大東亜戦争末期、神奈川県座間にあった高座海軍工廠で戦闘機雷電の製造に当たった台
湾少年工。12─15歳ほどの8400名の少年達は寒さと飢えに耐え、厳しい任務を懸命に全う
した。戦後帰りついた祖国では国民党による圧政の暗黒時代が待っていた。
海軍工廠時代から終戦を経て現在に至るまでの彼らの生涯を追い、少年工の全貌をつぶ
さに記した好著が本書『二つの祖国を生きた台湾少年工』である。
著者の石川公弘氏は尊父が工廠寄宿舎の舎監であった幼少時代、台湾少年工と共に生活
をした人物だ。戒厳令が解かれ台湾の民主化が進み、日台の交流が再び盛んになると、高
座日台交流の会会長として長年に亙って台湾高座会と深い絆を育んできた。李登輝元台湾
総統が推薦の辞で「同じ時代を生き、思いを共有する人物の手で描かれるのは、状況を正
確に伝える上で大切なこと」と述べているように、まさに少年工の生涯を伝えるのに絶好
の人物であり、それ故に読み応えのある本に仕上がっている。
本書では歴史資料を網羅して少年工の概要が分かりやすく説明されている。また、旭日
小綬章を受章した李雪峰氏はじめ6人の少年工を一人一人取り上げることで、一歩掘り下げ
た生身の人間的魅力が伝わってきて読み物としても面白い。
米軍の爆撃により6名の少年工が殉職している。少年工の親代わりだった故早川金次技手
(ぎて)が戦後の焼け野原に建てた戦歿少年工慰霊碑は、今も大和市内の善徳寺にあり、
来日した少年工は必ず参拝するという。
本書を日台の子供たちにこそ、いつか読んでほしいと願う。
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