3月19日に行われた高市早苗総理とトランプ大統領の首脳会談の模様について、米国はいち早くファクトシートで「台湾海峡の平和と安定が地域の安全保障と世界の繁栄にとって不可欠な要素であるとの認識で一致した」と公表し、また「対話を通じて台湾海峡両岸問題を平和的に解決することを支持すると同時に、武力や威圧を含む一方的に現状を変更しようとするいかなる試みにも反対する」とも記した。
この「台湾海峡の平和と安定が地域の安全保障と世界の繁栄にとって不可欠な要素」という文言は日本が発案したもので、2021年3月に行われた茂木敏充・外務大臣、岸信夫・防衛大臣、ブリンケン国務長官、オースティン国防長官による「日米安全保障協議委員会(2+2)」の共同発表において「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調」と表明したことに端を発している。
この文言は、2021年4月に行われた菅義偉総理とバイデン大統領の日米首脳会談の「日米首脳共同声明」で「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」となり、翌2022年5月の岸田文雄総理とバイデン大統領による「日米首脳共同声明」で「国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて強調する」となり、台湾海峡の平和と安定は「国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素」とされたことでほぼ完成形となった。
その後、2025年2月の石破・トランプ首脳会談に引き継がれ、高市・トランプ首脳会談でも引き継がれたという経緯をたどっている。
さらにその淵源をたどれば、安倍晋三総理が2016年8月28日にケニアのアフリカ開発会議において「自由で開かれたインド太平洋」(略称:FOIP Free and Open Indo-Pacific Strategy)構想を発表し、米国のトランプ政権が米国の戦略として採用したことにまでさかのぼる。
つまり、日本は安倍総理が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」の実現を前提に、安倍、菅、岸田、石破という四代にわたる総理が国際会議を通じ、その実現のためには「台湾海峡の平和と安定」が重要であり、その重要性は「国際社会の安全と繁栄に不可欠」と説いて、台湾の重要性をG7サミットや東アジア首脳会議でも訴え続け、米国や英国、オーストラリア、フランスとドイツをはじめとするヨーロッパ各国に賛同の輪を広げていった。
外交とはなんとも気の長い根気のいる仕事かという思いを禁じ得ないが、安倍総理が「自由で開かれたインド太平洋」構想を発表してから奇しくも10年という節目の年に、安倍総理の構想を実現しようとする高市総理が、改めてトランプ大統領との首脳会談で日本発案の構想を盛り込むことに成功した。
すでに日本の国是と言ってよい「自由で開かれたインド太平洋」構想は、「台湾海峡の平和と安定が地域の安全保障と世界の繁栄にとって不可欠な要素」という文言と「対話を通じて台湾海峡両岸問題を平和的に解決することを支持すると同時に、武力や威圧を含む一方的に現状を変更しようとするいかなる試みにも反対する」という文言がセットになっている。
今や、これこそが中国の台湾への武力侵攻を抑止する「世界のキーワード」「合言葉」と言っても過言ではない。
外務省のホームページでは、高市総理は首脳会談の席上「『自由で開かれたインド太平洋(FOIP)』を、日本外交の柱として、引き続き力強く推進し、戦略的に進化させていく決意を改めて示し、両首脳は、FOIPの下で今後も力強く協力を推進していくことを確認」したことを伝えている。
台湾の林佳龍・外交部長は即座に、日米両国の首脳が台湾海峡の平和と安定への揺るぎない支持および、武力や威圧など一方的に現状を変更しようとするいかなる行為にも反対する姿勢を強調したことに心からの歓迎と感謝の意を表したという。
「自由で開かれたインド太平洋」構想を世界に広げた日本に足りないのは、外交の後ろ楯ともなる「砲艦」だ。
高市総理は今年2月の施政方針演説で、安保関連3文書(「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」)を本年中に前倒しで改定すると表明した。
高市総理が目指す防衛力の抜本的な強化がなされるのか、目を離せない。
日米首脳「台湾海峡の平和と安定が不可欠」 成果文書に明記【日本経済新聞:2026年3月20日】 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN19BVW0Z10C26A3000000/
【ワシントン=飛田臨太郎】米ホワイトハウスは19日、日米首脳会談の成果を文書で発表した。
台湾情勢について日米首脳が「台湾海峡の平和と安定が地域の安全保障と世界の繁栄にとって不可欠な要素であるとの認識で一致した」と明記した。
中国を念頭に「武力や威圧を含む一方的な現状変更の試みに反対」とも盛り込んだ。
高市早苗首相とトランプ米大統領が2025年10月に東京で会談した際は米政府から台湾を巡る明確な発信はなかった。
今回の書きぶりは25年2月にトランプ氏と当時の石破茂首相が会談した際にまとめた共同声明をほぼ踏襲したものとなった。
文書ではホルムズ海峡の安全確保策を巡る協議については触れなかった。
具体的な国名に言及せず「(日米)双方は戦略的競争相手や、ならず者国家がもたらす課題に対処するため、第三国において連携する」と記した。
トランプ氏は首脳会談の冒頭で「日中関係はややぎくしゃくしていると聞いており、中国とうまくやっているのか知りたい」と語った。
自身が1カ月半後に訪中することに触れ「習近平(シー・ジンピン)国家主席と会う際に日本を大いにたたえるつもりだ」と述べた。
トランプ氏には11月の中間選挙を見据え、訪中時に経済分野の成果を得て有権者に誇示したい考えがある。
最近は訪中を前に中国の反発を招きかねない言動を避ける傾向にあった。
トランプ氏は29年1月までの自身の在任中は中国が台湾に侵攻することはないと主張する。
中国側から「トランプ氏の在任中は決して何もしない」と伝えられたとしている。
中国が侵攻したときは米軍が台湾を防衛するかどうかについては明言を避けてきた。
歴代の米政権は台湾有事に米軍が関与するかを明確にしない「戦略的曖昧さ」をとっている。
バイデン前大統領は何度か軍事的に関与すると発言して物議を醸した。
トランプ政権は25年12月に台湾に過去最大規模の武器売却を決めた。
総額111億ドル(約1兆7500億円)にのぼる。
同時期にまとめた国家安全保障戦略(NSS)では「台湾海峡の現状の一方的な変更を支持しない」と明確にした。
沖縄などの日本の南西諸島と台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」を防衛ラインと定めた戦略を示した。
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