台湾と自由を求める中国人との連帯は可能か【石川公弘】

去る2月5日、台湾研究フォーラムが石平氏を講師に定例研究会を開催しました。その直
後、参加した本会理事で石川台湾問題研究所代表の石川公弘氏より、その感想をいただい
ていました。「烏来と天灯の里ツアー」や桜寄贈の件で訪台していたためメルマガの発行
も滞っていました。いささか遅くなりましたがここに掲載します。     (編集部)


台湾と自由を求める中国人との連帯は可能か
                      石川台湾問題研究所  石川 公弘

 2月5日午後6時から、台湾研究フォーラムの例会が開催された。講師は独特の視点で最近
めきめきと売り出している評論家石平氏、テーマは「中国から見た台湾問題」である。石
平氏は北京大学卒業後、神戸大学大学院に学びその博士課程を修了、民間研究機関勤務を
経て、現在は評論活動を行っている。

 石平氏は、中国から見た台湾問題を、歴史的に見て大きく三つに分類する。

 第1が、国共内戦の延長線上にある、毛沢東時代の「台湾解放」という認識である。中国
大陸は共産党政権によって解放され、人民は幸せになった。だが台湾は、大陸から逃げ出
した蒋介石政権の下で、悲惨な生活をしている。その台湾を解放しなければならないとい
う認識だった。当時、中国のあらゆる場所で、四つのスローガンが連呼されていた。毛沢
東主席バンザイ、中国共産党バンザイ、アメリカ帝国主義を打倒せよ、台湾を解放せよ。

 第2は、毛沢東のデタラメな国家運営で、中国経済が破滅寸前になり、その救世主として
!)小平が登場した時代である。ここで、中共の巨大なウソが暴かれる。悲惨な生活をして
いたはずの「解放すべき台湾」が、中国大陸よりよほど豊かであった事実である。この時
代の台湾は、資金や技術の援助先として認識され、中国から脅されることはなかった。

 第3は、中国に自由が広がり共産党が崩壊することを怖れた、天安門事件以後の江沢民の
時代である。もう中共は、共産党神話を語れなくなった。共産主義に代わる新しい神話が
必要となった。そこで共産党政権が依拠したのが超国家主義であり、愛国運動だった。そ
の中心テーマになったのが、反日と祖国統一であり、台湾統一は至上命題となった。

 その動きを反映して、軍やシンクタンク、それに民衆の間に見られる台湾認識は、極め
て厳しいものである。軍の大幹部だった者は、「国家統一の理念こそ、“中国の国教”で
ある」と言っている。精華大学国際問題研究所の所長は、「台湾の独立は絶対に阻止しな
くてはならない。台湾独立は中国全土に動乱をもたらす」と言っている。一党独裁の宣伝
に踊らされて、人民の言論も過激である。温家宝首相は、「個人の生命は、惜しむに値し
ない。祖国の統一は、個人の生命価値をはるかに超えるものである」とそれを煽っている。

 しかし自由を求める石平氏は言う。「“大帝国をつくれば民族が良くなる”という考え
方は間違っている。中華民族の不幸は、無理やりに大帝国をつくろうとするところにある
。その考えに、これまでどれだけの人民が犠牲になったことか」。確かに大帝国と民主主
義とは相反する考え方である。大帝国の下では、民主主義は物理的に不可能だし、独裁以
外に統治の方法はない。

 懇親会の席上、著名な評論家・宮崎正弘氏が石平氏を「彼は四川省の出身だが、昔から
四川省の人間には反骨の人間が多い。彼はその第一人者で、今後の発展に期待している」
と紹介した。閉会に当り、私はバンザイ三唱の音頭を指名された。台湾バンザイ、日本バ
ンザイ、四川省の自由人バンザイ。それを見て、中国共産党の独裁権力と闘っている大紀
元時報の中国人記者が喜んでいた。

 帰りの電車の中で考えた。台湾はもっと大陸と台湾の中にいる自由を求める中国人との
連帯を強化すべきではないのか。あの蒋介石と蒋経国が、強権で台湾人を抑圧していたこ
ろ、彼らが最も怖れたのは、台湾人と自由を求める外省人との連帯であった。いま中国大
陸では、自由を求めて共産党から脱党する人間が激増していると言う。台湾国内はもちろ
ん、大陸にいて自由を求めている彼らとの連帯が、台湾の将来を切り拓くのではないか。



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