中嶋嶺雄氏が安倍首相の訪中を高く評価し、台湾は日本と世界の「結節点」と指摘

第34回日台「アジア太平洋研究会議」における中嶋氏の報告

 去る3月26日、東京・新宿区内のホテルで大陸問題研究協会(高野邦彦会長)と台湾の国
立政治大学国際関係研究センター(鄭端耀主任)の共催による、第34回日台「アジア太平
洋研究会議」が「東アジアはどこへ行く?−政治・経済・安全保障」をテーマとして開催
された。

 基調講演は日本、アメリカ、台湾をめぐる安全保障をテーマに、衆議院議員で日華議員
懇談会副会長の玉澤徳一郎氏が行った。台湾はフィンランドに学び、自分で防衛する決意
を示して欲しいと叱咤激励しつつ、安倍内閣はすでに台湾を視野に戦略を立てていると述
べた。

 興味深かったのは、中嶋嶺雄・国際教養大学学長による第1セッション「東アジアの政治
胎動」だ。中嶋氏は「安倍首相の訪中は大成功だった。高く評価したい」と切り出して、
その理由を述べる。

 安倍首相は、首相就任12日目の昨年10月8日に中国を電撃訪問したが、このとき、スピー
チ原稿を事前に中国側に見せなかった一事が端的に安倍首相の決意を示している、と指摘
した。安倍首相は、対中関係を一手に仕切る外務省のチャイナスクールによる事前摺り合
わせを断固拒否したのだという。

 成功の要因は、まず第一に、安倍外交を支えている谷内正太郎外務次官と麻生太郎外相
が小泉内閣の安倍官房長官のとき以来の強い信頼関係で結ばれていることにあり、この関
係が外務省のチャイナスクールや媚中議員に頼らない環境を作っているという。

 また、「関係が必ずしも良好ではないという土壌でも、いつでも会える状況は作ってお
きたい」とする安倍首相の目論みを実現させたことからも、訪中は大成功だったと指摘し
た。

 中国側にも、安倍首相の訪問を待っていた事情があったという。それは、胡錦濤が江沢
民に対抗すべく、日本の首相を歓迎して日中友好を推進する路線を見せつけるためで、日
本の新首相が最初の訪問国に中国を選んだことで、首長としての力を誇示した結果になっ
たという。

 さらに、この成功を演出した最大の功労者は小泉前首相で、靖国問題で中国に妥協しな
かった小泉前首相の一貫した態度が安倍首相にフリーハンドを与え、中国や韓国に首脳会
談を受け入れざるを得ない状況を作ったと指摘した。

 中嶋氏は、最後に、東アジアにおいては北朝鮮問題以上に重要なのが「台湾問題」だと
して、「台湾は日本にとっても世界にとっても結節点」と剔抉した。2008年の総統選挙に
おいて、中国国民党が選ばれれば第三次国共合作という事態も起こりうるし、民進党が選
ばれて「独立」を叫べば中国は反国家分裂法を楯に軍事行動を引き起こすだろうとして、
「台湾は賢明な選択をすると思う」と締めくくったが、台湾の「賢明な選択」とは何を指
しているのか、意味深長な締めくくり方だった。

 なお、この会議の模様は、台湾駐日代表処のホームページでも掲載しているので、下記
からご参照願いたい。

http://www.roc-taiwan.or.jp/news/week/07/070327e.htm

                  (メールマガジン「日台共栄」編集長 柚原正敬)



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