回目の閣僚級会談を主な目的に初めて台湾を訪問した。
ところが、桃園空港には張氏の訪台を歓迎する団体とそれに抗議する市民らが集まり、中国大陸
との統一に反対する野党・台湾団結連盟の支持者らは「張志軍よ、(大陸に)帰れ」などと書かれ
た横断幕やプラカードを掲げ、警察と揉みあいになった(中央通信社)という。
また、驚いたことに、報道によれば、会談が行われた「台北ノボテル桃園国際空港ホテル」に宿
泊していた抗議団体の弁護士や大学教授ら7名が宿泊した部屋に、張志軍主任が到着する前の午前9
時ころ、公安とおぼしき警察が令状もなく、ドアを蹴って強引に突入、強制退去させようとしたと
いう。しかし、室内にいたメンバーはそれを拒絶すると10時間以上にわたって拘束したと伝えてい
る。
この場面はすでにYouTubeにアップされている。百聞は一見にしかず、削除されないうちに、と
くとご覧いただきたい。なんとも荒々しいやり方だ。これはまるで「予防拘禁」で、台湾の暗黒時
代といわれる「白色テロ」の再現ではないか。法治国家にはあってはならない人権弾圧だ。
馬英九総統は天安門事件25周年を迎えた6月4日、談話を発表している。そこでは「このようなき
わめて大きな歴史的な傷の痛みに直面し、私は中国大陸当局がこれを真摯に考え、速やかに名誉回
復し、このような悲劇が永遠に再び起きないよう切に願っている」と述べた。また「台湾は戒厳令
解除から今日までの27年間、様々な争議や抗議が何度も発生した。しかし、我々の社会はますます
包容力を持つようになり、様々な異なった意見により、もたらされた対話および反省を受け入れる
ことさえした」と、台湾が真の民主主義と法治を堅持するようになった経験を誇った。
そして「中国大陸当局が、意見の相違を許容することができたならば、権力を持つ当局者のス
ケールの大きさと正当性を引き上げることができる」とさえ述べ、中国の民主化を促したのだっ
た。
しかし、その下の根も乾かないうちに、意見の相違を許容しない人権弾圧という悲劇を起こして
いるのだ。日本ではこれを「二枚舌」と言う。馬総統はこれで台湾内ではますます信用を落とし、
世界の信頼をも失いかねないだろう。
◆ホテルの扉蹴り公安突入 台湾
http://youtu.be/wHnPHKsGRMs
中国と台湾、閣僚級会談の裏で発生した強制退去・軟禁騒動
【THE PAGE:2014年6月26日】
中国との提携をめぐり、台湾で新たな衝突が勃発した。台湾政策を担当する中国・国務院台湾事
務弁公室主任の張志軍氏は6月25日、台湾に初訪問し、台湾桃園国際空港近くの「台北ノボテル桃
園国際空港ホテル」で、台湾側の中国政策担当閣僚・王郁※キ氏と閣僚級会談を実施した。同ホテ
ルには、張氏の訪台に抗議する団体のメンバーら7人が会談前日から宿泊しており、客室で抗議活
動の下準備をしていたところ、警察が客室内へ強引に突入、メンバーらを10時間以上にわたって拘
束したという。(※キ=王へんに奇)
頼んだ覚えのない不意の「ルームサービス」
会談では、中国━台湾間の経済協力や相互拠点事務所の設置などに向けた話し合いが行われた。
これに対して「民主闘陣」などの抗議団体が「中国による内政干渉だ」と反発し、会談を阻止する
ため、前日の24日から同ホテルの客室に宿泊していた。
ところが、25日午前9時ごろ、「ルームサービス」と称して、警察やホテルのスタッフ10数人が
客室のドアを開けるよう要求。メンバーらに拒否されると、ドアを足で蹴り、押し破って中に突入
した。警察が退去を求めるも断られたため、全員を客室内に軟禁。メンバーの一人は、突入時の動
画をフェイスブックに掲載し、現場の状況や情報を発信し続けたが、投稿に気づいた警察がネット
接続を切断。メンバーらは、ルームサービスで水や食料を要求するもホテル側に断られ、飲まず食
わずの状態で10時間以上も隔離されたという。
同日午後7時過ぎに会談が終わり、メンバーらはホテルの裏口から外へ出るよう要求され、警察
の車両によって護送された。軟禁されたメンバーの一人で、弁護士の頼中強氏は「中国の官僚が来
ただけで、我々の自由が奪われてしまうのか」と話した。
警察「軟禁の事実は一切ない」
26日朝、警察は記者会見を開き、ホテル側が「予約した人数と実際に泊まった人数が違うため、
警察に通報した」とし、「ルールに違反したので宿泊契約を解除したと聞いた」と、ホテル側と口
をそろえる。事件が発生したホテルは、台湾の航空会社「チャイナエアライン」が100%出資のホ
テル。チャイナエアラインは、台湾政府と国民党の資金によって設立され、のちに民営化した会社
である。
ホテル側の行為に各界から批判の声
今回の騒動に対して、台湾の東華大学社会学部教授・施正鋒氏は「ホテルのやり方は野蛮だ」と
怒りをあらわにした。また、「台湾民主を守る会」の理事長・徐偉群氏も「憲法では集会の自由を
保障している」とコメント、政治大学法学部副教授・劉宏恩氏は「令状もなしに部屋まで入り込む
のはダメだ」とフェイスブックに投稿した。弁護士のセン順貴氏によれば「ホテル側の行為は住居
侵入罪にあたる」としている。
会談抗議の裏に“統一”への危機感
今回の会談は、中国━台湾間で経済的交流を深め、相互拠点事務所を設置することが主な目的で
ある。抗議団体は「両岸サービス業貿易協議」反対運動のときから、監視機能を定めた法令案の制
定を訴え続けてきたが、今回の会談でさらなる「密室協議」が進んでいる可能性がある、と主張し
ている。また、台湾に中国の拠点事務所が設置された場合、情報工作が一段と強化されるため、情
報の流出など、台湾への影響が大きくなる可能性が懸念されるという。議場占拠につながったサー
ビス貿易協議をめぐる「ひまわり学生運動」と同様に、中国との“統一”に対する危機感が、こう
した激しい抗議活動につながっているといえるだろう。
(文責:TomoNews(http://jp.tomonews.net/)/台湾)