今度は中学校同士が姉妹校となったことをお伝えしたい。
8月2日、石川県鹿島郡中能登町(かしまぐん・なかのとまち)にある中能登中学校が基
隆市の成功国民中学校と姉妹校の調印式を行った。日台間では大学や高校の姉妹校提携は
よく聞くが、中学校同士の姉妹校提携は珍しい。心から祝意を表し、両校の末永い交流を
祈りたい。中日新聞が提携の模様を伝えているので紹介したい。
記事は、中能登中学校は「20年前から」成功国民中学校と交流を続けていたとあり、そ
れが姉妹校提携につながったというニュアンスだったので、20年も交流していて、なぜ今
になって姉妹校提携なのだろうという素朴な疑問が浮かんだ。
中能登中学校を調べてみると、なんとこの中学校は今年4月に開校したばかりだという。
記事には「20年前」とあり、いったいどういうことなのだろうと興味をひかれた。
いろいろ調べてみると、中能登町は平成の大合併(2005年)で鹿島郡内の鳥屋町、鹿島
町、鹿西町が合併してできた町で、中能登中学校も鳥屋中学校、鹿島中学校、鹿西中学校
の3校あったが合併、今年4月に開校になったという。
では、台湾・基隆市の成功国民中学校との交流はというと、記事にあるように20年ほど
前、鳥屋中学校と成功国民中学校の姉妹校提携に始まるようだ。きっかけは不明だが、基
隆市のホームページには、成功国民中学によるととして、「民国82年から日本の石川県鹿
島中学と姉妹校関係を樹立して、次の年から両校は交流活動を行うことを始めます」とあ
った。民国82年は1993(平成5)年にあたり、確かに20年前だ。
その後、2005年からは中能登町の大湯章吉・国際交流学会会長の協力を得て、鹿島中学
校と鹿西中学校も加えて交流が拡大し、毎年、交互に訪問しているとも記されていた。
中能登町のホームページでは、昨年は中能登町の中学生14名が8月17日から5泊6日の日程
で訪台、成功国民中学校の生徒との交流をはじめ、張通栄・基隆市長を表敬訪問したり烏
山頭ダムなどを訪問したと記されている。
今年は基隆から中能登町を訪問、一昨日(8月2日)は中能登中学校との姉妹校提携の調
印式や生徒同士の交流会に臨み、午後からは第9回を迎えた中能登町祭「織姫夏ものがた
り」の前夜祭にも中能登中学校の生徒と一緒に出演して演奏し、昨日の本祭でも両校の生
徒たちは演奏したという。
成功国民中学校の生徒たちは2011年の「織姫夏ものがたり」にも参加して演奏している
そうで、町をあげての歓迎ぶりが伝わってくる。
義務教育課程の中学校が国際交流を続けるのは、校長はもちろんのこと、教育委員会や
町の強力な下支えがないと不可能だ。中でも首長の裁量が大きいと思われる。杉本栄蔵・
中能登町長は合併時の2005年から町長をつとめ、現在、3期目だ。成功国民中学校との3中
学校交流に拡大したのも2005年。いずれ中能登町と基隆市との姉妹都市提携に発展しそう
な雰囲気を強く感じる。
基隆市はすでに宮古島(みやこじま)市と2007(平成19)年6月28日に姉妹都市提携を結
んでいる。このときの基隆市長は現在の張通栄氏だ。現副市長の柯水源氏は学校長経験も
豊富な方で、教育交流などを通じて日本との縁が深い。本会理事をつとめていた日台交流
教育会専務理事の草開省三(くさびらき・しょうぞう)氏とは昵懇の仲でもある。ぜひ、
姉妹都市提携まで進んで欲しいと願っている。
ちなみに、中能登中学校と成功国民中学校の姉妹提携で思い出したことがある。
以前の本誌で、台湾人を父に、日本人を母とする歯科医で女優の一青妙(ひとと・た
え)さんの『私の箱子』(講談社、2012年刊)をご紹介したことがある。この本による
と、一青さんの母、一青かづ枝さんは1944年に東京で生まれているが、ルーツは石川県に
あり、「能登半島の鳥屋町に一青という地区があり、母の一族はそこの出身だ」と一青妙
さんは記していた。
父の顔恵民氏は「台湾五大財閥の一つで、有名な鉱山王である顔家」の出だとも記して
いる。顔家は「基隆顔家」といわれ、日本統治時代に九分の金鉱を開発した。
基隆顔家を継いだ顔恵民氏と、中能登町をルーツとする一青妙さんの母、20年ほど前の
鳥屋中学校と成功国民中学校の姉妹校提携になにか関わっているのだろうか。単なる偶然
なのだろうか。今のところは何も分からない。
・中能登町(なかのとまち)
〒929-1792 石川県鹿島郡中能登町末坂9部46番地
TEL:0767-74-1234 FAX:0767-74-1300
E-mail:soumu@town.nakanoto.lg.jp
http://www.town.nakanoto.ishikawa.jp/webapps/www/index.jsp
・基隆市(きいるんし)
http://www.klcg.gov.tw/
中能登中、台湾・成功国民中と姉妹提携 交流一層深めよう
【中日新聞:2013年8月3日「石川県版」】
http://www.chunichi.co.jp/article/ishikawa/20130803/CK2013080302000034.html
写真:中能登中の生徒に向けて演奏する台湾・成功国民中の生徒たち=中能登中で
◆調印式 両校が演奏など披露
中能登中学校は2日、20年前から交流を続ける台湾・基隆市の成功国民中学校と姉妹校提
携し、生徒たちの交流会を開いた。(荒木正親)
調印式が中能登中であり、袋井貞司校長と成功国民中の林俊英校長は協定書に調印し、
袋井校長が「中能登の文化を知って」、林校長が「これからも心を一つに交流を深めてい
きたい」などと式辞を述べた。
交流会では、中能登中の吹奏楽部が3曲を演奏。成功国民中の1〜3年生17人は、踊りや太
鼓、こまを回したり投げたりする曲芸を披露。ギターや笛で、日本のアニメの主題歌を演
奏して会場を盛り上げた。
成功国民中2年の胡庭センさんが「日本に来ることができて光栄。滞在を楽しみたい」と
あいさつ。中能登中の大垣内友子生徒会長(3年)は「ゆっくり語り合って交流を深めまし
ょう。両国の交流の懸け橋になります」と答えた。
両校の中学生はこの後、町祭の前夜祭でも演奏。成功国民中の生徒たちは、町の小中学
生9人の家族がホストファミリーとなり、4日までホームステイする。