本誌では、和田有一朗(わだ・ゆういちろう)衆議院議員(日本維新の会)が所属する外務委員会において、3月から台湾に関する質疑を次々と繰り出していることに注目し、インターネット中継のURLや国会の速記録から質疑応答を紹介しています。
4月20日は、中国の地図に台湾が含まれている問題について質疑しました。
これは、国土交通省のホームページに国土政策局が作成した「各国の国土政策の概要」の中の「アジア・大洋州」の「中国」をクリックしますと、概況や国勢概要の下に「中国の省級行政区画」という大きな地図が掲載されています。地図作成については「(一財)日本開発構想研究所において、中華人民共和国民生部編『行政区画簡冊』を元に作成」と説明しています。
和田議員が4月18日に確認したときには、この地図には台湾の地図が描かれて「台湾省」と記載され、台湾が中国の一省となっていました。そこで和田議員は、この地図は「日中共同声明」からしてもおかしいのではないかと思い、外務委員会参加者全員にこの地図を配布して質疑しました。
和田議員は「私たちは独立国であって、主権の存する独立国であって、私たちの意思があるわけですから、向こうの言うことをそのまま、そのとおり、地図ならそれを転載して、これは転載しているんですよ」と言ってすませられる問題ではないと、国交省を追及しています。
実は、この国交省の中国地図問題は民間からも指摘されてきました。先に記したように、和田議員が4月18日午前に国交省のホームページを確認したときはまだ地図を訂正していませんでした。ところが、その日の午後に事前の質疑内容確認で国交省側と打ち合わせ、19日に再び確認したら中国の地図から「台湾省」が削除されていることが判明したのだそうです。
民間からの指摘にはいい加減に対応しながら、国会議員の指摘には間髪をおかずに修正する国交省の姑息さには呆れました。ところが、これは「頭隠して尻隠さず」で、国交省が掲載している中国の国土面積「約960万平方キロメートル」には台湾の国土面積も含まれているのです。これは訂正せずに残っています。
それについて、和田議員は「日本の当時の検定を通った地理の教科書には、中華民国と台湾は分けて書いてあります」と指摘しています。
文部科学省の検定に合格した中学校社会科の地図帳、例えば昭和47年(1972年)版を見てみますと、まだ国交がなかった中華人民共和国の国土面積を「9561(千k平方メートル)」と表記し、外交関係があった中華民国の国土面積は「36(千k平方メートル)」と記載しています。つまり、中華人民共和国と中華民国の国土面積を合わせると「959万7千平方キロメートル」となり、これが「約960万平方キロメートル」の内訳です。
ですから、国交省は同じ行政機関の文部科学省が検定で合格させた数字を引用すれば済む話で、中国の国土面積を「956万平方キロメートル」と表記すればいいのです。和田は「台湾省」を中国の地図から削除しただけの国交省の対応に「果たしてこういう向き合い方でいいんだろうか」と疑問を呈するのももっともです。
しかし、そもそもの問題は、国交省の「各国の国土政策の概要」に台湾を掲載していないことです。そのため和田議員は、質疑冒頭で外務省に対して「とりわけ台湾の辺りを含む地図というのはどのように表記をなさっておられますか」と質疑しています。
そして、国交省が「台湾省」だけ削除したことに対して「この地図から台湾省を消してしまった。この世から台湾が消えてしまったみたいな世界なんですよ」と、台湾が「各国の国土政策の概要」にない点を指摘しています。国交省は外務省を見習って、台湾の国土政策の概要もきちんと入れてもらいたいものです。
和田議員はまた、今回の質疑において、外務省から各省庁が掲載している台湾に関わる地図について「各省庁のホームページ、これは現時点で外務省として網羅的に把握をしているわけではございませんけれども、ただいま申し上げました日本政府の立場を踏まえて、適切に表記されていくようにすべきであると外務省としても考えております」という答弁を引き出しています。
これは画期的なことではないかと思います。今後の外務省におおいに期待したいものです。
下記に、和田議員の台湾に関する質疑応答の該当全文と国交省の「各国の国土政策の概要」、当日のインターネット中継のURLをご紹介します。
◆国土交通省:国土政策局作成「各国の国土政策の概要」 https://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/international/spw/index.html
◆和田有一朗・衆議院議員の外務委員会質疑(2022年4月20日 13時〜13時40分 40分) https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=53934&media_type=
—————————————————————————————–和田有一朗・衆議院議員の外務委員会質疑(2022年4月20日 13時〜13時40分)
○城内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。和田有一朗君。
○和田(有)委員 では、早速質問に入りたいと思います。
まず、政府のいろいろな機関は、国土を表す地図をホームページに載せたり、資料に載せたりしているんですけれども、そのことをまずお聞きしたいと思うんですね。
まず、本家本元の外務省は、各国の地図というものの中で、とりわけ台湾の辺りを含む地図というのはどのように表記をなさっておられますか。
○岩本政府参考人 外務省のホームページにおきましては、台湾に関する一般事情、また日台関係等の基礎データを、ホームページ上の国・地域の中のアジアの項目に掲載して紹介をさせていただいております。
