台湾の日本に対する好感度は日中関係と反比例 [産経新聞 矢島 誠司]

親日という日本の「資産」を目減りしないようにしたい

 本日(1月3日)付の産経新聞が特集面で「隣人たちの日本を見つめる目」という見出し
の下、大陸側から日本を見る角度となるように世界地図を90度回転させた地図を載せ、そ
こで日本の隣国となる中国、韓国・北朝鮮、台湾、ロシアの対日観がどうなっているのか
について書いている。

 中国は伊藤正氏、韓国・北朝鮮は黒田勝弘氏、台湾は矢島誠司氏、ロシアは斎藤勉氏と
、それぞれの地域を担当するベテラン記者によるものだ。ここでは元台北支局長をつとめ
た矢島誠司氏による記事を転載して紹介してみたい。台湾の親日という日本の「資産」を
大事に、目減りしないようにと訴えている。

 文中、台湾の経済誌「遠見」の世論調査で「最も尊敬する国」などで日本が米国を抜い
て1位となったことは、12月23日の「日台共栄の夕べ」で採択した「外登証と台湾表記に
関する政府への要望決議」の中でも触れている。また、昨年10月に行われた台湾シンクタ
ンクの国別好感度調査でも、日本人が第一位となり、米国人、韓国人、中国人を押さえて
いることも、すでにこの決議で触れていることを付け加えておきたい(本誌12月25日付、
第430号参照)。                            (編集部)


台湾 好感、日中関係と反比例 矢島誠司

「今日の台日関係は1972年の断交以来、最も良い状態にある」

 台湾の許世楷・駐日代表は折あるごとにこう語る。陳水扁総統をはじめ、台湾の多くの
要人たちも同様だ。

 世論調査もそれを裏付けている。許氏によれば台湾の経済誌「遠見」が昨年行った(1)
最も尊敬する国(2)最も行ってみたい国(3)最も移住したい国−の世論調査では、日
本が従来の米国を抜き、いずれも1位になった。

 一方、一昨年、台湾が米ギャラップ社に委託して日米英仏独5カ国で行った台湾に対す
る意識調査では、「台湾に好感を抱いている」とする日本人が76%にのぼり、五カ国中ト
ップだった。

 ところが、日本の内閣府の昨年12月の外交に関する世論調査」では、「中国に親しみを
感じない」が61%、「日中関係は良好だと思わない」が71%に上っていた。まさに対照的
だった。

 台湾の台日意識は、日中関係の良し悪しに反比例する面もある。小泉純一郎前首相以来
、日本政府が戦後初めて見せた中国に対する毅然たる姿勢に安心感を覚えている様子もう
かがえる。一昨年の台湾へのノービザ適用、昨年の台湾運転免許証の日本での使用容認の
動きなども一因だ。

 昨年12月、選挙取材で台湾を訪れた際、何人かの政治家、識者に安倍晋三首相以後の台
日観を聞いてみた。その結果は小泉首相時代を上回るものがあった。

「小泉首相は中国に毅然とした態度を取ったが、安倍首相はそれに加えて、台湾をよく理
解してくれている」と。

 安倍首相が昨年10月の訪中で「台湾の独立を支持しない」と述べたことについても、「
日本政府の従来のタテマエに過ぎず、言外には『支持もしないが反対もしない』がある」
と余裕だ。

 日台関係の良さに勇気付けられてか陳総統は昨年9月、フジテレビのインタビューに答
え「日台の準軍事同盟の締結を」とまで提唱した。

 ただ、ここまでくるとブレーキも。ある台湾の専門家は「台湾はアヒルの水かきに徹す
べし」と語る。中国の介入を招かないために、大事な政策は見えぬところで進めよ−とい
うわけだ。「水かきもせず、鳴くだけのアヒルは最悪だ」とも。

 台湾にある日系企業の社長は「台湾人の親日はわれわれの最大の資産」と語る。逆も真
なりだ。お互いにこの資産を大事にし、目減りしないようにしたいものである。意識など
は変わりやすいものだから。



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