その点で、農業分野の棚田交流はその先駆けかもしれない。岡山県美作(みまさか)市のNPO法人英田上山(あいだうえやま)棚田団と新北市金山区の八煙集落が棚田の再生や生態保護をめざして「台日姉妹棚田交流協定」を締結したのは、2013年8月10日のことだった。八煙集落の棚田再生に注目し、2012年から稲刈り体験交流を始め、3度も訪台団を組んで視察したのが美作市の英田上山棚田団だった。
協定を締結してからは、双方が毎年相互訪問し、農村復興の経験の知識や技術を交換してきたという。
産経新聞が伝えるところによれば、英田上山棚田団はこのほど「台湾などアジア地域から優れた農業研究者を受け入れ」、棚田の再生を加速させることを目的に「太洋産業貿易(本社・横浜市)と共同で、『ワールドファーマーズプロジェクト』を始動したと発表した」という。
8月9日、ワールドファーマーズプロジェクト始動についての記者会見を美作市役所で開き、棚田団の井上寿美・代表理事、太洋産業貿易の今田圭介・社長、美作市の萩原誠司・市長が臨み、萩原市長は「市としても協力・支援をしてまいります」と述べたという。
ちなみに、萩原誠司(はぎわら・せいじ)市長は本会理事もつとめ、岡山市が新竹市と姉妹提携したときの市長で、その後、衆議院議員、法政大学教授などを経て2014年3月、美作市長に就任。現在2期目で、台湾との豊富な交流を活かし、棚田の復活と台湾との交流を深化させていただきたいものだ。
◆美作市「8月の市政日記」:2018年8月9日 ワールドファーマーズプロジェクト始動 http://www.city.mimasaka.lg.jp/shisei/shicho/nisshi/1533600742705.html#a3
◆NPO法人英田上山棚田団:棚田団活動の紹介 http://tanadadan.org/activity.html
————————————————————————————-棚田再生にアジアの農業研究者 岡山・美作で受け入れへ【産経新聞:2018年8月19日】https://www.sankei.com/west/news/180819/wst1808190017-n1.html
岡山県美作市上山地区で、棚田の再生に取り組む認定NPO法人英田上山棚田団は、太洋産業貿易(本社・横浜市)と共同で、「ワールドファーマーズプロジェクト」を始動したと発表した。
フィリピンやベトナム、台湾などアジア地域から優れた農業研究者を受け入れ、日本の農業や産業技術と交流。新たな視点での農業の活性化を図る。
8月末には、バングラデシュから同地区に5人を受け入れ本格稼働。同地区を拠点に全国で毎年増員し、5年をめどに100人規模の第一次産業実践家集団の育成を目指すという。
同社は、同地区が進めている移動手段としての小型電気自動車の実証実験に参加したのをきっかけに、昨年から、半自律式草刈りロボットの開発に同地区を舞台に取り組むなど、精力的な関わりを続けている。
美作市役所で開かれた会見には、同棚田団の井上寿美代表理事と同社の今田圭介社長、同市の萩原誠司市長が出席。今田社長は「上山地区は、(都市部の)若い人らが地元住民と協働で再生を進めており、農業の可能性を感じた」と述べ、「アジア地域で実践している農業技術と日本との技術交流を図って研究を進めれば、上山地区が農業研究センターとして、日本の中心になる」と同プロジェクトへの意気込みを語った。
同地区では、改修した古民家をサテライトオフィスとし、同社が雇用する農業研究者は最低5年間は定住。OBを含めた地域おこし協力隊員とともに、米をはじめ小麦やニンニク、ブドウ栽培などで、耕作放棄地を整備。棚田の再生を加速していく。
萩原市長は「外国人の受け入れ政策としても、国から注目を集めるはず」と期待を寄せ、「地域おこし協力隊の補充やふるさと納税の活用などで、市としても支援していきたい」と力を込めた。