紹介させていただくときに、いわゆる中華人民共和国と台湾とは別の項目になっておりまして、台湾は台湾そのものとして紹介をさせていただいておりまして、地図も別途載せさせていただいているところでございます。
○和田(有)委員 見せていただきましたけれども、国・地域というふうな表現の中で、中華人民共和国は存在し、香港も存在し、そして台湾も存在している。極めて常識的な表現になっております。
では、今日、資料でも皆様にもお配りもしているんですけれども、国土交通省は、各国の情勢というものを表すときの地図はどのように表記をされておられますか。
○黒川政府参考人 お答えいたします。
委員から今御指摘のありました国土交通省国土政策局のホームページ上の地図でございますが、これは、各国の国土政策を紹介する中で、中華人民共和国、中国について、中国側が作成した資料などをまとめる形で掲載していたものであります。
なお、今般、委員からの御指摘もありましたことから、既に修正はさせていただいているところであります。 以上であります。
○和田(有)委員 そうなんです。
私、皆さんにお配りしたのは、おとつい私がチェックをした地図でございまして、昨日の夜、確認のため見ますと、若干修正がなされている。ところが、私、この場でどのように御答弁があるのかなと思ったんですが、これはどう修正されているかといいますと、後で皆さん、会館に戻ってホームページでも開けていただきたいんですが、この地図の台湾省を消しちゃっているんです。単に、この地図から台湾の島、フォルモサ島というんですかね、何というんですかね、正式名称、あれを消しているだけなんですよ。果たしてこういう向き合い方でいいんだろうか。
いや、消していただいたことは、まず一ミリ前進ですから。一メートル、百メートルいってほしいわけですけれども、まあゼロよりは、ゼロから一にいくのは大変なことなので、大きな進歩だと私は思いますけれども、この地図から台湾省を消してしまった。この世から台湾が消えてしまったみたいな世界なんですよ。私、これも若干いかがかなと思います。
さらに、きちっと各国の状況を示すために、中華人民共和国のものを見せるためにそういう地図が必要だというのならば、それはそれで物の捉え方はありますけれども、大きな誤解を、やはりこういうものは、表にぼおんと載っていると、出てくると思うんです、私は。
そこで、外務省の方にちょっとこれはお聞きしたいんですけれども、日本政府の中でいろいろな行政機関がホームページなんかで、アジアの地理であったりそういうものを載せる、載せている、そういうことについて、やはり誤解を生むような、要は、中華人民共和国に対して誤解を生むんじゃなくて、世間一般に対して誤解を生むような地図を載せているかどうかというのはきっちりチェックをして、外務省の立場に立って修正を求める、修正を求めるって変ですね、外務省がほかの省に修正を求めるというのもおかしなことだと思うんですが、政府は、日本国政府は日本国政府で一つなんですから。でも、そういう作業をすべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
○岩本政府参考人 台湾に関する我が国の基本的立場は、一九七二年の日中共同声明第三項にあるとおりでございまして、「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」というものでございます。
したがいまして、台湾の表記の問題を含めて、この立場に基づいて適切に実施していくことが必要と考えております。
その上で申し上げれば、各省庁のホームページ、これは現時点で外務省として網羅的に把握をしているわけではございませんけれども、ただいま申し上げました日本政府の立場を踏まえて、適切に表記されていくようにすべきであると外務省としても考えております。
○和田(有)委員 私たちは、前もお聞きしましたけれども、日中共同声明の中で中華人民共和国が言っていることは理解をしているし、尊重はする、ただ、私たちの国のそれは政策ではないわけですよ。中華人民共和国の政策であって、私たちは私たちの、私たちは独立国であって、主権の存する独立国であって、私たちの意思があるわけですから、向こうの言うことをそのまま、そのとおり、地図ならそれを転載して、これは転載しているんですよ、中国の地図を、さっきの国土交通省は、そういうことであっては私はならないと思います。ですから、もう一度しっかりとそこら辺よく考えていただきたい。
この点に関しては、取りあえず一旦ここで終わりますけれども、ただ、一点言えることは、かつて日本が中華民国と国交を持っていた時代、この台湾の地図であったり国土に関する表記、例えば面積の要件であったりそういうことを書いているもので、日本の当時の検定を通った地理の教科書には、中華民国と台湾は分けて書いてあります、あのときはちゃんと。
ところが、今、一緒にしてしまっているんですよ。国土交通省のこの資料の中にも、この次のページには、中国の面積とかそういうのが出てくるわけです。それが、中華人民共和国の中に台湾省を含めた面積になっているんですよ、今。
でも、昔は、中華人民共和国と我々が国交がなかった時代はちゃんと分けていたんですよ。なぜこんなことになってしまっているんでしょうか。
このことを今日は触れるつもりで言っているんじゃないんですけれども、しかし、やはりどうも向いている先が違うんじゃないかと思います。日本国民を向いて日本の政府が存在しているのではなく、北京を向いている日本政府ではないかというふうに私はやはり思ってしまう。それがやはり今までの私たちの外交的なマイナス要因をつくっているのではないかと思いますので、このときに取りあえず触れておいて、次に行きますね。(後略)
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