人権擁護法で台湾人の抗議の封じ込めをはかる法務省
「台湾の声」編集長 林 建良(りん けんりょう)
法務省が今年1月に開かれた議員の勉強会で配布した資料「人権委員会の手続き修正
案(相手方の保護)」により、不当な申し出により人権侵害の加害者とされた者の保護
を図るため、次のような場合に調査は行わないとしていることがわかった。
・被害が発生していないことが明らかな被害申告
・学術上の論議・歴史上の事象・宗教上の教義についての見解を根拠・前提にした被害
申告
・法令が憲法違反であるとの見解を根拠・前提にした被害申告
・言論による名誉毀損のうち、公共利害事実であって公益目的によるものに対する被害
申告
・不当な目的(不正な利益を得る目的、他人の名誉を毀損ずる目的等)でされた被害申
告
そしてそのうち、「法令が憲法違反であるとの見解を根拠・前提にした被害申告」の
事例として、「台湾人の外国人登録に『中国』と記載する行為が人権侵害であるとする
申告、朝鮮学校卒業者に公立高校の受験資格を認めないこと」を挙げている。
人権擁護法案が多くの日本国民に批判されていることは承知しているが、わざわざそ
こで在日台湾人の国籍問題に言及するのは、国籍を「中国」から「台湾」に改めて、台
湾人の人権を守れと主張してきた我々に対する強い拒否回答と受け止めた。
なお外国人登録で「中国」とするのは、法務省入国管理局の内規であって、法令では
ない。こういったところでも、法務省の保身の意思がにじみ出ている。
何から保身するのかといえば、もちろん中国からの批判だろう。
このように法務省は人権擁護法を利用して、台湾人の怒りを封じ込めようとしている
のだ。
このような横暴で卑怯な日本人たちを、我々台湾人は断じて許すことができない。
■抗議を!
法務省人権擁護局 3580−4111
この「人権擁護法案」が今国会で成立した場合、全国で2万人の人権擁護委員が任命
され、日本社会が陰湿な密告社会へと変貌しかねないことはすでに指摘されている通り
だ。捜査令状なしに「人権侵害」の証拠として個人のパソコンなどを押収できると言わ
れている。
これではまるで戦後台湾の「白色テロ」と同じだ。ましてや、法務省はわざわざ台湾
正名運動の中核問題である外登証の国籍改正を救済対象外としているので、日本人の言
論・表現の自由が制限、抑圧される上、在日台湾人の人権をも救済しないのであれば、
人権擁護法案など容認できるはずもない。これでは「人権擁護」を騙った人権抑圧法案
である。
この「人権擁護法案」を推進しているのは、大田誠一議員が会長を務める自民党の「
人権問題等調査会」。副会長が櫻田義孝議員。また、山崎拓、谷垣貞一、古賀誠、二階
俊博、鳩山邦夫なども推進派。福田総理も推進派と見られている。事実、一度は葬られ
たこの法案が動き出したのは、福田氏が総理・総裁に就いてからだ。
一方、この法案に反対しているのは、安倍晋三前総理、中川昭一、麻生太郎、平沼赳
夫、早川忠孝、高鳥修一、稲田朋美、戸井田徹、衛藤晟一、赤池誠章、古屋圭司、土屋
正忠、萩生田光一、下村博文の各議員。
どうやら、推進は親中派、反対は親台派という分け方もできそうだ。
台湾正名運動を進める本会の活動を阻害するものとして、私どもも「人権擁護法案」
に反対の意思を表明する次第である。
平成20年2月25日
メルマガ「日台共栄」編集長 柚原正敬