ています。その中からご紹介しています。
今回は、昨日、手紙で届いた台湾の蕭錦文(しょう・きんぶん)さんのお便りをご紹介
します。1926年(大正15年)生まれの蕭錦文さんは台湾の二二八記念館や総統府で日本語
での解説ボランティアをつとめ、酒井充子監督の映画「台湾人生」でも登場する。台湾を
訪れる日本人で知らない方はいないのではないかと思われるほど、日本人にとってはなじ
み深い方です。
いささか日本語としてこなれていないところもありますが、漢字をひらがなに開いたり
した程度にとどめ、ほぼ原文のままご紹介します。
本誌ではできるだけ多くのメッセージをご紹介してまいりたいと思っています。激励や
お見舞いのメッセージをお寄せいただければ幸いです。
■ 日本李登輝友の会メールアドレス
E-mail:info@ritouki.jp
昔の祖国日本に寄せる思い 蕭錦文
この度の東北・関東大震災の国難にあたり、お見舞いの手紙が遅れて誠に申し訳ござい
ません。
東北・関東大震災で多大な損害を蒙りましたのみならず、これに伴う大津波が日本の東
北5県海岸集落を襲い、地上物の一切及び人命が一舜にして根こそぎに洗い浚(さら)った
災害に襲撃され、その津波の恐ろしい大自然の力は実に分崩離折風景でした。この後現れ
たのは瓦礫の山と、その上に乗せられた破損被災車や船舶の外、生き物や人間の姿は影も
形もない空虚荒野姿の、痛ましい悲しき画面の浅ましさは喩えられない閑静な死城のニュ
ースでした。
嗚呼、神の戯れか? 運命の皮肉か? 国難は止まらず、福島第一原護炉はこの大震災に
より発生した原子炉破損で放射能漏れの放射線拡散事故は正に国の存亡の危機に臨んだ一
大災難ではないかと、肺腑をえぐられる思いです。
この放射線拡散から生じた傷害はただごとではなく、核があらゆる陸海物質に付着し、
過去世に見られぬ大災難の憂慮となり、恐怖の渦巻きの中に世人を捲き起こし、混乱状態
のようです。ニュースでは、すべて日本の輸出品のキャンセルや厳しい放射能検査を実施
している情報の通達があると町人の流言です。
この破滅的経済下落をいかにして食い止め、過去誇りある日本国の声誉を取り戻して復
興させるか? 復興するまでの険悪な先の道が予感されますが、ましてやこれを回復する
時間は全く目途がつかぬことを懸念せざるを得ません。そして将来の日本がどうなるか?
その先は黒暗ではないでしょうか。
今回の大震災で人間の存亡を一瞬に決めた禍は凄い生離死別の悲哀な嘆かわしい天災画
面が世を驚かせ、過去のビルマ戦場でも見られないありさまです。
私はこの悲惨な幕をみて、大自然の大なる力量を認識しました。人間はいかに科学的頂
点を超越しても大自然に逆らうことが出来ない現実を感じました。眇小な我等人間はこの
原則を悟らざるを得ません。
この度最大なる壊滅的災害を受けた死傷と行方不明人数約30,000人に近い犠牲者を出し、
過去にないマグニチュード9の大地震は世間を瞠目結舌に巻き上げ、震災の後に起きた大津
波による家屋等や建築物が流される状況は目に収め難い涙ぐましい荒影でした。この残酷
極まる無情な画面に驚愕し、心の痛みに涙を流しました。
台湾の片隅で神に皆様の無事を祈願しています。この大災難の映像を見た瞬間、湧き上
る悲しみと哀れむ思いの心で胸が一杯でした。どうか次の世代、子々孫々に及ぶ大災害を
この世に再度起らぬよう神に祈り、この放射能拡散を最小範囲に止めるよう神に祈願する
ばかりです。
85歳の私はただただ被災地避難者の皆さん方が無事であるよう祈願する外は何も出来ま
せんが、もしこの辛い思いを私も分担出来ればと願っています。
以上、謹んで昔の祖国日本国民の皆さんの一致団結と大和民族の精神を発揮せしめ、こ
の大災難を乗り越え、一刻も早く復興の日が来るよう心よりお祈り申し上げますと共に皆
さんの御健康を祈祷しています。
追伸
過去のごぶさたには大変失礼致しました。又日本各地の皆様から二年間の長い時間にわ
たり、年賀状、書籍、特産物あるいはお見舞い等のお手紙を戴きながらお礼の返事もなく
今日迄に至ったご無礼のお詫びを申しあげます。認知症を患った無法老人としてご容赦を
願いたいです。
2011.4.5 蕭錦文 敬上