民党候補者の洪秀柱氏をめぐって党内で起こっている内紛が発覚した。洪氏がラジオ番組出演時に
発言した「統一発言」が引き金となって、新北市長で主席の朱立倫氏へ交代する可能性が出てきた
という。産経新聞が伝えている。
台湾の報道によれば、朱立倫氏は5日、候補者交代について「ナンセンスでコメントできない」
と述べたものの、総統選、立法委員選のいずれにおいても「問題に遭遇している」と述べて内紛を
認め「7日の党中央常務委員会で関連の問題についてじっくり話し合う考えを示した」という。
中国国民党内では、内政部長や総統府秘書長、国民党秘書長などの要職をつとめた前亜東関係協
会会長の廖了以氏が雲林県の張栄味・元雲林県長と「台湾国民党」を組織すると表明し、すでに内
部分裂の兆しが出ている。明日7日の中央常務委員会が注目される所以だ。
なお、本日の産経新聞朝刊の見出しは「台湾・総統選控え国民党混乱 朱主席に候補交代か」
で、インターネット版は下記の「与党がまさかの女性候補すげ替え?」。朝刊の見出しよりも生々
しくかつ的確に状況を反映しているので、転載ではそのままとしたことをお断りしたい。
与党がまさかの女性候補すげ替え? 「統一」爆弾発言で我慢も限界 主席を“強制出馬”方針
【産経新聞:2015年10月6日】
【台北=田中靖人】台湾の与党、中国国民党の執行部が、来年1月の総統選候補者を現在の洪秀
柱立法院副院長(国会副議長に相当)=(67)=から朱立倫主席(54)に交代させる方針であるこ
とが5日、分かった。複数の台湾メディアが同日夜に報じ、国民党幹部も産経新聞の取材に大筋で
認めた。事実上、初の女性対決になるとみられていた総統選の構図は、届け出まで2カ月を切り、
新たな局面を迎えた。
中央通信社など複数のメディアは5日夜、朱主席ら党執行部が9月中旬以降、選挙の劣勢を理由に
複数回にわたって洪氏に立候補辞退を求めたが、洪氏に拒否されたと報じた。洪氏が今後も辞退し
ない場合、中央常務委員会で臨時党大会の開催を決定。臨時党大会で朱氏を候補者に「徴召(強制
指名)」するという。
朱氏の出馬方針は自由時報(電子版)が報じた。記事は、新北市の党関係者の話として、このま
ま洪氏が総統選に臨んだ場合、党や朱氏自身の政治的前途も失われると朱氏が判断。新北市長を辞
任して総統選に出馬する方針が「ほぼ固まった」とした。朱氏の出馬は馬英九総統も了承済みであ
ることも示唆した。
■支持率で野党に遅れ
朱氏は5日、新北市政府(市役所)で記者団に「根拠のない臆測には答えられない」とする一
方、「党内にはさまざまな意見があり、総統候補と立法委員(国会議員)選が困難に直面している
ことは知っている」として「水曜日の中央常務委員会で議論する」と述べた。出馬観測については
「私が今しているのは市政の仕事だ」と述べたが、明確に否定もしなかった。
有力テレビ局TVBSの8月末の世論調査によると、洪氏の支持率は23%で、野党、民主進歩党
の蔡英文主席(59)の40%を下回る。差し替え論はこれまでも総統選と同日に行われる立法委員選
の候補者を中心にくすぶっていた。
だが、最終的に後押ししたのは、2日放送のラジオ番組での洪氏の発言とみられる。洪氏は、台
湾は憲法上「最終的には(中国との)統一が必要だ」と主張。夕刊紙、聯合晩報などは5日夕、朱
氏が3、4日の両日、洪氏に対し「統一発言は受け入れられない」と出馬辞退を迫ったと報じた。中
央常務委員の一人も4日、洪氏を候補者として支持し続けるかを議論するため、臨時党大会の開催
を求めると公言していた。
中台関係に対する台湾の世論は、政治大の今年6月の調査で、59・5%が「現状維持」を支持する
一方、「統一」支持は9・1%にすぎない。中間層への配慮を欠く洪氏の「統一発言」は、有権者の
多数派を意識する小選挙区制の立法委員の候補者にとっては死活問題で、不満が限界に達したとみ
られる。
■党規約違反の恐れも
ただ、党規約は党大会の開催には2カ月前の通知が必要とし、立候補届け出に間に合わないとの
指摘もある。洪氏もこれまで「最後まで戦う」と訴えており、引きずり下ろす形になれば、かえっ
て党勢に悪影響を及ぼす可能性もある。