阿川弘之先生の文学上の功績等々については、新聞等をご参照ください。私たち川柳人にとって
忘れられないのは、阿川先生が台湾の良き理解者という一点です。
先生は、『文藝春秋』(2006年11月号)の巻頭コラムに「台湾の川柳」を書かれました。
コラムは、冒頭、
<台湾には、日本語の読み書きが自由に出来て、日本が好きで、日本の伝統文化や生活習慣に強い
親しみを抱いてゐる人たちが大勢ゐた。>で、始まります。
犬養孝教授の万葉集講義の功績、呉建堂氏の『台湾万葉集』、黄霊芝氏の『台湾俳句歳時記』等
に触れた後、
<ところでさて、此処まで実は前置き、これからが本論です>と書いて、その後「台湾の川柳」に
言及してくださいました。
出版されたばかりの『酔牛 李?玉川柳句集』(今川乱魚編、蔡焜燦序文)の紹介を丁寧にして
下さったのです。
カタカナ語昭和もついに遠くなり
世界一イジメ甲斐あるクニ日本
李?玉氏は台湾川柳会の第2代会長を務められた方で、台湾人初めての川柳句集を出された方で
す。台湾の文芸史上、特筆すべき川柳人だと思われます。
ところで、昨年『近くて近い台湾と日本』(江畑哲男・台湾川柳会共編)を出版する際に、この
阿川先生のコラムはぜひ再掲したいと考えました。掲載には著作権者の了解が必要です。ところ
が、当時すでに阿川先生は施設に入っておられたようで、思うように連絡が取れませんでした。困
りました。
そこで、人を介して、阿川先生に「台湾の川柳」掲載許可をいただいたのです。何とかOKが取
れました。間に合いました。阿川先生のエッセイが入ったことによって、この本が引き締まったも
のになったことは言うまでもありません。有難うございました。
謹んで、ご冥福をお祈りいたします。