【産経新聞:2015年1月19日「きょうの人」】
昨年、台湾で空前のヒットを記録。日本では24日から全国公開される野球映画「KANO」の生
みの親は「いろいろな出来事や人物は永遠に歴史に刻まれるべき。この物語は僕が取り上げなくて
はいけないテーマだった」とうなずく。
昭和6年夏、日本の統治下にあった台湾から甲子園の中等学校野球大会に初出場し、準優勝と旋
風を巻き起こした嘉義農林は日本人と漢民族、先住民からなる異色チームだった。「書店でたまた
ま嘉義農林の本を見つけ、ぐいぐいと引き込まれた。とにかく脚本にしようと考えた」
台湾を代表する映画監督は「野球映画は野球の分かる人間が撮るべき」と判断。今回は少年野球
出身でテレビドラマの監督経験のある俳優、馬志翔さんにメガホンを取らせ、自身はプロデュー
サーに回った。
主演の嘉義農林監督・近藤兵太郎(ひょうたろう)役には日本の実力派俳優、永瀬正敏さんを口
説き落とした。作品はリアリティーにこだわり、戦前の甲子園球場と嘉義の街並みはCGではな
く、巨大なセットを組んで撮影。台湾にない甲子園の黒土は粉砕した古タイヤで再現した。
台湾映画にもかかわらずセリフの9割近くを日本語が占める。これも「当時の台湾の学校ではさ
まざまな民族の子供がコミュニケーションを取るため、公用語として日本語を話すのは自然だっ
た」とリアリティーを追求した結果だった。
上映時間は3時間を超えるが、「この映画はみなさんを泣かせたり、笑わせたり、ひょっとした
ら呼吸することすら忘れさせてしまうかも。絶対に飽きさせることはないと思う」と自信たっぷり
だ。(三浦馨)