて沈没船の船長(領海侵犯犯)に謝罪の手紙を手交し、事
態を収束させた。謝罪での屈辱的な幕引きは福田首相が馬英九総統に提案したものと台
湾では報じられている。
この一連の騒動で、日本国内では「台湾人も所詮は中国人と同じか」との失望、怒り
の声が高まった。だがそれは危険な誤解だ。そもそも台湾人は尖閣問題には無関心。今
回の反日騒動にも冷淡で、ある世論調査では回答者の過半数が国民党政権の反日行為に
反対だ。
識者の間からも敵の中国と歩調を合わせて味方の日本に対抗するのかとの非難が上が
ったが、事実、その通りなのだ。従来、尖閣問題での外省人の反日行動の背後にはつね
に中国が存在する。中国からすれば、「中国領土」のために共闘させることは統一戦線
工作の重要な一環。さらに日台離間と言う建国以来の国家戦略の上でも極めて重要だ。
だから今回、「中国傾斜・日米離れ」を進める外省人勢力が反日で狂奔したことに、多
くの台湾人は危機感を抱いているのだ。
呂秀蓮前副総統などは尖閣は日本領土だとして騒ぎを戒めている。騒動の拡大で「本
当は日本領土か」と疑い出した国民も多い。つまり台湾人には理性があるのだ。そこで
日本側は今後台湾人を怨むのでなく、誠意を以って「尖閣の真実」を語って行くべきだ。
そして中華思想に基づいた政治的領土観を台湾から追放することで共闘し、中国に逆転
攻勢を仕掛けるのだ。