尖閣・台湾船団領海侵入 東海大・山田吉彦教授に聞きました

昨日、台湾の漁船団と巡視船が尖閣諸島の日本領海を侵犯した。これには3つの背景が考
えられる。

 当初、漁船団は宜蘭県政府に燃料費補助を要請していたものの、県政府は「台日漁業交
渉を待つべきだ」として受け付けなかった。ところが、台湾企業の蔡衍明・旺旺会長が個
人的に500万元(約1350万円)を寄付したことで出航が決まったことがまず挙げられる。

 ちなみに、この蔡衍明氏率いる大手菓子メーカーの旺旺グループは「中国時報」や「中
天TV」を買収、メディアの寡占化や中国寄りの報道に対して台湾メディアからも批判の
声が挙がっている。9月1日の「記者の日」に18年ぶりに行われたというメディア批判デモ
のターゲットとなった。

 2つ目は、与野党などから「弱腰」と非難されることを恐れた総統の馬英九氏がこの出航
を容認したことだ。

 3つ目は、日本政府が台湾との漁業交渉に応じてこなかったことだ。台湾側の動きを察知
してようやく9月24日、「日本政府は、日台漁業協議が早期に再開されることが望ましいと
期待しています」とするプレスリリースを発表した。遅きに失した感は否めないものの、
日本政府の漁業交渉に対する姿勢を明らかにした点で評価できよう。

 海洋問題専門家の山田吉彦・東海大学教授も、東シナ海安定の鍵は台湾にあり、中でも
日台漁業協定の締結がもっとも重要との認識を示している。昨日、FNNニュースに出演
し、今回の背景について解説している。動画でも見られるので下記に紹介したい。


尖閣・台湾船団領海侵入 東海大・山田吉彦教授に聞きました
【FNNニュース:2012年9月25日】
動画:http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00232228.html

 25日、台湾の漁船およそ40隻と台湾当局の巡視船が、日本の領海内に侵入しました。尖
閣諸島をめぐる緊張状態。台湾船団による領海侵入について、領土問題にくわしい東海大
学・山田吉彦教授に話を聞きました。

── 25日午前7時42分から、日本の領海内に台湾当局の巡視船12隻と、漁船およそ40隻が
   侵入していたことが確認された。これだけの数の漁船・巡視船もついてきた意図と
   は?

 今回、台湾側は、常に尖閣諸島周辺海域での漁業を要求してきていました。なかなか、
日本政府が動かない。実は、今まで16回も日台漁業協定というものが開かれてきたんです
が、全く進歩してこなかった。その中で、17回目が、もうすぐ開かれる。これは、中国の
動きに便乗するような形で、台湾側の要求を漁船を使って要求を突きつけてきたというこ
とが言えると思います。

── 中国政府の抗議の意思と、この台湾の漁船団の目的は、ややずれている?

 かなり、別のものだと考えていいと思います。確かに、この台湾漁船団の後ろには、中
国と密接な関係を持っている企業家が介在しております。スポンサーが準備をして、「さ
あ、行ってこい」と。これだけ海が荒れた状況ですので、本来であれば漁船団が出てくる
ことはないんですが、行くということが重要な目的だと。領海侵犯をすることが、やはり1
つの目的です。

── 海上保安庁は、台湾の漁船に対して放水をした。それに対し、台湾当局の巡視船
   も、日本の巡視船に向けて放水しているように見えた。お互いに放水し合ったとみ
   ていい?

 あくまでも日本の巡視船は、漁船に対して放水をした。日本の行為に対して、台湾側も
反応しなければいけないので、わたしが見るかぎり、台湾の巡視船の放水銃は、空に向か
っていた。日本の巡視船までは届かない範囲で、日本の巡視船に対して、自分たちも警備
をしているんだと。「自分たちに任せてくれ、手を出すな」ということが、メッセージと
して放水を使っていると思います。

── 巡視船に向けて放水しようとしたのではなく、自分たちのことは自分たちで警備を
   するから、余計なことはしないでくれというサインを送ったと?

 1つは、巡視船による法執行。ここは台湾の海なんだから、日本は引いていてくれと。自
分たちの管理下で、漁船に対するという意思表示だと思います。

── 領海に侵入してから3時間後には引き揚げているが?

 まず、領海に入るということに成功した。漁船団は成功したと。そこまでが漁船の目的
だった。これで、日本側にメッセージを突きつける。そして日本側は、これから台湾の漁
をどう考えていくのかということを、本当に真剣に考えなければいけない。まずは、漁船
団の目的は、侵入して引き揚げていく。そこまでだったと。上陸までは考えていなかった
ということが、一連の動きからは見てとれます。

 以前から常に、台湾側に漁業を認めてくれと言い続けてきて、それに対する答えがなか
ったことに対して、中国の動きに便乗する形で、台湾も1つ問題を突きつけてきたというこ
とだと思います。

── 今後、こういうことは繰り返される?

 十分、可能性はあると思います。ただ、台湾当局としては、やはりもう少し、次に始ま
ります第17回目の日台漁業交渉。この段階で、お互い、どこまで話し合いが進むのか。平
行して、石垣の八重山漁業協同組合が、民間の漁業交渉を進めています。台湾の漁民と石
垣の漁民が、お互い納得する漁の仕方を決めようじゃないかということも進めております
ので、漁業の交渉の動向次第だと思います。


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