米上院のトード・ヤング(Todd Young)議員とジェフ・マークレイ(Jeff Merkley)議員が23日、中国共産党による国連への影響力と活動の調査を求める法案を外交委員会に提出した。国連総会は現在、ニューヨークで開催されている。
ヤング議員は自身の公式サイトで、中国共産党による国際組織に対する影響力拡大について警鐘を鳴らしている。「中国は、人権侵害、核拡散、パンデミック、世界経済危機、気候変動など、世界が直面する問題に解決策を生み出そうとせず、それどころか壊している」と書いた。
さらに「中国は、国連では侵略的な態度で、できるだけ多くの権利を得ようとしている。加盟国は、自国および他国の利益を守る姿勢が必要だ」とした。
「香港の自治権や、新疆ウイグル自治区で数百万人の人権を侵害する中国が、国際組織の人権保護の基準に準じるかどうか、強い疑問がある」と付け加えた。
中国は現在、国連への最大寄付国となっている。同議員によると、このほど提出した法案には、国連や他の国際組織における中国の影響力拡大により、人権保護を促進する国際協調が損なわれないようにする狙いがある。
◆国際組織に在籍する中国担当 共産党の命令に従う
米誌「ニュー・アメリカ」は、中国共産党がその資金力や情報工作を駆使した「長い腕(ロングアーム)」で、国連などの国際機関に浸透工作を行っている。同誌によると、国際組織に在籍するすべての中国政府代表者は、共産党の指示に従っている。「これは国際組織の要求に明らかに抵触している」
国際組織に勤務する中国共産党の幹部は中国共産党の代理人としての役割を果たしている。「極めて深刻な事態だ」と報道は述べた。国連では、中国人職員の人数が最も多いという。
国連の多くの関係機関は、共産党政権の代理人が上役を担っている。例えば、2017年7月、国連経済社会事務部(DESA)の事務総長は、中国外交部副部長・劉振民氏が就任した。
世界統治の野心を果たすため、北京外国語大学には「グローバルガバナンス・スクール」が設置されている。
◆一帯一路を推す国連
英字誌「フォーリン・ポリシー」2018年5月の報道によると、国連の高級官僚は、中国の「一帯一路」計画を推しているという。特にDESAはその動きが顕著という。
記事は、一部の国連関係者や外交官は、劉氏の指揮に基づいて「一帯一路」を広めるための道具として使われている。欧州の匿名希望の外交官は同誌に対して「それは誰もが知っていることだ」「DESAは中国企業のようなものだ」と述べた。
国連組織のなかで、もう一つ、中国共産党の動きの代理となる組織は、国際民間航空機構(ICAO)がある。現在、192の加盟するICAOの秘書長は、元中国共産党高官の柳芳氏が務めている。
たとえば、台湾は東アジアの航空交通網のなかでも最も混雑する地域だが、ICAOへの直接連絡が認められておらず、ICAOの発信する情報を直接入手することができない。
2016年以降、これまでのオブザーバー参加枠も拒否されており、ICAOで発言権を持つことができなくなった。多くの米議会議員は、ICAOの行動を批判している。
中国共産党の影響が強い国連組織は他にもある。地球規模の無線周波数と衛星軌道資源の分配と管理を行う、国連国際電気通信連合(ITU)もその一つだ。全世界の電気通信標準を制定し、インターネットの世界的監査と制御を担う。
趙厚麟氏は2014年10月にITUのトップに選ばれ、2018年11月に再選された。北京紙・新京報によると、ITUと中国共産党の連携により、中国はITU参加国の電波インフラ分野で話し合う機会を得て、「一帯一路」の戦略を推し進めることを可能にした。
米国が、華為技術に対するスパイ疑惑を申し立てているなか、趙厚麟氏は米国を「政治的動機がある」と非難した。
もう一つの機関は国連工業開発機関(UNIDO)だ。これは、発展途上国の産業発展を促進するためのもので、170を超える国が加盟している。中国財政部の元副部長(副大臣に相当)の李容氏が事務局長を務めている。
ほかにも、国連教育科学文化機関(UNESCO)副代表の一人が、中国国際問題研究所の元所長など、さまざまな国連組織の上役に、中国国内の高官歴任者が就いている。
(翻訳編集・佐渡道世)