【夕刊キャスター】繊細なパンダ 政治利用再考を

【4月4日 産経新聞】

 パンダほど政治的に利用される動物はないだろう。台湾の次期総統に決まった馬英九
氏はさっそく、陳水扁政権が拒否していた中国からのパンダ贈呈を受け入れる考えを表
明した。

 中国がパンダのつがいを寄贈すると発表したのは2005年。台湾の返答を待たず、2頭
の個体まで選定した。台湾の世論は「平和の使者か、統一への懐柔工作か」と割れたが、
愛くるしさがまさり、歓迎ムードが広がった。

 だが、陳水扁政権は拒否した。絶滅危惧(きぐ)種のパンダはワシントン条約で「国
際取引」が禁止されている。受け入れることは、中国側の「国内取引だから問題ない」
という論理を認めることになるからだ。

 台湾では、各地の動物園が早くも争奪戦を繰り広げているというが、ワシントン条約
の観点からは、どのような説明がなされるのだろうか。解釈次第では、極めて政治的な
色合いを帯びることになる。

 だが、もっと気がかりなのは、台湾の飼育技術。日本には日中国交正常化を記念して
1972年に上野動物園に2頭贈られた。しかし、上野では繁殖が続かず、今は高齢の1頭
がいるだけだ。最近の動物園は「珍獣」に頼らず、動物固有の行動を見せる「行動展示」
が広まっている。繊細なパンダこそ、本来の生息地で安住させてほしい。中国はパンダ
外交を見直すときだ。                  (総合編集部・記野重公)


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