た「太陽花学運(ひまわり学生運動)」に続き、高校生たちが日本の学習指導要領にあたる「課程
綱領」が改訂されて中国寄りになったとして反対運動が起きている。
いささか古い統計だが、2009年11月末の行政院主計処発表によると、台湾の高校生の総数は約76
万人、高校総数は486校(普通高校:330校、職業高校:156校)だそうで、この問題を巡ってはす
でに200校以上で反対集会が開かれたという。燎原の火のように運動が広がっている。毎日新聞が
詳しく報道しているので、下記にご紹介したい。
ひまわり学生運動が起こったとき、本誌は「台湾民主主義のターニングポイントになるだろう」
と指摘した。なぜなら、台湾の民意が学生たちを支持していたからだ。それが今回の課程綱領改訂
問題では、高校生たちに受け継がれていることを証明することになった。
大学生ならいざ知らず、まだ親のスネをかじっている高校生たちが恐怖心を乗り越えて立ち上
がったのだ。それを台湾の民意が支持している。
台湾:歴史教科書「中国寄り」 高校生ら改訂反発
【毎日新聞 2015年07月27日】
【台北・鈴木玲子】台湾で日本の学習指導要領にあたる「課程綱領」が改訂され、9月の新学期
から歴史などで改訂教科書が使われる。そのうち高校歴史教科書の改訂内容が「中国寄りだ」と反
発した高校生たちが教育部(教育省)の庁舎に突入、33人が逮捕されるなど混乱が続いている。背
景には、若者世代への台湾人意識の浸透と中国への警戒感の高まりがあると指摘されている。
台湾で歴史教科書の改訂は民主化の進展や政治の変遷と深く関わってきた。戦後、中国大陸から
台湾に逃れた国民党政権は戒厳令を敷き、学校などで台湾語の使用を禁止、中国を中心とした歴史
を教えてきた。
1987年に戒厳令が解除されると、台湾出身の李登輝政権(88〜2000年)で、台湾独自の歴史を重
視した台湾史教育が始まった。97年には中学1年の教育課程で「認識台湾(台湾を知る)」が導入
された。この流れは、独立志向が強い民進党の陳水扁政権(00〜08年)でさらに強まり、教科書か
ら中国色が薄くなった。
ところが、08年以降、国民党の馬英九政権が中国との融和路線を進め、次第に教科書改訂を推
進。昨年1月の改訂について教育部は字句修正などの「微修正」と説明したが、学者によると、台
湾史部分の変更字句は6割に上った。しかも、改訂作業は中国との統一派とみられる学者を中心に
非公開で進められたことも反発を招いている。
今回、反対運動の中心になっているのは「台湾意識」が強い若者世代だ。台湾に300余りある高
校のうち200校以上で反対集会が開かれた。改訂の情報公開が不十分として市民団体が提訴した裁
判も1審で違法判決が出た。
呉思華・教育部長は24日、学生側と対話する意向を表明し、改訂内容は試験に出さない方針を示
すなど教科書改訂への理解を求めている。
◇抗日抗争の項目新設
今回の歴史教科書改訂は、中国と台湾の結びつきを重視した内容になっている。
台湾メディアによると、17世紀の明滅亡後に「反清復明」を掲げた鄭成功一族による台湾統治時
代は「鄭氏統治」から「明鄭統治」に変更され、明代からの深い関わりを強調する。
日本統治時代(1895〜1945年)は「日本統治」から「日本植民統治」に。「(革命家)孫文が台
湾を訪れて台湾人の支持を求め、台湾人が革命と中華民国建設に参与した」との記載が加わり、
「台湾人と抗日戦争」の小項目も新設される。また、戦後の国民党による統治開始は「接収」から
祖国復帰の意味合いが強い「光復」に言い換える。
台湾大歴史学部の周婉窈(しゅう・えんよう)教授は「台湾を中心にした歴史編さんではなく、
中華民族史観が強化された。台湾人が抗日に協力した記述が追記されるなど台湾と中国の関係強化
が狙いだ」と指摘する。【台北・鈴木玲子】