中国潜水艦が今月上旬、東シナ海に展開しているのを自衛隊が探知していたことが16
日、分かった。潜水艦は2隻で、1隻は2004年11月に日本領海を侵犯したのと同型の漢(ハ
ン)級攻撃型原子力潜水艦とみられる。この時期、横須賀基地(神奈川県横須賀市)に
配備されたばかりの米原子力空母ジョージ・ワシントン(GW)が韓国に向けて周辺海
域を航行しており、海上自衛隊は、中国側がGWを待ち伏せし、GWのデータ収集や示
威行動を行おうとしたと判断、P3C哨戒機による監視飛行を強化している。
防衛省によると、漢級のほかのもう1隻は通常型潜水艦とされる。自衛隊が2隻を探知
した地点は日本の領海外で、領海侵犯などはしていない。
GWは通常型空母のキティホークに代わり、先月25日、横須賀基地に配備。今月7日
に韓国・釜山沖で開かれた韓国海軍の記念式典に参加するため、1日に横須賀基地を出
港していた。
中国は新型の建造など潜水艦戦力の増強に伴い、潜水艦の活動も活発化させている。
東シナ海では米軍艦艇に連動して活動するケースが多い。GWの配備を控えた先月14日
には、海自のイージス艦が高知県沖で国籍不明の潜水艦の潜望鏡らしきものを発見。ク
ジラを誤認した可能性も残るが、潜水艦であれば中国かロシアとみられるという。
今回の中国潜水艦は横須賀から釜山までの航行ルートを予測して待機し、GWの音響
データなどを収集しようとしたとみられる。
GW配備による米軍の抑止力強化を踏まえ、中国潜水艦は情報収集のほか、GWを威
嚇しようとしたとの分析もある。06年10月、通常型の宋(ソン)級攻撃型潜水艦が沖縄
近海でキティホークを追尾し、約8キロの魚雷射程圏内で海上に浮上しており、同省幹部
は「GWにも同様の軍事デモンストレーションを狙っていたのではないか」とみている。
GWは潜水艦に追尾されずに釜山に到着。米軍は偵察衛星などで中国潜水艦の動向を
監視しており、事前に展開を把握し、GWを迂回(うかい)させた可能性がある。
GWは通常型に比べ、艦艇用燃料が不要なため艦載機燃料などを多く積め、戦闘・作
戦能力が高い。台湾海峡有事の際には米軍の主力となる。台湾制圧には制海権をとるこ
とが不可欠な中国にとって、米空母は最大の敵で、GWの能力を強く警戒。今後もGW
に継続的な軍事作戦を展開する可能性があり、海自は中国潜水艦の動向を注視する。
◇
中国潜水艦 中国は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射管12基を搭載した夏級
をはじめ約60隻の潜水艦を保有。歴代王朝の名を冠し、原子力潜水艦は夏級と漢級で、
ディーゼル機関などで動く通常型は明級、宋級など。今年に入り、米シンクタンクの全
米科学者連盟が最新鋭原潜の晋級が南シナ海・海南島の海軍基地に配備されたと公表。
射程8000キロのSLBM「巨浪2」を10〜12基搭載できるとされ、2010年までに晋級5隻
の運用を可能にするとみられており、核・ミサイル戦力の増強を進めている。
◇
ジョージ・ワシントン 1992年にニミッツ級6番艦として就役した。全長約330メートル、
排水量は約10万トン。推進機関は2基の原子炉で、速力は時速約54キロ。FA18戦闘攻
撃機など75機の航空機を搭載。通常型より長時間の作戦が可能で、加速力も大きいため
対潜水艦作戦でメリットがある。米海軍の10隻の原子力空母のうち米本土以外を母港と
する唯一の艦。東アジアからインド洋を担当する第7艦隊に所属し、台湾海峡有事や朝
鮮半島有事に備える。横須賀を拠点とする空母は73年のミッドウェー以来、4代目とな
る。
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