中国潜水艦2隻、米空母威嚇狙う 海自が東シナ海で探知

【10月17日 産経新聞1面】

 中国潜水艦が今月上旬、東シナ海に展開しているのを自衛隊が探知していたことが16
日、分かった。潜水艦は2隻で、1隻は2004年11月に日本領海を侵犯したのと同型の漢(ハ
ン)級攻撃型原子力潜水艦とみられる。この時期、横須賀基地(神奈川県横須賀市)に
配備されたばかりの米原子力空母ジョージ・ワシントン(GW)が韓国に向けて周辺海
域を航行しており、海上自衛隊は、中国側がGWを待ち伏せし、GWのデータ収集や示
威行動を行おうとしたと判断、P3C哨戒機による監視飛行を強化している。

 防衛省によると、漢級のほかのもう1隻は通常型潜水艦とされる。自衛隊が2隻を探知
した地点は日本の領海外で、領海侵犯などはしていない。

 GWは通常型空母のキティホークに代わり、先月25日、横須賀基地に配備。今月7日
に韓国・釜山沖で開かれた韓国海軍の記念式典に参加するため、1日に横須賀基地を出
港していた。

 中国は新型の建造など潜水艦戦力の増強に伴い、潜水艦の活動も活発化させている。
東シナ海では米軍艦艇に連動して活動するケースが多い。GWの配備を控えた先月14日
には、海自のイージス艦が高知県沖で国籍不明の潜水艦の潜望鏡らしきものを発見。ク
ジラを誤認した可能性も残るが、潜水艦であれば中国かロシアとみられるという。

 今回の中国潜水艦は横須賀から釜山までの航行ルートを予測して待機し、GWの音響
データなどを収集しようとしたとみられる。

 GW配備による米軍の抑止力強化を踏まえ、中国潜水艦は情報収集のほか、GWを威
嚇しようとしたとの分析もある。06年10月、通常型の宋(ソン)級攻撃型潜水艦が沖縄
近海でキティホークを追尾し、約8キロの魚雷射程圏内で海上に浮上しており、同省幹部
は「GWにも同様の軍事デモンストレーションを狙っていたのではないか」とみている。

 GWは潜水艦に追尾されずに釜山に到着。米軍は偵察衛星などで中国潜水艦の動向を
監視しており、事前に展開を把握し、GWを迂回(うかい)させた可能性がある。

 GWは通常型に比べ、艦艇用燃料が不要なため艦載機燃料などを多く積め、戦闘・作
戦能力が高い。台湾海峡有事の際には米軍の主力となる。台湾制圧には制海権をとるこ
とが不可欠な中国にとって、米空母は最大の敵で、GWの能力を強く警戒。今後もGW
に継続的な軍事作戦を展開する可能性があり、海自は中国潜水艦の動向を注視する。

                    ◇

中国潜水艦 中国は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射管12基を搭載した夏級
をはじめ約60隻の潜水艦を保有。歴代王朝の名を冠し、原子力潜水艦は夏級と漢級で、
ディーゼル機関などで動く通常型は明級、宋級など。今年に入り、米シンクタンクの全
米科学者連盟が最新鋭原潜の晋級が南シナ海・海南島の海軍基地に配備されたと公表。
射程8000キロのSLBM「巨浪2」を10〜12基搭載できるとされ、2010年までに晋級5隻
の運用を可能にするとみられており、核・ミサイル戦力の増強を進めている。

                    ◇

ジョージ・ワシントン 1992年にニミッツ級6番艦として就役した。全長約330メートル、
排水量は約10万トン。推進機関は2基の原子炉で、速力は時速約54キロ。FA18戦闘攻
撃機など75機の航空機を搭載。通常型より長時間の作戦が可能で、加速力も大きいため
対潜水艦作戦でメリットがある。米海軍の10隻の原子力空母のうち米本土以外を母港と
する唯一の艦。東アジアからインド洋を担当する第7艦隊に所属し、台湾海峡有事や朝
鮮半島有事に備える。横須賀を拠点とする空母は73年のミッドウェー以来、4代目とな
る。


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