【追悼】 胸に溢れる尊敬と感謝  王 明理(台湾独立建国聯盟日本本部委員長)

【台湾の声:2020年7月31日】

 李登輝先生が旅立たれてしまった……。こんな日が来ることは分かっていたはずなのに、いざその時が来てみると、喪失感の大きさにたじろいでいる。

 今の台湾があるのは李登輝先生のお蔭であり、今日の民主的な社会は李登輝先生の手腕無くしては有り得なかった。

 小さな政策ではなく、大きな哲学に貫かれた国造り。正義感に裏打ちされた政治力。まさに世界史上に残る政治家であり、哲学者であり、いえ、どんな形容も当てはまらないような世界に一人だけの特別な存在であった。

 日本に亡命した私の父(王育徳)と、台湾に残る道を選んだ李登輝先生とは、離れ離れに生きていたが、今から約60年前に無理を押して密かに会って、一つの同じ理想を持ち、お互いがそれに邁進していくことを確かめ合った。

 台湾に民主的な理想郷を作る、台湾人の立派な国を作る。人生を賭けるに惜しくない大きな目標。なんという大きなやり甲斐のある仕事であっただろう。李登輝先生は見事にその使命を果たされた。血を流さずに、一党独裁体制を民主主義に変革したことは燦然と世界史に刻まれるべきことであった。

 人は育ち、民主国家台湾は今や世界中から称賛されるまでになった。

 きっと、安心して旅立たれたことだろう。国内には優秀な人材がひしめき、頼りがいのある若者が大勢いる。そして、国際的にも台湾の存在感はどんどん高まっている。きっとそれを肌で感じ取られて、幸せを感じながら立派な一生の幕を閉じられたことだろう。

 今、胸に溢れる尊敬と感謝の気持ちはどんな言葉でも表すことができない。

 李登輝先生が御自身の全てを注いで下さったことが無にならないように、私たちは怠らず力を合わせて努力していかなければ……。天国からいつでも、また慈愛に満ちた笑顔で見守っていて下さることを信じて。

 李登輝先生、長い間お疲れ様でした。本当に有難うございました。(7月30日記)

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