続いて8月20日、今度は台湾政府からの要請に基づき、国務省はF16V戦闘機66機の売却を議会へ正式に通知した。関連装備や部品を含めた売却総額は80億ドル(約8500億円)にのぼると言われ、これは米台間の武器売買としては最大規模で、台湾に戦闘機を売るのは、李登輝総統時代の1992年にブッシュ(父)政権がF16を150機売却して以来27年ぶりのことだ。
これを受け、10月29日、台湾議会が米国からの戦闘機購入の特別予算化法案を全会一致で可決したという。
下記にNHK NEWS WEBの記事を紹介するが、今後、中国の反発を強めることが予想されると書き加えている。中国が「一国二制度」をもって併呑しようとしている台湾が軍備力を増強するのだから、中国が反発するのは当然のことで、記事としては蛇足と言ってよい。
それよりも、NHKがニュースとして伝えて欲しかったのは、米国はどのような背景で台湾に戦闘機などの武器を売却するのかではないだろうか。
F16V戦闘機66機の売却について、ポンペオ国務長官はすでに台湾関係法に基づく正当な措置であると表明している。
西太平洋地域の平和と安定は、合衆国の政治、安全保障および経済的利益に合致するとして、米国が中国と国交を樹立した当日の1979年1月1日、米国はこの台湾関係法を発効させ、第2条には「防御的な性格の兵器を台湾に供給する」と明記している。
米国は国内法に基づいて台湾に武器を供給している。中国の反発は米国への内政干渉に当たると、米国から反撃されるかもしれない。NHKはせめて米国の台湾への武器売却の背景を書くべきではなかったのか。
なお、李登輝元総統が講演でも紹介し、直接、李登輝元総統からお聞きしたことでもあるが、台湾が米国からF16戦闘機を購入したことで、社会党の土井たか子氏が台湾を訪れ、李登輝総統に対し「どうして購入したのか」と食ってかかったことがあったそうだ。
それに対して、李総統は「あなたは兵隊の命をどう考えているのか。古い戦闘機に乗っていると機器の不調で命を落す兵隊が少なくない。私にはそれが耐えられない」と、購入した理由を諄々と説かれたそうだ。これには、猛女土井たか子も返す言葉がなく、それ以来、李総統の前に姿を現すことはなかったという。
—————————————————————————————–台湾議会 F16戦闘機購入に向け法案可決 中国の反発必至【NHK NEWS WEB:2019年10月29日 21時03分
アメリカのトランプ政権が台湾への27年ぶりの戦闘機の売却を決めたことを受け、台湾の議会は29日購入に向けた法案を可決しました。2023年以降、F16戦闘機66機を導入する計画で、中国の反発が予想されます。
アメリカから台湾への27年ぶりの戦闘機の売却はトランプ政権が台湾の蔡英文政権の要望を受けてことし8月に決定しました。
これを受けて台湾の議会は29日、戦闘機の購入に向けて今後7年間で2500億台湾元、日本円にして8900億円を上限とする特別予算を組むことを盛り込んだ法案を審議し、全会一致で可決しました。
台湾は2023年以降、アメリカのF16戦闘機の新型の機種66機を順次、導入し台湾東部の基地に配備する計画です。
台湾は現在、27年前にアメリカから購入したF16戦闘機144機を主力戦闘機の1つとして保有していますが、老朽化が問題になっている上、独立指向の強い蔡政権の発足以降、中国軍が台湾周辺での活動を活発化させ、戦闘機のスクランブル=緊急発進も増加しています。
今回の戦闘機の売却を巡っては中国政府が「武器売却に関わったアメリカの会社への制裁を含めあらゆる必要な措置をとる」と表明してアメリカに売却の撤回を求めていて、今後、反発を強めることが予想されます。