顧みれば、高座会の皆様が少年の身で遠く故郷を離れ日本内地に足を踏み入れられたのは、大東
亜戦争の戦況が苛烈となり戦争の帰趨が予断を許さなくなつた頃でした。特に昭和20年に入ると米
軍の本土空襲が本格化し、皆様も直接との犠牲となられることも少くありませんでした。痛恨の極
みであります。
しかし皆様の御努力にも拘らず、戦局は悪化の一途を辿り遂に終戦の日を迎へました。皆様も順
次輸送船で御帰郷になられました。しかも敗戦の結果、日本は台湾の領有権を放棄させられること
になりました。その上、日本は米軍の占領下に置かれ、台湾との交流も自由に行ふことができませ
んでした。
しかし台湾は帰国後の皆様の努力により繁栄を続け、特に李登輝総統時代からは日台交流も緊密
の度を加へて今日に至つてゐることは同慶に堪へません。この間皆様はかつての絆を忘れず、「高
座会」として結束して来られたことは感銘の至りであります。
他方、台湾をめぐる国際情勢は依然として緊迫の度を加へてをります。共産党独裁下での大陸中
国は台湾を一度も領有したことがないにも拘らず、台湾を固有の領土と呼号してその野心を露骨に
してをります。台湾の存在は東洋平和の要であり、国際情勢は中国の野望の実現を防いでをります
が、決して油断はできません。それ故に日台両国の提携は不可欠であり、正規の国交はなくとも両
国民の交流を益々緊密化してゆかなければならないと考へます。
高座会の皆様が昔の絆を忘れず、さらに緊密に絆を固めてゆかれることはまことに貴重であり、
皆様の御健勝と台湾の繁栄を心からお祈り申し上げます。