下記に紹介する尖閣諸島をめぐる台湾国内の様子が恐らく等身大の台湾だろう。台湾の
人々は実に冷静だ。
編集子も9月20日から24日まで台北に滞在したが、23日のデモは新党や親民党などいわゆ
る親中派の政党に先導されていることを台湾の人々はよく知っている。1000人という数に
驚かされてはいけない。かつて台湾正名運動が台湾で展開されたときには最初から3万人を
超えていたのだから。
また漁船にしても、尖閣諸島の主権や領土が問題ではなく、尖閣諸島周辺で魚を取りた
いというアピールだった。総統の馬英九氏が尖閣に行った漁業関係者をわざわざ招待して
評価したのも、「弱腰」批判をかわそうとする国内向けのパフォーマンスであることを台
湾の人々はよく知っている。台湾漁民の心を本当に理解しているなら、日本と命を懸けて
漁業協定を結ぶと宣言すべきだったのだ。
台湾の親日ぶりはそれでも不滅! 日本人ビジネスマンが次々に体験した台湾のほっこり親日体験
【MSN産経ニュース:2012年9月28日】
昨今の領土問題で緊張が高まる極東アジア。中国・韓国のみならず、親日国として名高
い台湾からも漁船団が尖閣諸島付近に送り込まれるなど、かなり残念な状況にあります。
反日デモが荒れ狂った中国本土はともかく、その親日ぶりが私たちの心をなごませてい
た「中華民国」=台湾でも人々が日本を嫌いになってしまったとしたらそれまた残念!
実際に現地ではどういう状況なのでしょうか。この1週間ほど首都・台北市に滞在したビジ
ネスマン・T氏に話を聞いてみた……のですが、彼が語り出したのは「お前それ台湾のス
テマだろ」というレベルの、想像を上回る台湾人たちの親日ぶりでした。以下、T氏の報
告です。
◆道に迷うと人々が寄ってくる! 教えてくれる! 何度でも!
得意先からホテルまで、バスで向かおうとしたときのこと。台湾では車の走行車線が日
本と左右逆で、しかもバスレーンが道の中央にあったりするので、台湾初心者の僕にはバ
ス停がどこなのかすぐにはわかりませんでした。道端できょろきょろしていると、おじち
ゃんおばちゃんが近寄ってきて口々に「どこに行くんだね」と(中国語なので想像です
が)。バス、と答えるとみんながそろってバス停を指さすんです。何か売りつけてくる気
配もなし、ただの親切なんですよこれが。
で、バス停についたところ、これが路線も車体の行先表示もさっぱりわからない……。
路線図とにらめっこしていると、今度は女子大生とおぼしき若い女子が「どこ・いきます
か」とカタコトの日本語で。行き先を言うと、次々来るバスには「これ・ダメ」、3台くら
い後のバスで「これ・乗る」って教えてくれました。わずか10分のあいだに助けられっぱ
なし、日本の田舎でもなかなかこんなことないです。
◆タクシーの運転手は日本人とおしゃべりするのが好き! しかも商売抜き!
台北ではタクシーが初乗り約200円(編集部註:70元)、加算もとても安いので便利でし
た。何度か利用したのですが、運転手さんがやたらカタコトの日本語でしゃべってくる!
