エルサルバドルはラ・ウニオン港開発計画への支援を名目として、双方が債務危機に陥るほど多額の資金援助を台湾に求め、かつエルサルバドルの政権与党は大統領選で大幅に後れを取っていたことから、台湾に対して選挙資金の援助も求めるなど、常識外の要求を突き付けていた。
台湾が応じなかったのは当然で、そこにつけ込んだのが中国だ。台湾と断交させるだけでなく、港の確保もはかることで、米国の裏庭ともいうべきエルサルバドルを利用して米国を牽制しようとした。
これに対して米国は危機感をつのらせ、国務省は深い遺憾とともに、エルサルバドルとの関係を見直すと表明。さらには台湾と断交したドミニカ、エルサルバドル、パナマから大使を召還し、一時的に外交を断絶させることを相手国に通告し、断交も辞さないとする強い抗議の姿勢を示した。
また、議会側も「台湾に不利となる行動をとった国に対し、外交関係のレベルの引き下げや、軍事的融資などの支援の一時停止または変更などの措置をとる権限を米国務省に与える」という内容の法案「「台北法」を提出している。
一方、エルサルバドルの大統領選挙では、台湾に大統領選の資金を要求した与党が敗北し、現政権が進めた中国との国交正常化を見直し、断交した台湾と外交関係を結び直すと主張した候補者が当選した。朝日新聞がつたえているので下記に紹介したい。
新大統領の就任は6月1日だという。果たして台湾とエルサルバドルとの国交回復はあるのか、親中派の一角が崩れた中米の今後の動向に注目したい。
————————————————————————————-台湾との復交主張、エルサルバドル大統領にブケレ氏当確【朝日新聞:2019年2月4日】
米国への移民キャラバンの出発地の一つとなった中米エルサルバドルで3日、サルバドル・サンチェスセレン大統領の任期満了に伴う大統領選があった。選挙管理当局によると、野党の中道右派、「国民統合のための大連合(GANA)」の前サンサルバドル市長ナジブ・ブケレ氏(37)が当選を確実にした。任期は6月1日から5年間。
選挙管理当局の速報値によると、投票率は約47%。開票率99%の段階でブケレ氏が53%を獲得し、第1回投票で当選に必要な過半数を確実にした。
ブケレ氏は、現政権が進めた中国との国交正常化を見直し、断交した台湾と外交関係を結び直すと主張。ベネズエラ問題では、反マドゥロ派のグアイド国会議長を支持するとしている。
ブケレ氏は勝利宣言で、「内戦後の歴史が変わった。2大政党に対する勝利に、全国民を招く」と語った。
同国では1992年の内戦終結以来、右派の野党・国民共和同盟(ARENA)と左派の与党・ファラブンド・マルティ民族解放戦線(FMLN)の2大政党が政権を担ってきたが、ARENAの候補は31%、FMLNの候補は14%と及ばなかった。
今回の大統領選には4人が立候補。治安悪化や貧困対策、政治不信などが争点となる中、ブケレ氏は、2大政党は問題を解決できなかったとしてSNSを活用し「変革の候補」としてアピール。汚職対策なども訴え、支持を広げた。国会では少数与党のため、他党との連携が課題だ。(サンパウロ=岡田玄)