_講演内容 1_
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_ 講師 黄 文雄氏

略歴
1938年(昭和13年) 台湾、高雄県岡山鎮、生まれ
1964年(昭和39年) 来日。
1969年 早稲田大学第一商業部を卒業
1971年 明治大学院、政治経済学研究科西洋経済史学修士
1994年 『台湾人的価値観』(前衛出版社)で巫永福評論賞、
      台湾ペンクラブ賞を受賞。
現在、拓植大学日本文化研究所客員教授。
評論活動を行ないながら、漢文著書、約三十余冊を手掛け、
台湾の言論界では大きな発言力を維持し続けている。
 黄氏は、大学の先生らしく、じっくり時間を掛けて教える方。 台湾を語るには6時間かかるという氏は、今講演の時間では
奔りながらになるので、拓大での6時間講演を聴くことを推奨。 後の懇親会において、声を掛けさせていただいたところ、通
路で熱弁されたが、やはり、時間が少なかった表れであろう。
2008年、枠組みが大きく変わった。 プーチン・胡錦濤・金正日以外、世界の国家首脳は今年、全員交代。台湾も陳政権から
馬政権へと変わった。 今後の日台関係も変化を来す。李登輝の12年間、陳政権の8年を通じて日台関係が熟成されてきた。
 李登輝総統が外国の客人と会ったのが、年平均8千名、そのうち4千名が日本人。日本人が半分。陳政権に入って、許世
楷駐日大使が日本国内で600回の講演を行なってきた。 このように日台関係が熟成されてきた。
 馬政権になって台湾で大規模な反政府デモが行なわれた。8月が30万人、10月で60万人、先日で40万人。 これを日本
の60年安保で見た場合、最高でも30万人のデモであった。 日本より人口が少ない台湾で、それだけの規模のデモが行な
われたが、台湾の変化を象徴する動きではないか。 しかし、それが日本ではあまり報道されない。 その理由は、各報道機
関の特派員の滞在が3年くらいであること。 その期間では、何が起こっているのか、時代の変化を読み取ることが出来ない。
また、本当の意味で台湾を研究している人も少ない。 だから、何を伝えていいのか分らない。
 そこで、今、起きていることを伝えるなら。一つは、経済的な危機。 戦後、最大の経済が崩壊する危機が起きている。 二つ
目が、国家主権の危機。馬政権になってから「台湾の主権がどうなっているのか」という危機感が内部から出てきている。三つ
目が保守化の危機。

(1)経済の危機
 馬氏が政権を取れば、1万ポイントの株価が2万になり、経済もよく
なると公約したが、実際には4千ポイントになり、企業倒産や失業者が
増大し、各地で「コメよこせ」という機運が高まったのが、デモ要因の一
つとなった。台湾の投資状況は表向きは、さほど悪くはなかったが、ブ
ラックマネー市場の存在がある。ここから一気にお金が引き出された。
台湾投資は、国内投資が少なく、80パーセントが海外で、農業や漁業
も含め、蓄積したあらゆる技術が中国へ流れた。 経済危機は、国際的
なもので仕方がない面もあるが、台湾経済は崩壊寸前に来ている。

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