9月21日に中国と国交を結んだソロモン諸島は、なんと早くもその翌日の22日、ツラギ島などを行政区とするセントラル州が北京に本社を置く中国森田企業集団(チャイナ・サム・エンタープライズ・グループ)と、同州にあるツラギ島全体と周辺の島々を経済特区の開発用に貸し出す合意文書に署名したという。
時事通信は「オーストラリアン紙は、ツラギ島は第2次世界大戦中に旧日本軍が足場にしていたとして「十分な投資と(ソロモン)政府の合意があれば、軍事基地として開発される可能性がある」と報じている。
中国森田企業集団は傘下に化学メーカーや石油・ガスの開発企業などを収めていると報じられているが、なぜ中国は南太平洋のツラギ島に経済特区を設ける必然性があるのだろう。経済特区という大義名分を掲げておけば港湾を整備するなど、いつでも軍事基地に転換できる整備が行われることも想定される。
中国が空母「遼寧」を購入した経緯を思い浮かべれば、ツラギ島の経済特区構想が軍事基地構想に転換されることは容易に予想できる。
中国がウクライナから購入した「ヴァリアーグ」は当初、マカオの中国系民間会社の創律集団旅遊娯楽公司が海上カジノとして使用するとの大義名分を掲げて1998年に購入したが、いつの間にか空母として建造し直され、14年後には空母遼寧として就航するようになっていた。
ツラギ島が空母遼寧と同じ過程をたどらないとは断言できず、むしろその可能性は高いと言えよう。なぜなら、南太平洋に軍事拠点を設けることで、これまでソロモン諸島やキリバス共和国など南太平洋の島々を支援してきた日本、米国、オーストラリアの3ヵ国間へ楔を打ち込み、中国の勢力拡大を望めるからだ。中国が勢力を拡大すれば、米国やオーストラリアのプレゼンスは後退する。
いわば、中国がソロモン諸島やキリバス共和国と台湾を断交させたのは台湾の孤立化もさることながら、日米豪が共有する「自由で開かれたインド太平洋戦略」を後退させるという意味合いが強いのではないだろうか。
—————————————————————————————-ソロモン諸島、中国に島を賃貸=軍事利用に懸念−豪外務省
【時事通信:2019年10月19日】https://www.jiji.com/jc/article?k=2019101800800&g=int
【シドニー時事】南太平洋の島国ソロモン諸島で、地方政府が開発のために一部の島をまるごと賃貸する契約を中国企業と結んでいたことが明らかになった。オーストラリアの主要メディアが18日報じた。中国の軍事利用につながりかねないとして、太平洋諸国とのつながりが深い豪州では警戒感が広がっている。
ソロモンは9月、台湾と断交して中国と国交を樹立。開発資金を目当てに乗り換えたとの見方が強い。
報道によれば、ソロモンが中国と国交を樹立した翌日の9月22日に契約が結ばれた。首都のあるガダルカナル島の北にあるツラギ島(約2平方キロ)と、その周辺の島々が対象で、交わされた文書はソロモンの中央州の州政府が「経済特区」を開発するために中国の複合企業「中国森田」に賃貸するといった内容という。
中国森田は10月17日の声明で「ソロモン諸島の政府と戦略的な協力合意文書に調印した」ことを確認した。
オーストラリアン紙は、ツラギ島は第2次世界大戦中に旧日本軍が足場にしていたとして「十分な投資と(ソロモン)政府の合意があれば、軍事基地として開発される可能性がある」と報じた。
豪外務省は取材に対して「ソロモン諸島内での投資はソロモン政府の問題だ」としながらも「太平洋諸国で外国の軍事基地が構築されるとするならば大きな懸念を抱いている」と話している。