去る9月29日、長年争われてきた台湾語の表記方法について、台湾の教育部(文部科学省
に相当)国語委員会は、台湾語の発音表記で台湾ローマ字式を採決しました。
日本人で台湾語を学んでいる人は少なく、その研究者に至っては10人もいないと言われ
ていますが、本会理事で、東京大学大学院博士課程で台湾語を研究している多田恵氏に今
回の統一措置について解説していただきました。
多田恵氏は今回の決定を歓迎し、「義務教育の場で一貫した方式で台湾語教育が行われ
ることが期待できる」としています。
確かに言語は、外に向かっては他者との高度なコミュニケーションを可能にし、内に向
かっては深い内省力となって人間性を深めてきました。ですから、人間の本質を形成する
決定的な要因であり、どこの国でも言語教育を教育の根本としています。まさに言語は人
間の命と同じと言って過言ではありません。
しかし、日本は悠久の昔から大和言葉という民族言語が国語、すなわち国家の言語だっ
たからよかったものの、多くの国は多民族国家のため、今でも国語と民族言語が一致して
いる国はそれほど多くありません。
その点でも、台湾の今回の統一措置が国語と民族言語を一致させる方向に進むことで台
湾の国力を増進させ、民主主義を加速させ、統一された国家、すなわち「台湾共和国」建
国へと進むよう願わずにはいられません。
この台湾語の表記統一措置について、ご意見のある方はどしどしお寄せください。下記
に多田理事の解説と、「な〜るほど・ザ・台湾」が伝えたニュースを紹介します。
メールマガジン「日台共栄」編集長 柚原正敬
——————————————————————————–【解説】多田 恵(本会理事)
台湾語の表記は、清末以来、教会ローマ字(白話字)が使われていたが、国民党独裁期
「中国文字ではない」という理由で弾圧された。
1994年、教育部では教会ローマ字に変更を加えたTLPA方式(台湾ビン南語音標)を
推薦した。しかし、教会ローマ字派がこれに反対したので教育部は推薦を実質的に白紙に
戻す政策を表明した。
1998年、当時、中央研究院民族学研究所に所属していた社会心理学者の余伯泉氏が通用
式を提案した。これは中国のピンイン方式に変更を加えたもので、教会ローマ字やTLP
Aとは互換性がない。
これらに対し教育部は中立の態度を取りつづけたため、義務教育における台湾語教育の
現場では異なる方式による教材が使用されていた。
今回、教会ローマ字支持派とTLPA派が調整を行い、教会ローマ字との互換性を確保
した「台湾ローマ字」という方式で候補を一本化したものが国語推行委員会をほぼ全会一
致で通過した。
今後、義務教育の場で一貫した方式で台湾語教育が行われることが期待できる。中国語
の表記と一線を画す、台湾独自の表記を堅持した意味は大きい。
——————————————————————————–台湾語表記法、台湾ローマ字式が採用される
【10月2日付「な〜るほど・ザ・台湾」最新ニュース】
長年にわたって争われてきた台湾語表記が決まった。教育部国語委員会は9月29日、台湾
語の発音表記で台湾ローマ字式を採決した。採決に当たり、通用表記式を主張していた余
伯泉委員が退場し、多数決で決まった。台湾語の表記では通用表記式など各種あって混乱
していたが、100年の歴史がある教会ローマ字をもとに教育部が台湾上ェ南語音標(TLPA)を
考案した。