経験上、海外でカタコトの日本語をしゃべる人間は何か魂胆があるものですが、どうや
ら台湾の彼らは単に「日本人とおしゃべりしたい」だけ。「九イ分は行った?」「烏来
は?」「夜市なら士林がいいよ」などなど、観光情報をやたらくれます。こちらは出張だ
よビジネストリップだよ、と言うのですが、私服ゆえかあまり理解されず(笑)
そんな話をしながら細い道に入ったので「やられたかな? まあ安いしいいか」なんて
思ってたのですが、後でルートを調べたら、渋滞の大通りを避けて近道してくれていたの
でした。
また英語より日本語のほうが格段に通じます。別の日、タクシーを止め「タイペイステ
ーション」と告げたところ、運転手さんは「ステーション……?」と首をかしげ、無線で
なにやら本部に「ステーション」の意味を問い合わせている様子。うわ、ごめんね、とつ
ぶやいたら「あー台北駅か? 日本人?」と。「日本語で言ってよ〜(笑)」って文句言
われてしまいました。「おみやげは台北駅前の三越の地下がいいよ、三越は日本デパート
で安心だね」っていうおまけ情報つき。
◆200メートルおきに日本のコンビニ、置いてある商品にも看板にも日本語だらけ
ファミマとセブンイレブンがやたらいっぱいあります。数が多すぎて、うっかり目印に
すると道に迷うレベル。そしてそこで売られている商品たちの多くが日本ブランドのもの
や日本からの輸入品、さらにBGMがJポップのカバーとくれば、ここは方言の特殊な日本
の田舎なのか? と思わず錯覚です。
とくに若者向けのお菓子や化粧品などのパッケージには、おしゃれ感を狙った日本語が
かなりの確率で印刷されています。そのほとんどがものすごくデタラメな日本語なのはご
愛嬌ということで。
ちなみに日本語の「の」という字はもう相当市民権を得ているようで、街中のいたると
ころで「AのB」という使われ方をしています(例:「茶の藝」「味の鍋」)。これらの
日本語が、日本人のためでなく、台湾人のおしゃれとして使われているのがなんとも可愛
かったです。
◆台湾人「なんだか本当にごめんね」
打ち合わせのあと、クライアントの同年代の奴と熱炒(台湾型の飲み屋)でサシで飲
み。さすがに領土問題はなあ、と思ってこちらからは話題に出さずにいました。けっこう
飲んだな、というくらいのときにその彼が「awfully sorry(ほんとにごめん)」と言って
くるわけです。何が、と聞くと、あの島が誰のものかはみんな知ってるけど、うちの国は
立場的に言いづらい、と。「PRC(The People’s Republic of China=中華人民共和
国)がああいう主張をしているから、『もっと正統な中国』ということにしている国民党
政権がまるで違うことを言うとまずい」のだそうな。日本人の自分にはわかるようなわか
らないような感じですが、台湾という国の背後には相当複雑なものがあるのだと思いまし
た。
◆最後に
台湾の物価は日本の約1/3と言われていて、実際に自分もそう感じました。ビールはお店
でも大ビン1本120円ぐらい。ラーメンは200円ぐらい。3倍するとだいたい日本と同じぐら
いですよね。そこで思い出したのがあの大震災のときの義援金です。合計で200億円を突破
したという報道がありましたが、それが本当であれば、物価の差を考慮に入れると……。
上で話したのは自分ひとりの体験に過ぎないので、もしかしたら台湾で悪い体験をされ
た方がいるかもしれません。ただ、少なくとも自分は1週間の滞在でいやな思いをさせられ
たことは一度たりともありませんでした。反日感情を示すものは何一つ見かけず、アジア
でよくありがちな小さな詐欺や強引な勧誘さえもなし。こんなタイミングだからこそ、こ
の国に日本がいかに愛されているかを改めて思い知った気分です。
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すっかり「また行き台湾」モードになってしまっているT氏でしたが、彼も言っている
ように、必ずしも常に彼のような体験ばかりが待っているとは限らないだろうとは思いま
す。でも、中国本土や韓国のような反日感情には、少なくとも旅行で行くかぎり出会わな
いかも。
T氏によると、漁船団にお金を出していたのは中国本土でビジネスをしたいと目論むせ
んべい屋の社長だそうで、むしろ現地で問題になっていたとか。相変わらず何が本当で何
が嘘かを見抜くのが難しそうですが、わたしたちはまだしばらく台湾がお友達だと信じて
いてよさそうです。
(取材・構成・文=纐纈タルコ/ 写真提供=YOSHI T.)